麗しの騎士様の好きな人

アズやっこ

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「ジークが初恋の君を忘れられず、初恋の女の子としか婚約をしないのも婚姻もしないのも本当の話ですわ。相手はわたくしではなくて、貴女よ。フランベル伯爵令嬢」

「あの、私は王女殿下が成人して初めて出席した夜会で見かけたのが初めてなのですが」

「貴女、幼い頃の記憶がないのでしたわね」

「はい」

「何も思い出せませんの?」

「はい」

「そう……」

「すみません」

「貴女が謝る事ではなくてよ。貴女、婚約者がおりませんわよね?」

「はい」

「ジークの事はお嫌い?」

「いえ」


 私は顔が赤くなった。


「もしかして、お好きなの?」

「好き…と言いますか、ジークルト様を見ると胸が高鳴り苦しくなります。懐かしい様な温かい様な、それでいて苦しくて悲しくて涙が溢れます」

「そう。ジークにまた恋をしましたのね?」

「初恋です」

「そうですの?」

「はい」

「それならふたりでまた関係を築けばよろしくてよ。ジークを婚約者になさったら? ジークの初恋の君は貴女よ?貴女が忘れてる記憶の中にジークはいて、ふたりは恋に落ちましたの。 でも貴女は記憶を失いジークを忘れましたの。 それでも貴女は今のジークに恋をしましたわ。それなら今のふたりでまた関係を築けばよろしいのではなくて?」

「良いのでしょうか」

「ジークに聞いてみてはいかがかしら」

「それは恥ずかしいです」

「可愛い。ジークが一目惚れするのも分かりますわね」

「え?」

「何でもありませんわ」


 王女様は近くに居た侍女に耳打ちし、侍女はジークルト様の元へ行き、ジークルト様と目が合った。


【 ドクン 】


 私は胸が苦しくなり、涙が溢れた。


「どうなさったの?」

「申し訳ありません」

「サリーリ嬢、どうされました?」


 ジークルト様が私の側に来て、片膝をついて私を見上げる。


「サリーリ嬢、ご気分が優れませんか?」


 私は首を左右に振る。

 ジークルト様が親指で私の涙を拭う。


「泣かないで下さい。サリーリ嬢」

(泣かないで、リー)

「え?」

「泣かないで下さい。サリーリ嬢」

(泣かないで、リー、……)


 ジークルト様の優しい手が顔に触れ、私の涙を拭う。とても愛おしそうに見つめられ、


「俺の愛しい…………」

「サリーリ嬢?」

「泣かないで、リー、俺の愛しいお姫様」

「俺なら大丈夫。リーが傷付くくらいなら俺が傷付いた方がずっと良い」


 ジークルト様が私を抱きしめ、耳元で


「リー、遅くなってごめん。迎えに来たよ」

「ルト……」


 私はそのまま意識を失った。

 遠くで「リー、リー」と叫ぶ声。



「おにいさまはひるまのおそらとよぞらとおそらをどっちももってる。ずるい!リーもおそらほしい」

「リーは綺麗なピンクを持ってるだろ?」

「ぴんく?ぴんくはおそらじゃないしひからないもん」

「ピンクは可愛いだろ?それに可愛い花を咲かせる」

「おはな?おはなはなにいろでもきれいよ?」

「俺はピンクの花が好きだし綺麗だと思う」


 ★☆


「リー、ルトすきよ?」

「リーの好きは、花が好きやぬいぐるみが好きと同じだろ?」

「わかんない」

「リーが分かる様になったら俺がお嫁さんに貰いに行こうかな」

「リー、ルトのおよめさん?」

「リーが俺を好きならね」

「リー、ルトのおよめさんなる」

「うん。俺のお嫁さんになって」


 ★☆


「リー、可愛い。花冠似合うよ」

「ありがと、ルト。リー、はなよめさんみたいね」

「花嫁か。そうだね。リーが後11年たてば16歳だ。そしたら直ぐに迎えに行く。それまで待っててくれる?」

「うん」

「それまでに俺は立派な騎士になってリーを護るよ」

「きし?リーの?」

「リーだけの騎士になれる様に俺も頑張るからリーは俺が迎えに行くまで他の人好きになるなよ?」

「うん。リーはルトのはなよめさんだから」


 ★☆


「お兄様じゃない。ジークルトだ」

「じー」

「ジークルト」

「ルト?」

「ルトで良いよ。リーだけな」


 幼い女の子と少年の顔が鮮明に見える。幼い女の子は私…。少年はジークルト様…。


「背中に傷?」

「初恋の子を護れなかった情けない傷です」


 あの背中の傷は私を護って負った傷。ルトの苦しそうな顔。赤い血飛沫。ぐったりと力が抜けて、


「ルト、ルト、おめめあけて。おねがいリーをおいていかないで。ルト、ルト」

「しんじゃいやー」

「リーはルトのはなよめさんなの。リーもつれてって。リーはルトのはなよめさんなの」

「リーをむかえにくるっていった。まっててって。ルトがむかえにくるまでほかのひとすきにならない。リーはルトがだいすきだから。だからリーもつれてって。リーはルトのおそばにいたい」


 そう。私はルトが死んだと思った。だからルトの思いと一緒に記憶を封じたの。ルトとの約束を守る為に他の人を好きにならなかった。

 夜会で見た時、胸がざわついた。心の奥にしまい封じたはずなのに、心は分かっていた。余りにルトに似ていたから。だから涙が溢れた。


【お兄様じゃない。ジークルトだ】

【リー、遅くなってごめん。迎えに来たよ】


 ルト……


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