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14 ウォル視点
しおりを挟む「それはメアリの方だろ?
自分を庇い傷を負わせたから、だから…、俺を、意識したんだろ?だから好きになったんだろ?」
「確かにあの時に私の気持ちに気付いたのは確かよ。でも、私だって初めて会った時にウォルに惹かれていたわ。
初めて見る獣人に怖がる私にウォルは優しい笑顔を向けてくれた。私の速さに合わせて歩いてくれた。
男の子にまた会いたい、また遊びたいって思ったのはウォルだけだもの。男の子は乱暴で苦手だった。でもウォルだけは違った。ウォルの優しい笑顔に温かい雰囲気に優しさに私は惹かれたの。その思いが恋だと気付いたのがあの私を庇った日だっただけよ」
「本当か?」
「ええ、初めて会った時からウォルは私が惹かれた男の子だったわ」
「ありがとうメアリ。俺はずっと傷を負わした負い目から俺を好きになってくれたって思ってた」
「そんなわけないでしょ」
メアリは微笑み少し呆れたような顔をした。いつものように『馬鹿ね』と言われてるようだ。
「メアリは俺と結婚するのは嫌か?やっぱり同じ人の方が良いのか?」
「正直言うとね、今更人の輪に入りたいとは思わないわ。良い思い出がないと言ったらそうなんだけど、お父様達を思うと迷うの。お父様が守ってきたハーデス家を私が守れないのが申し訳ないと思うの」
「おじさんはおばさんやメアリを守る為に地位や権限を得ただけで家の存続の為に得た力じゃない。もしメアリが跡継ぎを産む為に結婚すると決めたら、おじさんもおばさんも喜ばない」
事務官長のハーデス侯爵を怒らすな、王宮に勤めていれば聞こえてくる話だ。おじさんはおばさんとメアリを守る為なら鬼にも悪魔にもなる。
父上と気が合った所もそこだ。妻に一筋、大切なものを守る為には鬼にも悪魔にもなる。
「それは知ってるけど」
「おじさんもおばさんもメアリには幸せになってほしいと願ってる。メアリが心から愛する人と添い遂げてほしいとそう望んでいるんだ」
「そうね」
俺が学園を卒業してから、メアリが学園を卒業したら結婚したいと許しをもらいに来た時『私以上にメアリを愛し守れるか』と言われた。俺は『愛し守れる』と答えた。メアリ以外を愛せるとは思えないし騎士として守れると思っていたからだ。メアリが学園を卒業しても良い返事は貰えなかった。
俺は分かっていなかった。強さは腕っぷしの強さではなく心。学園では腕っぷしの強さが強さの象徴だった。王宮で騎士として働き始めて色々な人と関わり心の強さが強さの象徴だと知った。それが分かり結婚の許しがようやく貰えた。
そして魂の番に会い俺はまだ未熟だと知った。魂の番の手を取る前に俺は正気に戻った。でもその時には遅かった。メアリは立ち去り深い傷をつけた。
侯爵がメアリに婚約者候補を会わせている、その情報は直ぐに俺の耳に入った。それでも侯爵の元へ通い続けた。
今思えば侯爵に試されていた。
俺はメアリが俺以外の男に惚れるような俺以外の男を好きになるような愛し方はしていない。俺の愛情にどっぷり浸かったメアリがそこら辺の男で満足する訳がない。
メアリが欲しいのなら私から奪ってみろ
例え親でも大切なものを守る為なら情を捨てなければならない。欲しいものの為なら悪者にもなる。
あの日俺は侯爵に俺の全てを曝け出した。そして『婚約者は俺だ』と、婚約の誓約書がこちらにはあると俺は伝えた。
メアリは俺のものだ
俺は簡単には手放さないと。例えメアリの父親の貴方にも邪魔はさせないと。
最後はメアリに委ねられた。誰の手を取るのか…。俺か違う男か、それとも両親か。だから俺は俺の手を取るように仕向けないといけない。
「おじさまとおばさまだって、私より同じ種族のお嫁さんが良いと思ってるかもしれないじゃない」
「それはない。父上も母上も俺がメアリを愛しているのを知ってる。その上で応援してくれているんだ。ガルフ長の許しも得た。メアリを番にするのに何の障害もない。
おじさんとおばさんだって俺達を見守ってくれているだろ?だから俺はこうしてメアリに会える」
侯爵の許しが無ければこの邸に入る事なんか出来ない。何を言おうと侯爵も認めてくれている。だから『メアリ次第』なんだ。
「ねぇウォル、ウォルの獣の部分って…、やっぱり何でもない」
「俺の獣の部分か…、メアリに嫌われる要素しかないな」
「………嫌わないわよ」
「閉じ込めてもか?」
「え?」
「俺はメアリに俺以外を目に映してほしくない。俺以外の声を聞いてほしくない。俺の愛情だけの中で生活してほしい」
「もし、もしもよ?もし結婚してもおじさまとおばさまと一緒に暮らせないの?」
「俺達は俺達の愛の住処で二人きりで暮らす」
「どうして?私おじさまとおばさまと一緒に暮らせると思ってたわ。それに、私料理なんか出来ないわよ?」
「俺が出来るから心配するな」
「洗濯だって」
「洗濯も掃除も俺が出来る。メアリは何もしなくていい」
「掃除くらいは出来るわよ」
「はあ?メアリの手が汚れるだろ」
「ちょっと?」
「メアリの湯浴みも着替えも俺がする。例えメイドでもメアリに触れるのは俺だけがいい」
「ウォル」
「それに、父上は男だ。侯爵はメアリの父親だから百歩譲って許せるけど、父上は駄目だ。可愛いメアリを見せたくない。父上の目に映るのさえ我慢できない」
「ウォルのお父様じゃない。それに義理のお父様になるのよ?」
「……だから嫌われるって言っただろ?俺の獣の部分はメアリに嫌われるから見せたくない」
「もう…」
メアリの呆れた声に俺は顔を上げられない。
俺を見る目が怖い…
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