7 / 17
7 公爵令嬢最後の日
エドワード王子の私室から事務官と一緒に出た私は事務官にお礼を言い、足取り軽く馬車に乗り込んだ。
馬車は数分で公爵家へ着いた。
ここからも気が抜けないわ。
馬車から降り、そのままお父様の書斎へ向かった。
コンコン
「シャーロットです」
「入れ」
書斎に入りお父様と対峙する。
「何だ」
「エドワード王子と婚約破棄しました」
「何だと!」
お父様は怒鳴り声をあげて立ち上がった。
「お前の価値はエドワード王子の婚約者だけだ!それさえもまともに出来ないのか!だから言ったんだ、お前じゃなくてサーラを婚約者にと!
お前に今までどれだけお金を使ってきたと思う!」
勝手に寄付という名の賄賂を贈ってきただけでしょ?
お父様が賄賂を贈っていた相手はエドワード王子に仕える人達。エドワード王子に他の女性を近寄らせないように、婚約者の私の地位を盤石にする為に。
でも全く役に立っていなかったけど。
今回私が頼んだ事務官は公正に物事を判断する議会の事務官。もし賄賂を贈るなら議会の事務官に贈るべきだったわね。
受け取るか受け取らないかは別だけど。
「お前が婚約破棄されたなら今度こそサーラをエドワード王子の婚約者にする」
サーラは戸籍上では異母妹。でも全く血の繋がらない義理の妹。
お父様は自分の娘だと思っているけど、知らぬが仏。見れば直ぐに分かるのに。
どこにお父様と似た所があるの?
お母様が亡くなり、お父様は葬儀が終わって一週間後に義母と義妹を邸に呼んだ。お父様が平民の女性を愛人にしていたのも知っていた。
「シャーロット、新しい母親とお前の妹だ」
お母様が亡くなり悲しんでいる7歳の私に義母と義妹を受け入れる事は出来なかった。
それでも義母はまるで自分の邸のように振る舞い、私に付いていたメイドは義妹のサーラに付かせた。唯一まだ入ったばかりの見習いメイドだったメアリだけを私に付かせて。
お父様と結婚したなら自分の邸のように振る舞っても間違いじゃないわ。それでも7歳の私にはそれが許せなかった。
ここは私の家、私のお母様は亡くなったお母様だけ!
元々お父様から邪険にされていた私は孤立した。食事は部屋で一人で食べ、洋服はサーラのお古。
それでもエドワード王子の婚約者選びに呼ばれたのは私だけ。
「お姉様だけずるいわ」
「本当よ!どうしてサーラが呼ばれないの!」
義母とサーラはお父様に詰め寄っていたけど王宮からの呼び出しは私の名前しかない。呼ばれてもいないのに行かせる事は出来ない。
公爵当主のお父様は自分の保身に走った。
サーラを無理矢理行かせれば周りからの反応は、白い目で見られ嘲笑される。公爵家としては致命的となる。
婚約者選びの為にドレスと髪飾りを新調した。それも王宮から帰って来たらサーラが奪っていったけど。
婚約者に決まり、それから義母とサーラは私に嫌がらせをしだした。食事は具が少しだけ入ったスープ、前日の残ったパン、誰かが食べ残した肉の欠片。
でも王宮へ王子妃教育に行けば昼食は王宮の料理が食べれるから栄養は取れていたわ。そこは婚約者になれて良かった所ね。
毎日王宮へ行く為にお父様は私にドレスを新調した。サーラは新調したドレスを欲しがったけど私をみすぼらしい格好で行かせる事は出来ない。
後妻を娶って前妻の子、それもエドワード王子の婚約者を蔑ろにしているなんて外聞が悪いもの。
それでもサーラが気に入ったドレスは奪われたわ。髪飾りも気に入れば奪っていった。
学園に入学してからは制服で王宮へ行くようになったから奪われる事はなくなったけど。
あと、サーラが唯一奪わなかったもの。それはエドワード王子から贈られた物。それだけはお父様にきつく言われたみたい。物欲しそうに見ていたけど、それだけは我慢していたみたいね。
私に贈った物をサーラが着ていたり付けていたら娘の教育も出来ないのかとお父様が白い目で見られるもの。
結局目の前のお父様は自分の身が一番可愛いのよ。
「エドワード王子の婚約者ではなくなったお前に価値はない!お前は用済みだ!今すぐ邸から出て行け!金輪際親でも子でもない!私の娘はサーラだけだ!」
私は着の身着のまま勘当された。
でもこれも想定内。
「お嬢様」
「メアリ」
「私はお嬢様と共に」
「ありがとう」
邸から離れた所に止まっている馬車に乗り込み、
「あはははは!バカな人!」
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
妹と再婚約?殿下ありがとうございます!
八つ刻
恋愛
第一王子と侯爵令嬢は婚約を白紙撤回することにした。
第一王子が侯爵令嬢の妹と真実の愛を見つけてしまったからだ。
「彼女のことは私に任せろ」
殿下!言質は取りましたからね!妹を宜しくお願いします!
令嬢は妹を王子に丸投げし、自分は家族と平穏な幸せを手に入れる。
(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ?
青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。
チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。
しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは……
これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で
す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦)
それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう
水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。
しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。
マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。
マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。
そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。
しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。
怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。
そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。
そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……
(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です
青空一夏
恋愛
私はティベリア・ウォーク。ウォーク公爵家の次女で、私にはすごい美貌のお姉様がいる。妖艶な体つきに色っぽくて綺麗な顔立ち。髪は淡いピンクで瞳は鮮やかなグリーン。
目の覚めるようなお姉様の容姿に比べて私の身体は小柄で華奢だ。髪も瞳もありふれたブラウンだし、鼻の頭にはそばかすがたくさん。それでも絵を描くことだけは大好きで、家族は私の絵の才能をとても高く評価してくれていた。
私とお姉様は少しも似ていないけれど仲良しだし、私はお姉様が大好きなの。
ある日、お姉様よりも早く私に婚約者ができた。相手はエルズバー伯爵家を継ぐ予定の嫡男ワイアット様。初めての顔あわせの時のこと。初めは好印象だったワイアット様だけれど、お姉様が途中で同席したらお姉様の顔ばかりをチラチラ見てお姉様にばかり話しかける。まるで私が見えなくなってしまったみたい。
あなたの婚約相手は私なんですけど? 不安になるのを堪えて我慢していたわ。でも、お姉様も曖昧な態度をとり続けて少しもワイアット様を注意してくださらない。
(お姉様は味方だと思っていたのに。もしかしたら敵なの? なぜワイアット様を注意してくれないの? お母様もお父様もどうして笑っているの?)
途中、タグの変更や追加の可能性があります。ファンタジーラブコメディー。
※異世界の物語です。ゆるふわ設定。ご都合主義です。この小説独自の解釈でのファンタジー世界の生き物が出てくる場合があります。他の小説とは異なった性質をもっている場合がありますのでご了承くださいませ。