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あれから直ぐにクロードは辞めて邸を出て行った。
月日が流れても、月日が経つほど私はクロードを思い出さない日はない。自分の我儘で、自分の今迄の生活で、どれだけクロードを不快にさせ、どれだけ惨めにしてきたか。
そんなつもりは無かった。
それはあくまで私の主観…。
子供の頃は無邪気にクロードの手を引いて連れ回してた。少し申し訳なさそうな、戸惑った顔をしていたけど、本当は嫌だったのね。嫌がるクロードに私は毎日側に寄って行っては一方的に話してたわ。クロードは毎日側に来る私が嫌だったのね。それでも嫌と言えず、私に従うしかなかったのね。
「お嬢様」
「アニー」
「お嬢様、クロードが出て行ってから変ですよ?」
「そうね」
「お嬢様の大好きな月一度の掃除もしないし、お嬢様が何もしないから庭の草はボウボウです。野菜の収穫は私がやってますけど」
「そう、ありがとう」
「どうしたんですか?」
「別に。ただ、自分が情けなくて…。クロードの辛さを全く分からなくて…」
「それは仕方ありませんよ。クロードは上手く隠してましたから」
「アニーは知ってたの?」
「傍から見てると分かりますよ」
「そう…。私って無神経だったのね…」
「お嬢様!」
「何?」
「もう!お嬢様がそんなに暗いからこの邸は幽霊邸になっちゃいます!」
「それは、大変ね」
「はい!だからお嬢様に元気になって貰わないと!」
「何?」
「今からクロードの所へ行って元気になって来て下さい!お嬢様はクロードと一緒だと元気になるんですから!」
「それは、無理よ…。私、クロードに嫌われてるもの…」
「こちらは自覚無しですか…」
「何?」
「いえ、何でもありません」
「何よ」
「お嬢様!クロードに会ったら素直になって下さい!素直に自分の気持ちを言って下さい。クロードだって嬉しいはずです」
「クロードは嫌がるわ」
「そんな事ありません」
「でも、」
「一度会って気持ちをスッキリさせてきて下さい。このままではお嬢様まで幽霊になってしまいます」
「分かったわ」
「では着替えましょう」
私はアニーのメイド服を着て、深めに帽子を被りアニーと一緒に邸を内緒で出て、街の騎士団の詰所まで歩いた。
詰所近くで、
「お嬢様、ここからは一人で行って下さい」
「え?ついて来てくれないの?」
「はい。お嬢様良いですか?何度も言ったように、メイドのフリをして下さいね?」
「分かったわ」
「伯爵家の紋章は持ってますね?」
「ここにあるわ」
私は首から下げる紋章を服の外に出した。
「まだ隠していて下さい。提示しろと言われてからですからね?」
「分かったわ」
「帰りはクロードに送って来てもらって下さいね?」
「アニーは?」
「私は街で買い物をして帰りますよ?」
「買い物?」
「奥様の茶葉です」
「また?」
「仕方ありませんよ。常に飲まれるものですもの」
「そうだけど。 安い茶葉で良いわよ?」
「そんな事したら私がクビになっちゃいますよ」
「それもそうね」
「はい。お嬢様、頑張って下さいね」
「上手く出来たらね」
私は引きつる顔で笑い、アニーと別れた。
騎士団の詰所の前…。
緊張するわ。深呼吸を繰り返して何とか足を前に出す。
詰所の扉を開け、
「すみません」
「はい、何か用っすか?」
近くにいた人が声をかけてくれ、
「あの、ここで働いてるクロードを呼んで貰えませんか?」
「またあんたもクロード目当て?」
「え?」
「さっきもクロード目当ての女が来てさ。で、あんたも?」
「違います」
「違うの?」
「はい。私はクロードが以前仕えていた邸の同僚です」
「それを証明するものは?」
私は服の中から伯爵家の紋章を見せた。
「本当だ。何、クロードに用事?」
「はい。伝言を頼まれまして」
「そっか。ならちょっと待ってて」
「はい」
「あ~、そこにいると邪魔だからこっちに来て?」
「あ、はい」
私は騎士の人の後に付いて行った。
「ここで少し待ってて。今呼んでくるよ」
「はい、お願いします」
私は小部屋に案内され、部屋の中に入った。部屋の中には机と椅子が4脚だけの簡素な部屋だった。
椅子に腰掛け、部屋でクロードを待つ。
月日が流れても、月日が経つほど私はクロードを思い出さない日はない。自分の我儘で、自分の今迄の生活で、どれだけクロードを不快にさせ、どれだけ惨めにしてきたか。
そんなつもりは無かった。
それはあくまで私の主観…。
子供の頃は無邪気にクロードの手を引いて連れ回してた。少し申し訳なさそうな、戸惑った顔をしていたけど、本当は嫌だったのね。嫌がるクロードに私は毎日側に寄って行っては一方的に話してたわ。クロードは毎日側に来る私が嫌だったのね。それでも嫌と言えず、私に従うしかなかったのね。
「お嬢様」
「アニー」
「お嬢様、クロードが出て行ってから変ですよ?」
「そうね」
「お嬢様の大好きな月一度の掃除もしないし、お嬢様が何もしないから庭の草はボウボウです。野菜の収穫は私がやってますけど」
「そう、ありがとう」
「どうしたんですか?」
「別に。ただ、自分が情けなくて…。クロードの辛さを全く分からなくて…」
「それは仕方ありませんよ。クロードは上手く隠してましたから」
「アニーは知ってたの?」
「傍から見てると分かりますよ」
「そう…。私って無神経だったのね…」
「お嬢様!」
「何?」
「もう!お嬢様がそんなに暗いからこの邸は幽霊邸になっちゃいます!」
「それは、大変ね」
「はい!だからお嬢様に元気になって貰わないと!」
「何?」
「今からクロードの所へ行って元気になって来て下さい!お嬢様はクロードと一緒だと元気になるんですから!」
「それは、無理よ…。私、クロードに嫌われてるもの…」
「こちらは自覚無しですか…」
「何?」
「いえ、何でもありません」
「何よ」
「お嬢様!クロードに会ったら素直になって下さい!素直に自分の気持ちを言って下さい。クロードだって嬉しいはずです」
「クロードは嫌がるわ」
「そんな事ありません」
「でも、」
「一度会って気持ちをスッキリさせてきて下さい。このままではお嬢様まで幽霊になってしまいます」
「分かったわ」
「では着替えましょう」
私はアニーのメイド服を着て、深めに帽子を被りアニーと一緒に邸を内緒で出て、街の騎士団の詰所まで歩いた。
詰所近くで、
「お嬢様、ここからは一人で行って下さい」
「え?ついて来てくれないの?」
「はい。お嬢様良いですか?何度も言ったように、メイドのフリをして下さいね?」
「分かったわ」
「伯爵家の紋章は持ってますね?」
「ここにあるわ」
私は首から下げる紋章を服の外に出した。
「まだ隠していて下さい。提示しろと言われてからですからね?」
「分かったわ」
「帰りはクロードに送って来てもらって下さいね?」
「アニーは?」
「私は街で買い物をして帰りますよ?」
「買い物?」
「奥様の茶葉です」
「また?」
「仕方ありませんよ。常に飲まれるものですもの」
「そうだけど。 安い茶葉で良いわよ?」
「そんな事したら私がクビになっちゃいますよ」
「それもそうね」
「はい。お嬢様、頑張って下さいね」
「上手く出来たらね」
私は引きつる顔で笑い、アニーと別れた。
騎士団の詰所の前…。
緊張するわ。深呼吸を繰り返して何とか足を前に出す。
詰所の扉を開け、
「すみません」
「はい、何か用っすか?」
近くにいた人が声をかけてくれ、
「あの、ここで働いてるクロードを呼んで貰えませんか?」
「またあんたもクロード目当て?」
「え?」
「さっきもクロード目当ての女が来てさ。で、あんたも?」
「違います」
「違うの?」
「はい。私はクロードが以前仕えていた邸の同僚です」
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「はい」
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「あ、はい」
私は騎士の人の後に付いて行った。
「ここで少し待ってて。今呼んでくるよ」
「はい、お願いします」
私は小部屋に案内され、部屋の中に入った。部屋の中には机と椅子が4脚だけの簡素な部屋だった。
椅子に腰掛け、部屋でクロードを待つ。
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