14 / 61
14
しおりを挟む
目を開けると私の手を握るジークルト様が居た。
私はジークルト様の乱れた黒髪を反対の手で整える。
ジークルト様はビクッとしてから顔を上げた。
目が合い、
「目が覚めたのか?」
「はい」
「一週間も目が覚めなくて…このまま目覚め無いかと思った」
「心配をおかけしました」
「いや。水でも飲むか?」
「はい。頂けますか?」
ジークルト様は私の手を離し、少し離れた机の上にある水差しからコップに水を注ぎ、
「ルト…」
水を注いだコップを持って私の方を振り返る。
「ルト…生きていたの?」
コップを机の上に置き、
突然抱きしめられた。
「リー」
「ジークルト様はルトなのですね」
「ああ」
「あの日、薄暗い小屋の中でルトは私を庇い背中を切られた。沢山血が飛び散り、それでも泣いてる私の涙を拭った。泣かないで、リー、泣かないで、リー、俺の愛しいお姫様。俺なら大丈夫。リーが傷付くくらいなら俺が傷付いた方がずっと良い、と言って意識を失った。幼い私はルトが死んだと思った。私はルトの花嫁さんだから。ルトが迎えに来るまで他の人を好きにならないでと言われたから…。
私はルトの記憶を封じた。幼い私には大好きなルトの死が耐えられなかったから。私は泣いて叫んだ。一緒に連れて行ってと。私はルトの花嫁さんだからルトの側に居たいと。背中の傷を治療する為に離された私は永遠に離されたと思いルトへの思いを心にしまい記憶を封じて何もかも忘れた…」
「リー、俺の愛しいお姫様」
「ルトの初恋は私?」
「リー以外の女の子と婚約も婚姻もしたくなかった。俺のお嫁さんはリーだから。リーが俺を忘れても俺はリーをずっと愛してた」
「私の初恋もルトよ? それに大人になったジークルト様にまた恋をしたの、私。だけどきっと違うわね。心はルトがジークルト様って分かってた。だから大好きなルトにもう一度会えて恋した気持ちを思い出したの。だから懐かしく思ったし温かい気持ちになった。だけど苦しくて悲しかった。私を庇って傷を負ってしまったから、だから涙が溢れた」
「リー、背中の傷はリーを護れた証だ」
「でも不名誉って」
「リーに怖い思いをさせたんだぞ?不名誉だろ?」
「じゃあ罰は?」
「俺はあの時騎士として未熟だった。だからリーの泣き声で直ぐに助けないとと思って何も考えずに小屋へ飛び込んだ。リーを見つけ抱きしめた時、後ろに居た敵に背中を切られた。リーを護れなかった俺はリーに忘れ去られても仕方ないほど未熟だと己に罰を下した」
「ルトは私を護ったじゃない。私は傷一つ無かったわ」
「それでも幼いリーを護れなかった。攫われた」
「どうして私は攫われたの?」
「リーはあの日、マリー、マリアンヌ王女の代わりに攫われたんだ」
「王女殿下の?」
「あの日、リーのお父上は陛下と謁見中で、その間に王女と顔見せをさせる予定だった。ご友人として」
「私、伯爵令嬢よ?ご友人にはなれないわ」
「フランベル伯爵家がこの国の貿易を担ってるのは知ってるだろ?」
「うん」
「この国が豊かで栄えてるのは貿易をして他国と繋がるからだ。お父上は伯爵だが、何度も爵位の陞爵を断っている。本来なら公爵になってもおかしくないんだ。だけどお父上は身分があり、財力があればフランベル家が力を持ち過ぎると言って断り続けてる。 王女と年の近いリーを友人にする事でお父上の爵位を陞爵させようと陛下がリーとリーのお母上もあの日王宮に呼んだ」
「そうなのね」
「だけどその日王女は風邪をひいて顔見せが出来なかった。俺は幼い頃から王太子と過ごす事が多いから第二王子とも王女とも一緒に過ごす事は多い。これからお互い顔を合わせる事になるからとマリーの代わりに俺がリーの相手をする事になった。リーのお母上の相手は俺の母上が、だからあの日俺はリーと出会った」
「うん」
「俺は王女の事をマリーと呼んでいた。そしてリーの事はリーって」
「それで間違われたの?」
「それだけじゃないと思う。俺はマリーの遊び相手もしてたから」
「ルトと一緒にいる子だからって事?」
「王宮で幼い女の子はマリーだけだ」
「そうね」
「俺と一緒に居る幼い女の子、俺がリーと呼ぶ子。攫った相手がマリーの顔があまり分からなかったら?」
「間違えても仕方ないわね」
「相手は隣国の者だった」
「隣国?王女様の婚約者の王子様の国?」
「ああ」
私はジークルト様の乱れた黒髪を反対の手で整える。
ジークルト様はビクッとしてから顔を上げた。
目が合い、
「目が覚めたのか?」
「はい」
「一週間も目が覚めなくて…このまま目覚め無いかと思った」
「心配をおかけしました」
「いや。水でも飲むか?」
「はい。頂けますか?」
ジークルト様は私の手を離し、少し離れた机の上にある水差しからコップに水を注ぎ、
「ルト…」
水を注いだコップを持って私の方を振り返る。
「ルト…生きていたの?」
コップを机の上に置き、
突然抱きしめられた。
「リー」
「ジークルト様はルトなのですね」
「ああ」
「あの日、薄暗い小屋の中でルトは私を庇い背中を切られた。沢山血が飛び散り、それでも泣いてる私の涙を拭った。泣かないで、リー、泣かないで、リー、俺の愛しいお姫様。俺なら大丈夫。リーが傷付くくらいなら俺が傷付いた方がずっと良い、と言って意識を失った。幼い私はルトが死んだと思った。私はルトの花嫁さんだから。ルトが迎えに来るまで他の人を好きにならないでと言われたから…。
私はルトの記憶を封じた。幼い私には大好きなルトの死が耐えられなかったから。私は泣いて叫んだ。一緒に連れて行ってと。私はルトの花嫁さんだからルトの側に居たいと。背中の傷を治療する為に離された私は永遠に離されたと思いルトへの思いを心にしまい記憶を封じて何もかも忘れた…」
「リー、俺の愛しいお姫様」
「ルトの初恋は私?」
「リー以外の女の子と婚約も婚姻もしたくなかった。俺のお嫁さんはリーだから。リーが俺を忘れても俺はリーをずっと愛してた」
「私の初恋もルトよ? それに大人になったジークルト様にまた恋をしたの、私。だけどきっと違うわね。心はルトがジークルト様って分かってた。だから大好きなルトにもう一度会えて恋した気持ちを思い出したの。だから懐かしく思ったし温かい気持ちになった。だけど苦しくて悲しかった。私を庇って傷を負ってしまったから、だから涙が溢れた」
「リー、背中の傷はリーを護れた証だ」
「でも不名誉って」
「リーに怖い思いをさせたんだぞ?不名誉だろ?」
「じゃあ罰は?」
「俺はあの時騎士として未熟だった。だからリーの泣き声で直ぐに助けないとと思って何も考えずに小屋へ飛び込んだ。リーを見つけ抱きしめた時、後ろに居た敵に背中を切られた。リーを護れなかった俺はリーに忘れ去られても仕方ないほど未熟だと己に罰を下した」
「ルトは私を護ったじゃない。私は傷一つ無かったわ」
「それでも幼いリーを護れなかった。攫われた」
「どうして私は攫われたの?」
「リーはあの日、マリー、マリアンヌ王女の代わりに攫われたんだ」
「王女殿下の?」
「あの日、リーのお父上は陛下と謁見中で、その間に王女と顔見せをさせる予定だった。ご友人として」
「私、伯爵令嬢よ?ご友人にはなれないわ」
「フランベル伯爵家がこの国の貿易を担ってるのは知ってるだろ?」
「うん」
「この国が豊かで栄えてるのは貿易をして他国と繋がるからだ。お父上は伯爵だが、何度も爵位の陞爵を断っている。本来なら公爵になってもおかしくないんだ。だけどお父上は身分があり、財力があればフランベル家が力を持ち過ぎると言って断り続けてる。 王女と年の近いリーを友人にする事でお父上の爵位を陞爵させようと陛下がリーとリーのお母上もあの日王宮に呼んだ」
「そうなのね」
「だけどその日王女は風邪をひいて顔見せが出来なかった。俺は幼い頃から王太子と過ごす事が多いから第二王子とも王女とも一緒に過ごす事は多い。これからお互い顔を合わせる事になるからとマリーの代わりに俺がリーの相手をする事になった。リーのお母上の相手は俺の母上が、だからあの日俺はリーと出会った」
「うん」
「俺は王女の事をマリーと呼んでいた。そしてリーの事はリーって」
「それで間違われたの?」
「それだけじゃないと思う。俺はマリーの遊び相手もしてたから」
「ルトと一緒にいる子だからって事?」
「王宮で幼い女の子はマリーだけだ」
「そうね」
「俺と一緒に居る幼い女の子、俺がリーと呼ぶ子。攫った相手がマリーの顔があまり分からなかったら?」
「間違えても仕方ないわね」
「相手は隣国の者だった」
「隣国?王女様の婚約者の王子様の国?」
「ああ」
35
あなたにおすすめの小説
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました
Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。
必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。
──目を覚まして気付く。
私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰?
“私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。
こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。
だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。
彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!?
そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
旦那さまは私のために嘘をつく
小蔦あおい
恋愛
声と記憶をなくしたシェリルには魔法使いの旦那さまがいる。霧が深い渓谷の間に浮かぶ小さな島でシェリルは旦那さまに愛されて幸せに暮らしていた。しかし、とある新聞記事をきっかけに旦那さまの様子がおかしくなっていっていく。彼の書斎から怪しい手紙を見つけたシェリルは、旦那さまが自分を利用していることを知ってしまって……。
記憶も声もなくした少女と、彼女を幸せにするために嘘で包み込もうとする魔法使いのお話。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる