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しおりを挟む昼食の時間、俺は毎日食堂で食べる。
第一王子のエドワードのお供だが、どうせ昼食を食べるから一緒だ。
妹が入学してきてからは妹も一緒に食べる。
食堂の一角、王族が座るテーブルに俺は遅れて行った。
昼食を手に席に着く。
あの女が友と昼食を食べている。
初めてここで見た気がする。
俺は自然とあの女を目で追う。
お前が友と楽しそうに昼食を食べている。
友と笑い合っている。
なぜ友にはお前の笑顔を見せる。
俺には怯えた顔しか見せないのに、
俺にもお前の笑った顔を見せてくれ。
友が席を立ち、お前は友を目で追っている。
友を見つめるお前の笑った顔…、
俺はお前を見つめた。
お前の笑った顔を俺も見てみたい。
お前を見つけるつもりはない。
それなのに、
お前に向かう一本の道が見える。
周りの奴らは靄がかかったように霞んで見えた。
間には誰も居ないと錯覚するぼど俺とお前、二人だけしかここにいないみたいだ。
俺はお前を見る。
お前も俺を見る。
どうしてそんな顔をする?
怯えたように俺を見る!
俺が何をした!
お前は席を立ちデザートの列に並んだ。
俺も直ぐに席を立ちお前の後ろに並んだ。
「何を買うんだ」
俺は話しかけた。
「え?」
「何を買うんだ」
「あ、はい。プリンを。友達がイチオシって書いてあったから美味しいはずだって言っていたので」
「イチオシでは無いぞ」
「え?」
「売れないからイチオシって書いてあるだけだ」
「そうなのですか?」
「ああ。そこまで美味しくない」
「ふふっ」
「なんだ」
「不味かったって顔が言ってますよ?」
「不味いとは言ってない。ただ美味しいプリンなら他にある」
「そうなのですか?」
「ああ。で、それでも買うのか?」
「はい。一度食べてみたいです」
「そうか」
チャリン
プリン代がカルトンに置いた。
「あの…」
「なんだ」
「自分で出しますので…」
「美味しくないと言った詫びだ」
「ですが…」
俺は元いた席に戻った。
俺にも笑った顔を見せてくれた。
やっとだ、
やっと俺にも見せてくれた。
お前の笑った顔が見たかった。
だがその笑顔じゃない。
俺が見たかったのは、
その笑顔じゃない。
「お前、デザート買いに行ったんじゃないのか?」
「俺は甘い物は食わん」
「なら何故並びに行った」
「エドに関係ないだろ」
「どうせ並んだならシャリーに買ってきてくれれば良かっただろ」
「どうして俺が妹の分まで払わないといけない」
「ならお前は誰の分を払ったんだよ」
「エドには関係ない」
俺はまたお前を見つめた。
友と笑い合ってるお前の顔を、
美味しいとは言えないプリンを食べてるお前の顔を、
ほら言っただろ?
美味しくないと。
お前も顔に出てるぞ。
フッ、
「フェルが笑うなんてな…。誰を見てる?」
「食べたなら戻るぞ」
「おい、フェル」
「俺は先に戻るぞ」
エド達から離れ、もう一度お前を見る。
気づけ!
気づくな!
俺はどうしたい。
自分が分からない………
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