麗しの騎士様の好きな人

アズやっこ

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 目を開けると私の手を握るジークルト様が居た。

 私はジークルト様の乱れた黒髪を反対の手で整える。

 ジークルト様はビクッとしてから顔を上げた。

 目が合い、


「目が覚めたのか?」

「はい」

「一週間も目が覚めなくて…このまま目覚め無いかと思った」

「心配をおかけしました」

「いや。水でも飲むか?」

「はい。頂けますか?」


 ジークルト様は私の手を離し、少し離れた机の上にある水差しからコップに水を注ぎ、


「ルト…」


 水を注いだコップを持って私の方を振り返る。


「ルト…生きていたの?」


 コップを机の上に置き、

 突然抱きしめられた。


「リー」

「ジークルト様はルトなのですね」

「ああ」

「あの日、薄暗い小屋の中でルトは私を庇い背中を切られた。沢山血が飛び散り、それでも泣いてる私の涙を拭った。泣かないで、リー、泣かないで、リー、俺の愛しいお姫様。俺なら大丈夫。リーが傷付くくらいなら俺が傷付いた方がずっと良い、と言って意識を失った。幼い私はルトが死んだと思った。私はルトの花嫁さんだから。ルトが迎えに来るまで他の人を好きにならないでと言われたから…。

私はルトの記憶を封じた。幼い私には大好きなルトの死が耐えられなかったから。私は泣いて叫んだ。一緒に連れて行ってと。私はルトの花嫁さんだからルトの側に居たいと。背中の傷を治療する為に離された私は永遠に離されたと思いルトへの思いを心にしまい記憶を封じて何もかも忘れた…」

「リー、俺の愛しいお姫様」

「ルトの初恋は私?」

「リー以外の女の子と婚約も婚姻もしたくなかった。俺のお嫁さんはリーだから。リーが俺を忘れても俺はリーをずっと愛してた」

「私の初恋もルトよ? それに大人になったジークルト様にまた恋をしたの、私。だけどきっと違うわね。心はルトがジークルト様って分かってた。だから大好きなルトにもう一度会えて恋した気持ちを思い出したの。だから懐かしく思ったし温かい気持ちになった。だけど苦しくて悲しかった。私を庇って傷を負ってしまったから、だから涙が溢れた」

「リー、背中の傷はリーを護れた証だ」

「でも不名誉って」

「リーに怖い思いをさせたんだぞ?不名誉だろ?」

「じゃあ罰は?」

「俺はあの時騎士として未熟だった。だからリーの泣き声で直ぐに助けないとと思って何も考えずに小屋へ飛び込んだ。リーを見つけ抱きしめた時、後ろに居た敵に背中を切られた。リーを護れなかった俺はリーに忘れ去られても仕方ないほど未熟だと己に罰を下した」

「ルトは私を護ったじゃない。私は傷一つ無かったわ」

「それでも幼いリーを護れなかった。攫われた」

「どうして私は攫われたの?」

「リーはあの日、マリー、マリアンヌ王女の代わりに攫われたんだ」

「王女殿下の?」

「あの日、リーのお父上は陛下と謁見中で、その間に王女と顔見せをさせる予定だった。ご友人として」

「私、伯爵令嬢よ?ご友人にはなれないわ」

「フランベル伯爵家がこの国の貿易を担ってるのは知ってるだろ?」

「うん」

「この国が豊かで栄えてるのは貿易をして他国と繋がるからだ。お父上は伯爵だが、何度も爵位の陞爵を断っている。本来なら公爵になってもおかしくないんだ。だけどお父上は身分があり、財力があればフランベル家が力を持ち過ぎると言って断り続けてる。 王女と年の近いリーを友人にする事でお父上の爵位を陞爵させようと陛下がリーとリーのお母上もあの日王宮に呼んだ」

「そうなのね」

「だけどその日王女は風邪をひいて顔見せが出来なかった。俺は幼い頃から王太子と過ごす事が多いから第二王子とも王女とも一緒に過ごす事は多い。これからお互い顔を合わせる事になるからとマリーの代わりに俺がリーの相手をする事になった。リーのお母上の相手は俺の母上が、だからあの日俺はリーと出会った」

「うん」

「俺は王女の事をマリーと呼んでいた。そしてリーの事はリーって」

「それで間違われたの?」

「それだけじゃないと思う。俺はマリーの遊び相手もしてたから」

「ルトと一緒にいる子だからって事?」

「王宮で幼い女の子はマリーだけだ」

「そうね」

「俺と一緒に居る幼い女の子、俺がリーと呼ぶ子。攫った相手がマリーの顔があまり分からなかったら?」

「間違えても仕方ないわね」

「相手は隣国の者だった」

「隣国?王女様の婚約者の王子様の国?」

「ああ」


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