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閑話 アルバート視点
しおりを挟む俺とナーシャの子が死んだ。
俺の子が産まれて、初めて俺は皆から王として認められる。
子が出来て一人前
年輩者は俺を半人前だと思っている。だから子が必要だった。
それに、跡継ぎの子が産まれれば俺の王の立場は確実なものになるはずだった。
俺はリリーアンヌがいなくても王になれた
それを、リリーアンヌが壊した。
俺の子を殺した。
「マックスはまだか!」
「連絡はまだありません」
俺は毎晩浴びるように酒を飲むようになった。
リリーアンヌとの間に子が出来てれば、
そうだ
そもそもリリーアンヌに子が出来なかったのが悪いんだ。
何が第二夫人反対だ
何が法だ
子が出来てから文句を言え!
幼い頃は可愛げもあったが、王太子妃になり皆、リリーアンヌリリーアンヌと、リリーアンヌばかり頼る。
俺が王だ!
俺がこの国の王だ!
なのになぜ皆俺の言うことを聞かない!
なぜ俺を敬わない!
リリーアンヌには味方もいるが敵も多い。
敵意
それはリリーアンヌを認めているからだ。王の妃として申し分ないと認めているから敵意を向ける。
恐れる存在として、皆が認めている。
俺はどうだ!
味方も敵も、俺にはいない。王ではなく俺個人の為に命をかけてくれる者など…、
リリーアンヌだけだ…。
皮肉だな…
俺の為に命をかけてくれる唯一が、俺の王の立場を揺るがす。
グレイソンが王に興味がないのは知っている。それでもグレイソンを王に、そういう声も聞こえてくる。
だから俺は俺の子が必要だった。俺の子なら誰が産んでも良い。
俺が王として君臨し続ける為にも俺の子が必要だったんだ。俺の子が産まれたら誰もグレイソンを王になんて言わない。
例え子が成長し臣下に子を王に、と言われても子が成長するまでは俺が王なのは変わらない。子が成長するまでに俺は皆が認める王になっている。
今はまだ皆から見れば若造。若輩者だが、世代交代はすぐ先の事だ。そしたら俺は皆が認める、敬われる存在になる。
ナーシャはもう一度子を作れば良いと言うが、そういう事じゃない。
いつ出来るか分からないものに縋ってどうする。俺は出来たものに縋ったんだ。ナーシャが子が出来たと言った時、喜びと安堵した。
これで俺は王だ
俺は心からそう思った。そして心から歓喜した。自分の子が出来た事よりも、子が出来守られた座に喜んだ。
借り物のような玉座が己の物になった。
子をもう一度?
またあの借り物のような苦痛に耐えるのか?
嫌だ
座から引き摺り下ろされる感覚はもう嫌だ…。足を踏ん張り手を添えて下ろされないように、必死にしがみつく思いは、もう嫌だ…。
何か分からないものが玉座に座ると重くのしかかる。皆の目が恐ろしく思えた。
それをまた耐えないといけないのか?
嫌だ……
ナーシャは離宮へ行ったリリーアンヌの事はもう許せと言うが、もう許すとかそんな話じゃないんだ。
王の子を殺した
その事実だけで重罪なんだ。ナーシャは何も分かってない。
それに、俺は知らされなかった。自分の子が死んだのに、その事すら知らされなかった。
子の死を悲しむ事も送り出す事も
俺は知らずに政務ばかりしていた。
それもこれも全部リリーアンヌのせいだ!
あの悪魔が俺を貶める。
俺が何をした!
俺は俺なりにやってきた。
俺の子を返せ!
俺の、
俺の血を分けた唯一の子を返せ!
だから俺は許さない。絶対に許さない。俺の子と同じようにリリーアンヌには死をもって償ってもらう!
マックスからの知らせがないまま何日過ぎただろう。俺は苛立ちが抑えられない。
「陛下!陛下ー!マックス隊長から知らせが入りました。リリーアンヌ元王妃を捕らえこちらに向かっていると、知らせが入りました!」
「そうか!良くやった!
ハハハッ!」
俺は喜びに声を出して笑った。
これで、これでやっと。
ジェイデンもお前も俺にとって目の上のたんこぶだった。ジェイデンは隣国へ行った。
ならお前には、お前に相応しい場所を用意してやる。
フォスター公爵が言ったように、リリーアンヌの首でこの国が助かるなら、喜んで差し出そう。
リリーアンヌ、
お前は俺を助ける為なら何でもしてくれるんだろ?
俺を助けたいと、
俺を支えたいと、
いつも言っていたじゃないか。
俺の為にお前が最後に出来る事だ。
俺の為に、
死んでくれ。
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