伯爵令嬢の恋

アズやっこ

文字の大きさ
8 / 23

しおりを挟む
 部屋の中でクロードを待つ間、私はドキドキしながら待っていた。

 会ってくれなかったらどうしよう。嫌な顔をされたらどうしよう。また私の無神経な態度でクロードを不快にさせたらどうしよう。アニーは素直になれって言ったけど、素直になる事が我儘にならない?今ここに居る事事態が我儘なんじゃないの?やっぱり帰った方が良いわよね。

 席を立とうとしたら、


「おいクロード、お前の客凄い美人だったぞ!あんな上玉の姉ちゃん俺に紹介してくれよ」

「は?」

「いいだろ?さっきだってお前目当ての姉ちゃんが来ててさ、一人くらい俺に譲れよ」

「さっきの?あ~、名前も知らないよ」

「お前が冷たい態度とるからだろ。名前くらい聞いてやれよ」

「煩い」

「なぁ、いいだろ?紹介してくれよ」

「アニーにも選ぶ権利はある」

「アニーって言うのか?可愛い名前だな」

「お前な。もうあっちへ行けよ」


 廊下でクロードとさっきの人の声が聞こえる。


「どうしよう」


 部屋の扉が開き、クロードが入って来た。背中を見せてる為私とは気付かれていないけど…。


「アニーどうした?何か用か?」


 クロードが声をかけ終わると同時に扉の閉まる音が聞こえた。


「アニー?」


 私は後ろを振り返る。


「お前!」

「クロード…」

「何しに来た!ここは男しかいないんだぞ!こんな危ない所に一人で来たのか!」

「ごめんなさい…」

「アニーは?」

「アニーは先に帰ったわ」

「はあぁぁぁ」

「ごめんなさい…」

「一人で来るな」

「ごめんなさい…」

「危ないだろ」

「ごめんなさい…」

「心配かけるな」

「ごめんなさい…」

「はぁぁ。もういいよ。ローラ顔を上げろ」


 私は涙目になった顔を上げられず、顔を横に振る。


「ローラ」


 顔を横に振る。

 クロードの両手が私の両頬を掴んで上に向かせる。

 溢れる涙…。


「ローラ?」

「ごめんなさい…」

「ローラ」

「ごめんなさい、クロ」


 優しく抱きしめられ、


「怒ってない、心配しただけだ」

「うん…」

「こんな男しかいない危険な所に来て心配するだろ」

「うん…」

「怒ってないから泣くな」

「うん…」


 涙が次から次へと頬をつたう…。

 クロードの指が涙をすくう。


「お前の泣き顔は見たくないな…」


 ボソッと呟いたクロードの声…。


「どうしてここに来たんだ?」

「だって」

「なに?」

「だって…」

「邸まで送って行くよ」

「嫌、まだ帰らない」

「ここはさっきの奴みたいに女なら誰でもいいって奴が多いんだ。もう来るな」

「…………」

「ローラ」

「来ないと、会えないじゃない」

「もう会う気はないって言っただろ?」

「どうして会えないの?私はクロードと会いたい」

「ローラ分かってくれよ。ローラの側はもう辛いんだ」

「私も側にクロードがいなくて辛いわよ」

「お前は今迄側にいた玩具がなくなって駄々を捏ねてるだけだ」

「違う」

「なら」


 クロードは私を椅子から立たせ、力一杯抱きしめた。身動き取れない程、お互いの体が密着している。私の肩にクロードの顔があり、息がかかる。


「ローラ」


 耳の近くで聞こえるクロードの声。それがとても落ち着いて私もクロードの背に手を回す。


「クロード」


 肩にあるクロードの顔に私の顔を傾けくっつける。


「ローラ」


 クロードがまた抱きしめる。

 クロードが少し離れ、私の頬を優しく包む。


「俺はお前にこういう事がしたいんだ」

「私もクロードなら嫌じゃない」

「こういう事も?」


 クロードは指で私の唇を撫でる。

 何がしたいか私にも分かる。クロードは私と口付けがしたいの?それなら私だってクロードなら嫌じゃないわ。

 クロードが男性と見えた時、もう子供じゃないと分かった日から、クロードならって心で思った。クロードの一番になりたい。だけどクロードには雲の上の誰かが居て、私はただの人。家族じゃないと言われ、嫌いだったと言われ、私は妹にも幼馴染みにも友にもなれないと知った。

 クロードが邸を出て行き、ぽっかりと穴が開いたみたいになった。クロードの形で開いた穴は余りにも大きくて何も手に付かない。毎日やってた野菜の収穫、庭の草むしり、月に一度の窓拭き、全てが無になりただ起きて寝る、それさえも億劫になったわ。食事を取るのも面倒になりスープを少し飲んで終わり。何も味がしないし、何の為に食べるの?

 邸のがどんどんと荒れていくのをどこか遠くで見ていて、いつかあの草の中で眠ったら誰にも気付かれないかしらってぼんやりと思ったわ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌いなあいつの婚約者

みー
恋愛
朝目が覚めると、見たことのない世界にいて?! 嫌いな幼馴染みが婚約者になっている世界に来てしまった。 どうにかして婚約を破棄しようとするけれど……?

「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」

だって、これも愛なの。
恋愛
幼い頃の無邪気な一言。 「お兄様みたいな人が好き」――その言葉を信じ続け、彼はずっと優しく隣にいてくれた。 エリナにとってレオンは、安心できる幼馴染。 いつも柔らかく笑い、困ったときには「無理しなくていい」と支えてくれる存在だった。 けれど、他の誰かの影が差し込んだ瞬間、彼の奥に潜む本音が溢れ出す。 「俺は譲らないよ。誰にも渡さない」 優しいだけじゃない。 安心と独占欲――その落差に揺さぶられて、エリナの胸は恋に気づいていく。 安心できる人が、唯一の人になるまで。 甘く切ない幼馴染ラブストーリー。

白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。 だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。 異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。 失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。 けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。 愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。 他サイト様でも公開しております。 イラスト  灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様

王子、侍女となって妃を選ぶ

夏笆(なつは)
恋愛
ジャンル変更しました。 ラングゥエ王国唯一の王子であるシリルは、働くことが大嫌いで、王子として課される仕事は側近任せ、やがて迎える妃も働けと言わない女がいいと思っている体たらくぶり。 そんなシリルに、ある日母である王妃は、候補のなかから自分自身で妃を選んでいい、という信じられない提案をしてくる。 一生怠けていたい王子は、自分と同じ意識を持つ伯爵令嬢アリス ハッカーを選ぼうとするも、母王妃に条件を出される。 それは、母王妃の魔法によって侍女と化し、それぞれの妃候補の元へ行き、彼女らの本質を見極める、というものだった。 問答無用で美少女化させられる王子シリル。 更に、母王妃は、彼女らがシリルを騙している、と言うのだが、その真相とは一体。 本編完結済。 小説家になろうにも掲載しています。

月が隠れるとき

いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。 その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。 という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。 小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。

【完結】その仮面を外すとき

綺咲 潔
恋愛
耳が聞こえなくなってしまったシェリー・スフィア。彼女は耳が聞こえないことを隠すため、読唇術を習得した。その後、自身の運命を変えるべく、レイヴェールという町で新たな人生を始めることを決意する。 レイヴェールで暮らし始めた彼女は、耳が聞こえなくなってから初となる友達が1人でき、喫茶店の店員として働くことも決まった。職場も良い人ばかりで、初出勤の日からシェリーはその恵まれた環境に喜び安心していた。 ところが次の日、そんなシェリーの目の前に仮面を着けた男性が現れた。話を聞くと、仮面を着けた男性は店の裏方として働く従業員だという。読唇術を使用し、耳が聞こえる人という仮面を着けて生活しているシェリーにとって、この男性の存在は予期せぬ脅威でしかない。 一体シェリーはどうやってこの問題を切り抜けるのか。果たしてこの男性の正体は……!?

東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~

くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」  幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。  ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。  それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。  上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。 「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」  彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく…… 『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

処理中です...