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二人の姿
しおりを挟む違う、そうじゃない。
どうして公爵家だけがこの場に集まったの?見届人それもある。見届人なら現当主だけ良かった。次代の当主達は必要ない。
まだ立太子していない公爵令息…、
次代の公爵当主達…、
王の裁き…、
王妃の毒杯…、
王も王妃も王太子もいない間は四家公爵家が代理を務める。
暴動が起こる前に辺境を制圧する
その為の時間稼ぎだったのよ。
今から隊を編成して辺境へ向かうには時間の猶予がなかった?
だから陛下は己の命を懸けて…、陛下が命を懸けなくてはいけないほど猶予がなかった。だから陛下は今日裁きを行った。リーストファー様が今日王宮軍へ来ると知っていたから。
陛下はリーストファー様の復讐心を知っていた。時間稼ぎもでき、リーストファー様の復讐も果たせる。
王に裁きが下された、それは瞬く間に辺境の彼等にも伝わる。歓喜、動揺、そのどちらかは分からないけど、それでも一時動きを止める事が出来る。
その為の今日の王の裁き…
時間稼ぎが出来れば、王宮軍を動かし、四家公爵家の私兵を動かし、謀反の疑いで先に仕掛けられる。
だから次代の公爵家当主達がこの場にいた?
王宮軍は国の兵ではあるけれど、王の私兵。王の代理とはいえ王ではない公爵達が勝手に動かせば所有。他国の脅威に対抗する為に動かすのは許される。それでも、自国内に向けて動かせば…、
制圧ではなく、辺境への暴挙だと捉えられる。
猶予がないとはいえ、まだ起こっていない暴動。王宮軍を動かし辺境を制圧したら、現公爵当主達は裁かれた。
「おとう…さま……」
私はお父様を見上げた。
「流石私の娘だな、勘が鋭い所は私に似たか?」
そう言ってお父様は笑った。
皆が辺境の彼等を護る為に動いていた。暴動を起こす前に止めることで、謀反の疑いで罰せられないようにした。
皆が己の命を懸けて…。
王宮軍隊長のおじさまは軍を辞してお父様と共に戦うだろう。
「ミシェルそう心配するな、もう大丈夫だと言っただろう。あいつは生きてる」
陛下は生きてる。
王が生きているという事は、暴動が起こる前に回避する策が取れる。もし暴動が起こっていても制圧する為に王宮軍を動かしても問題はない。
王は国の安寧の為に動く。
「良かった…」
お父様は私の背中をぽんぽんと叩いた。
私が安心して胸を撫で下ろしていたら、リーストファー様の声が聞こえた。
「陛下、陛下が辺境へ向かう必要はありません」
私は二人に視線を動かした。
「私はこの怪我をする前は王宮軍の副隊長でした。そして、今も王宮軍に籍を置く騎士だと思っています」
「勿論だ」
「では、私は今も王宮軍副隊長でよろしいですか?」
「ああ、お主の任を解くつもりはない」
リーストファー様は陛下の前で片膝をついた。
「では陛下、私に命令を」
陛下は目を閉じた。そして目を開けリーストファー様を見つめた。
「王宮軍副隊長リーストファー、今辺境は謀反の疑いがある。よってその前に辺境を制圧せよ」
「承知しました。直ちに任務を遂行致します。必ずや陛下に吉報をお届け致します」
「頼むぞ」
陛下はリーストファー様の肩を叩いた。
「はい」
リーストファー様は立ち上がった。
「リーストファー、良いのか?」
陛下はさっきまでの王の顔を少し崩し、リーストファー様と話している。
「はい。あいつらを止めれるのは俺だけです」
「だが…、今度は味方ではなく敵になる」
「そうですね、制圧する敵になります。ですが、やはり俺の役目だと思います」
「復讐は、もう良いのか」
「ええ、ミシェルを失いたくありません。復讐を果たせばお義父上にミシェルを奪われます。返してもらうぞと既に言われていますから」
「フッ、あいつらしいな。
だがこれで終わりという訳にはいかない。それでは私の気が済まない」
「では、慰霊碑を、彼等を忠義を果たした英雄として残したい。彼等と戦場をかけた戦士の為の慰霊碑を建てて頂けますか」
「分かった、慰霊碑を建立する。そして国の史録に彼等の名を残すと約束する」
二人の姿を見て、私は胸を撫で下ろした。
もう大丈夫。
「おいネイソン、稽古を眺めているだけだと腕が落ちるぞ?」
いつの間にか近くに来ていたおじさま。
「それでどうしろと?」
「辺境で辺境隊と合同訓練でもしたらどうだ」
「わあ、楽しそう」
「気でも狂ったか?」
「ミシェル風に言ってみたんですが」
「ネイソン、穏便に片付けてこい」
「無理を言う」
「私は出来る奴にしか言わない」
「これだから…」
お父様とおじさまのやり取りを聞いていたロータス卿は『フッ』と笑った。
「なんだ?ロータス」
「貴方には頭が下がります」
王宮軍を動かし制圧する、それは謀反を起こしたと同義。辺境の彼等は何かしら処罰を受けないといけない。
それでも合同訓練なら王宮軍が辺境へ行っても、そこで例え剣を交えても訓練で終わる。
そして今後暴動を起こす気も起こらないように制圧してこい。
それでも名目は合同訓練。
『無理を言う』と言っていても、おじさまはお父様の言葉を遂行するのよね。だっておじさま、嬉しそうに笑っているもの。
「じゃあ、一丁してきますか、ちょうど体も鈍ってきたし。
では陛下に許可を貰って来ます」
そう言うとおじさまは陛下のもとへ歩いて行った。
「貴方は変わらないですね、人を惹きつける。そしてやる気を起こさせるんです。この人に付いていこう、この人の為に動こうと、皆が貴方に心酔する」
「皆ではないがな」
「よく言う」
「まだ根に持ってるのか?」
私が不思議そうな顔をしていたからか、お父様が教えてくれた。
「ボビンはロータスの乳兄弟なんだ。だがボビンは王宮軍を早々と辞め私に付いてきた」
「寂しくは思いましたが、ボビンの気持ちも分かります。私も貴方に心酔する一人です。戦場をかける貴方の姿が見れなくなったのは残念です」
「鬼公子な」
「懐かしいですね」
懐かしむように笑っている二人を、私は微笑んで見ている。
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