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しおりを挟むジルベーク視点
シアは可愛い。それは初めて会った時から思っていた。
王命で「第二王女と婚姻せよ」と届いた時は、国王を殴ってやろうかと思った。
約10年前、第一王女が帝国の皇子の一目惚れで、恋仲となった話は辺境にも届いた。 その時、王家から第一王女の婚約と婚姻の打診があったが、家督を継いだばかりの俺にはそんな余裕はないと断った。 その話を聞き付けた皇子が国王を言いくるめ婚約し、王女を連れ去る様に帝国へ帰って行った。
「第一王女の次は第二王女か!」
と、思わず大声で怒鳴っても仕方ない。
「辺境の地は国王の娘を匿う場所じゃないんだ」
俺が収める辺境は隣国と隣り合わせだ。独自の隠密を隣国に潜らせてる。 情報で王子が平民上がりの男爵令嬢と恋仲になっている事は知っていた。
隣国で王子が産まれ、その次の年、こちらも第二王女が産まれた。 隣国の国王が第二王女が産まれて直ぐから婚約の打診を何度もしてる事も、うちの国王が何度も断ってる事も。
そのお陰で辺境は争いが絶えない。隣国が幾度と無く争いを仕掛けてくる。それを俺達がくい止める。隣国が海の航路を作りたいのは知ってるが、腹違いとはいえ兄弟なんだから、まずは兄弟で争って欲しい。「他国と争わず自国で争え」って何度思った事か。
同じ辺境でも大国側と帝国側は友好的な関係だ。何事も無ければ王子と王女の婚姻はいずれ決まっていただろう。そしたらこの辺境も争いが無くなり住みやすくなるんだが。
結果は、王子は王位継承も剥奪され廃嫡。平民になるらしい。王女との婚姻も断絶され、こちらに火の粉が飛んできた。
隣国の国王は王族の血筋の公爵家の息子を王女にあてがおうと画策してるが、その息子、王女より五つ歳上で既に婚姻し子も産まれている。
国王は奥方と離縁させ、王女を娶らせるつもりだが、息子の方は拒否してるらしい。
当たり前だよな、奥方も居て子も居て、王子の尻拭いで離縁させられ王女を娶るなんて、誰でも嫌だろうからな。
奥方は愛妾として別の邸で囲えば良いと言われても、既に産まれた子は愛妾の子になり跡継ぎには出来ない。 息子の親の公爵も奥方の親の侯爵も反対して話は平行線のままだ。
王弟にも子が居るが、王弟の子に王女が嫁げば自分の立ち位置が危うくなる。自分の立場を護る為にも王弟の子と婚姻はさせないだろう。
自分勝手な国王だ。
うちの国王も隣国の国王の画策を知り、急いで俺に王命を出した。 俺も辺境伯と言う国王の臣下で貴族だ。王命は絶対だ。断る事など出来ない。 隣国との争いもこれから今以上に深刻になる。その上、王女もだと!
国を護り王女も護り?
俺にどれだけ護らせれば気が済むんだ!
文句を言いたくなるのも仕方ないだろ。
「王命な以上、王女を娶ってやるよ」
俺は筋肉が付いて大柄だ。傷もある。顔だって格好良い方じゃない。騎士見習いからは顔が怖いと恐れられてる。王女には気の毒だが、知った事か!
おまけに王女と十も歳が離れてる。まだ成人したばかりの若い王女にとって俺はおじさんだ。
王女なら選びたい放題なのにな。
まぁ、政略結婚だ。形だけの夫婦になるだろうな。
王女が暮らす部屋をイザークに整えてもらい、王女を迎える準備は終わった。明日王女が辺境に着く。初めて見る俺に怖がるだろうな。
王女が邸に着く早朝、国境から鷹が飛んできた。隣国とは陸続きと山続きに面してる。山続きの方は王弟の領地に面していて比較的争いはない。たまに賊がこちら側へ入ってくるが、賊退治だから討伐すれば良いだけだ。鷹の連絡も山側だった。俺が行くまでもない案件だ。キースと数人の騎士で間に合うだろう。だが俺は向かった。
キースには小言を言われたが、俺の意に沿わない婚姻だ。王女だってこんな辺境に嫁ぎたく無かっただろう。俺が出迎えようが、イザークが出迎えようが変わらないだろう。
国境から帰って来たのは夜遅くになった。イザークに出迎えられ、王女が挨拶したいと起きて待ってると言われた。
俺は書斎で王女を待っていた。イザークに連れられ王女が部屋の中に入って来た。
第一印象は、可愛い子だなと思った。
だから余計に俺には不釣り合いだ。形だけ結婚して、隣国が落ち着いたら解放してやろう。王女なら二度目の結婚でも良い所に嫁げるだろう。白い結婚なら尚更だ。例え自分の妻にならなくても護ってみせる。
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