妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
150 / 187

149

しおりを挟む
コンコン

「入って」

 ガインと男の子が入ってきた。

「この子で最後です」

「分かったわ。ありがとう。さぁ座って」


 男の子は椅子に座った。


「孤児院と名前を教えるくれる?」

「セイリーン孤児院でマーク」

「マークは、なんでもいいから働きたいってどう言う事?」

「俺には妹と弟がいる」

「同じ孤児院に?」

「ああ」

「とりあえずお金を稼ぎたいって事かな?」

「ああ。出来れば孤児院の近くで働きたい。働く場所に文句を言うつもりはない」

「そうか。でもどうして?」

「妹と弟と離れたくないからだ。できれば稼いだ金で腹いっぱい食わせてやりたいし、いい服も着せてやりたい。卒院したら一緒に暮らしたい」

「兄として?」

「当たり前だ。父さんと母さんと一番下の妹と母さんの腹の中のいた子も流行り病で死んだ。俺は母さんから頼まれた。妹と弟を頼むって」

「そうか。家族を失って辛かったね」

「妹と弟は生きてる」

「そうだね。でもよく頑張ったよ。今まで妹と弟を護ってきたんだろ?」

「俺達は途中から院に入ったからな」

「途中から入る子なんて珍しくないだろう?」

「それでも始めからいる奴とは違う」

「違う?」

「孤児院にだって力の優劣はある」

「そうか。話を変えるよ?いい?」

「ああ」

「妹と弟と離れずお金を稼ぎたいんだったね」

「ああ」

「まずその事は考えないで、マークの好きな事は何かある?」

「好きな事…」

「何でもいいよ」

「考えた事がない」

「長男だもんね」

「ああ。母さんの手伝いや兄妹の面倒ならしてきたけど、好きな事は考えた事がない」

「分かった。 ガイン、済まないが一度マークを食堂に連れて行ってくれないか。それから前侯爵を呼んできてほしい」

「分かりました」


 ガインはマークを連れて部屋を出て行った。


「チャーリーどうしたの?」

「俺だけでは無理だ」

「どう言う事?」

「俺達貴族はさ、ある意味将来が決められてるんだよ。当主になる者とそれ以外は騎士や文官、エリーの家みたいに姉妹の家に婿に入るとかさ」

「そうね」

「女性は嫁に嫁ぐだろ?」

「うん」

「平民も親の家業を継いだりする。例えば親が食堂を経営してたら子が跡を継いだりね。庭師も大抵は息子が跡を継いだりする。御者もだ」

「確かに」

「領地にいる平民だってそうだろ?親が働いてる所を見て育つから自ずと自分も働くと思ってる」

「そうね」

「マークは兄妹達の面倒や母親の手伝いをしてきたけど平民には当たり前の事だ」

「そうね」

「マークの父親が何の職に就いていたかは分からないけどマークも父親の跡を継ぐつもりだったと思うんだよね」

「うん」

「けど両親が亡くなり、長男として妹と弟を護る為に自分の事を後回しにしてるだろうし、母親に頼まれたのもあるだろうけど、長男として妹と弟の面倒は自分がみないとと思ってる」

「そうね」

「稼ぎたいだけなら職はあると思うけど、孤児院育ちの子に働ける環境はまだこの国に出来上がってない。だから今回俺達が動いている訳だけど」

「そうね。孤児院の子達だけじゃなくて卒院した子達も本来なら手助けしないといけない。けど孤児院育ちではない子だって全員が働く場所がある訳じゃないもの」

「そうなんだ。あれこれ手を出すのは簡単だけど中途半端になる。それに俺達は孤児院の子達の学力や職に就ける手助けをすると決めた」

「ええ」

「今年卒院する子達に関しては俺達が面倒を見るしかないと思ってる」

「ええ」

「それでも本来あるべき形は職に就く時の後見人になるだけだ。学力や職に就く為の下準備は必要だしやるべき事だけど、後は本人のやる気次第なんだよ。厳しい事を言うようだけど」

「そんな事ないわ。邸に迎える事は出来るけど全員って訳にはいかないわ。職の世話をしてもやる気がなければ辞めちゃうでしょ?そしたら後見人になった私達の信用も無くなるわ。 学ぶ事も手に職を付ける事も本人次第。そして私達はやる気があり諦めない子にだけ後見人になれば良いと思うの」

「俺もそう思う。篩にかけるなんて言い方は悪いけど、それでも後見人を必要とする子だけを手助けするべきだと思うんだ」

「私もそれで良いと思う」

「エリー」


 チャーリーが手を広げ、


「抱き締めさせて」


 私も手を広げチャーリーに抱き付いた。チャーリーは私の肩に顔を埋め、


「本当なら全員に手を差し伸べたい」

「うん」

「それでも実際は無理だ」

「当たり前よ」

「俺を冷たい男だと思わない?」

「どうして?」

「助けると言っても助けれるのはほんの一部分だ。後は目を瞑るしかない」

「全員を助けるなんて神にならないと無理よ。学ぶ準備は誰でも出来るわ。それでも今まで誰もしなかった。それをチャーリーはしてきたでしょ?」

「隣国のごく一部だけどね」

「それでもチャーリーに助けられた子は多いわ。そして今回はこの国の子達が助けられるの。でもね、やる気がない子は学べるとしても学ばないわ。それは環境じゃなくてその子の問題よ?」

「そうだね」

「その全てを背負う必要はないの。 それに貴族でも平民でも一緒でしょ?自分の将来が不安だから努力する。努力する姿を知ってるから手を貸そうと思う。けど努力せず何もしない子に手を貸そうと思う人はいないわ」

「そうだね」

「全員を助けれないからとチャーリーが全てを背負わないで」

「分かってる」


 チャーリーが力強く抱き締めた。

 全ての人を救うなんて神でも無理よ。神も導き与える事は出来てもその後は個人次第…。

 私はチャーリーに自分の唇を重ねた。チャーリーの憂いが少しでも無くなる様にと願いを込めて…。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました

ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、 ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。 理由はただ一つ―― 「平民出身の聖女と婚約するため」。 だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。 シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。 ただ静かに席を立っただけ。 それだけで―― 王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、 王国最大の商会は資金提供を打ち切り、 王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。 一方シャウラは、何もしていない。 復讐もしない。断罪もしない。 平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。 そして王国は、 “王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、 聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。 誰かを裁くことなく、 誰かを蹴落とすことなく、 ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。 これは、 婚約破棄から始まる―― 静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。 「私は何もしていませんわ」 それが、最強の勝利だった。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

処理中です...