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半日だけの…。貴方が私を忘れても

静かな家

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朝起きると騎士達が部屋に入って来た。


「何の用だ!誰の許可を得て入って来た!」


騎士達に聞かされた。

怪我をして記憶を失ったと。そして足が動かないと。


「どういう事だ!俺は騎士だ!」


立ち上がろうとしても足に力が入らない。騎士達に手を借り車椅子に座る。


「騎士には戻れないのか」

「はい。残念ですが」

「そりゃあこの足では騎士は無理だな。

悪いがエマを呼んでほしい。この足では動く事が出来ない」


エマを呼んでほしいと言ったのに来たのはベイクだった。

それからベイクに説明された。

エマは伯爵夫人になりもう人妻だと。それでもエマの側に居たいのなら愛人になれと言う。

俺が愛人?馬鹿にするな!


「少し外の空気を吸いたい」

「分かりました」


騎士達が車椅子を持ち上げ階段を下りる。

庭に出て、


「何か今日は静かだな」

「そう、ですね」

「いや、今までも静かだったか?」


怪我をして記憶を失ったらしい俺は「今まで」を覚えていない。

感覚なのか、なんとなく、なんとなく静かに思えた。

騎士達へ行けば皆の話し声や笑い声、掛け声や隊長達の怒号が聞こえる。だからかもしれない。


俺は目を閉じ風を感じる。少し冷たい風が頬をかすめる。

風の音に混じり子供の声が聞こえた気がした。

辺りを見渡しても子供はいない。


気のせいか


気づいたら目から涙が流れていた。


聞こえた風の音

空虚な心に冷たい風がふく


騎士には戻れない

足も動かない

エマとも結婚出来ない


だから俺は泣いているんだろう。


静かすぎるこの庭に

静かすぎる邸に


得体もしれない恐怖が俺を襲う。

俺は孤独を感じているんだろう。

まるでここは俺しかいない世界のようだ…。


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