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ガネット・フォルンは愛されたい
ハルク編 2
しおりを挟む辺境へやって来たガネットを初めて見た時、
そんな顔で笑う子だったか?
俺の知ってるガネットは母親に本を読み、庭の花を眺め、花を摘み、そして母親と一緒に過ごす。
屈託のない笑顔
それがガネットだ。
父親の愛人を目にしてもそれでも母親に向ける笑顔はいつも屈託のない笑顔だった。
それが、
どこか諦め、どこか心ここにあらずで、どこか壊れた、
いつからそんな顔で笑う子になった!
学友のアーシャと話をしていても、一緒に来たメイドのアンネと話をしていても、その笑い方は変わらない。
ネイソンから旦那の事は聞いた。離縁の理由も、離縁した経緯も、
だから、
俺はガネットを出来るだけ目で追った。
表情一つ、
態度一つ、
言葉一つ、
行動一つ、
何一つ見逃さない、聞き逃さない為に。
そうすると、
時折花壇の花を見つめては、
どこか寂しげで、
どこか悲しげで、
どこか辛そうで、
どこか後悔しているようで、
どこか懐かしげで、
どこか愛しいそうで、
どこか憎んでいるようで、
花びらを撫でていた。
メイド達が恋人の話をすれば、
表情が消え、
言葉は話さず、
ただ一点を見つめ、
何かを思っていた。
俺にも経験がある。
彼女が好きだと言った花を見ると、
彼女が好きだと言ったお菓子を見ると、
彼女が作ってくれたおかずを見ると、
仲間が恋人の話を幸せそうに話していると、
仲間が恋人に指輪を贈ったと聞くと、
仲間が恋人と結婚すると聞くと、
あの時逃げずに向き合っていれば良かった。
彼女に、
「その男は誰だ」
「浮気したのか」
「俺を裏切ったのか」
文句の一つでもぶつけていたらと。
あの時の俺と一緒だ。
あの時で立ち止まり、
あの時から何年と抜け出せない、
あの時の気持ちも思いも消化出来ず、
暗闇を彷徨う。
後悔と、
憎しみと、
消えぬ傷、
好きか嫌いか分からず、
それでも心残りを残し、
前に進む事も出来ず、
ただ、ただ、ひたすら毎日を生きる。
相手を思う気持ちが大きい程、裏切られた喪失感は大きく、
相手を思う気持ちが大きい程、相手を憎む気持ちは大きく、
相手を思う気持ちが大きい程、自分の気持ちが分からなくなる。
まだ愛しているのか、
まだよりを戻したいのか、
まだ、まだ、と自分に問いただした。
なあ、ガネット、
お前もまだそこにいるのか?
誰かが背中を押すのを待っているのか?
誰かに引っ張られないと進み方を忘れたか?
なら、俺が、
お前の背中を押してやる。
お前の手を引っ張ってやる。
だから、
そこから進め、
暗闇から這い上がってこい!
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