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73 拘束 ②
しおりを挟む「貴方の何を信じろと言うの?卑怯な真似をする貴方のどこを信じろと?」
「私もこんな卑怯な真似はしたくなかった」
「でも貴方はしたわ」
「はい。ですが、妃殿下も話し合いを拒否しました。違いますか?」
「そうね、その通りよ。捕まれば最後だから、だから私は貴方との話し合いを拒否した」
「妃殿下、ジェイデン殿下が既にこちらに向かっています。貴女を人質にし救う為にです。隣国はこの国に戦を仕掛けると、そして止めたいのなら妃殿下を人質として渡せと。
ジェイデン殿下に後は任せましょう。陛下の事も全て任せましょう」
ジェイデンにどこまで出来るかは分からない。それでも皆の解放、それが今は先。
「分かったわ。だから直ぐに皆を離しなさい!」
私はマックスを睨んだ。
「分かりました」
マックスは手を上げた。解放される皆。
「コナー」
私はコナーの元に走った。傷だらけで腕からもお腹からも血が出ている。
「コナー、ごめんね…。最後まで守れなくて、ごめんね…」
「お嬢、お嬢が決めた事ならそれで良い」
私はコナーに抱きついた。
「汚れるぞ」
「そんなのどうでも良い」
「痛た…」
私は離れ、
「大丈夫?どこを斬られたの?見せて」
「こんな所でか?」
騎士団の騎士達が取り囲む中心に私達はいた。
「それも、そうね…。
マックス、私は貴方の言うことを聞いて拘束されるわ。でも皆は関係ないでしょ」
「妃殿下を手助けした者達が関係ないと、本当に妃殿下は思っているんですか?」
「そう。なら、」
私は剣を抜いた。
「お願いします。このまま剣を置いて下さい。お互い本気を出せばこの場は悲惨な現場になります」
「剣を置いたら私は敗北を認めた事になるわ。私は皆を助ける為だけに拘束されるのであって敗北はまた違うわ。
だから私は剣を置かない。最後まで戦う事でしか皆が護れないなら私は最後まで戦う。それで死んだとしてもそれも本望よ」
「それも良いか」
「でしょ?」
コナーも剣を拾い立ち上がった。私達は背中を合わせた。遠くで騎士達の悲鳴が聞こえる。きっとボビーがタイラーやミーナ、マイラを拘束している騎士を斬りつけた。
「さあ、始めましょ?マックス。どちらかが全滅するまでとことんやりあいましょ?」
マックスと目を合わせる。
「分かりました。拘束ではなく事情を聞く為に王宮へお連れします。それがこちらの譲歩です」
「王宮までで良いわ。王宮へ着いたらそのまま私は地下牢行きだから。だから、それまでの間は、皆と過ごしたいの。きっと最後だから…。だから、最後くらい、皆と、過ごしたいのよ……」
「妃殿下…、そんな事はさせません」
「良いのよ。それよりコナーを医師に見せたいんだけど」
「分かりました。街へ行き診察してもらいます」
「ちょっとだけ待って」
私は馬に駆け寄った。
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ブルル
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「お兄さんは?」
コナーが指笛を吹くとお兄さんが走ってきた。
「貴方もここまでありがとう。助かったわ」
ヒヒーン
「マックス、この子達を休ませたいの。随分無理をさせちゃったから」
「今日は街で宿泊します。明日王都へ向けて出発します」
「それで良いわ」
馬車が用意され、私達は乗り込んだ。
「お嬢様」
「リリーアンヌ様」
「ミーナ、マイラ…ごめんなさい。ボビーも、ごめんなさい。
タイラー、ごめんね…」
「リリーアンヌ、皆、リリーアンヌが決めた事を責めたりしないよ」
「でも、でも…、王都に、行けば……」
「皆、死は覚悟してる。それでもリリーアンヌの側を選んだ。リリーアンヌと共に、僕達は自分で選んだんだ。だから謝らなくて良いよ」
「ありがとう。ありがとう、みんな、ありがとう……」
馬車が宿屋に止まり、部屋が用意された。一人ずつ医師の診察を受ける。
傷の手当が終わったコナー。浅い傷から深い傷まで体中にあった。一人で何十人を相手したんだから当たり前だけど、体中包帯だらけの体は痛々しく見える。
「そんなに心配するな」
「うん」
馬の兄弟にも褒美をあげた。
次の日、馬車に揺られ王都まで向かう。
離宮の門から手を離した瞬間、私の生死は決まった。自ら離した手。誰かに決められた死ではなく己で選んだ死。
お祖父様もお父様も誰かを護る為に死を選んだ。それが血なら、私はナーシャ様の嘘を護る為に命をかける?
それは嫌。
だから、私は私の為に手を貸してくれた人達を護る為に死を選ぶ。
私だけで良い。
私だけ処刑すれば良い。
アルバートが憎み恨むのは私なんだから…。
馬車の隣を並走するようにコナーの背中が見える。全身痛くてもお兄さんが選んだのはコナーだった。
さっきは凄かった。怪我人のコナーを馬車に乗せようとしたらお兄さんが暴れだした。他の騎士が近寄ろうとしただけで前足をあげ後ろ足で蹴り、結局コナーがなだめた。
「こいつも俺と一緒で己の主は一人なんだよ、一生な」
そんなお兄さんの後を付いて行くのはボビーが乗った弟。
こっちは従順なのに…。
「リリーアンヌ様、少し眠って下さい。ずっと寝ていませんよね。昨日もずっと起きていらしたではありませんか」
「そうね…。少し眠ろうかしら」
「はい、そうして下さい」
私は馬の兄弟を見ながら目を瞑った。
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