完結した作品の番外編特集

アズやっこ

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悪女と呼ばれた王妃

道のり 前編

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私がこの世を去り、暫くは真綿に包まれているような、雲に乗り風に流され気ままに彷徨うような、そんな気分だった。

それから私はお父様が愛した国を見て回った。


馬でかけるジェイデンとグレイソン、そして二人を護るマックスとネイソンと騎士達。


(良かった。逃げ出せて、良かった。ジェイデン、グレイソン、生きて。

さよなら…)


馬が止まり空を見上げるジェイデン。後ろを走るグレイソンも止まり空を見上げた。


(あら、兄弟が兄弟馬さん達に乗ってるわ、ふふっ。でも兄弟馬さん達も助かったのね。あの二人はもう大丈夫。それにあの子達ももう大丈夫。

立ち止まり空を見上げてまた前に進めばいいの。兄弟馬さんのようにグレイソンは貴方に付いていくわ、貴方の進む先に。だから貴方は迷わず進んで、ジェイデン)



私はまたふわふわと風に流されるように身を任せた。



キラキラと眩しい光に導かれて私はそこに降り立った。


(え?湖に、水が、溜まってる…。どうして?それに木々も青々とした葉をつけ鳥のさえずりも聞こえる。

あの時お兄様と見た景色と一緒…)


私は湖に祈った。


(お兄様、私はお兄様の心の中にいつもいます。そしてあの時一緒に見たこの景色を守る為に祈ります。もしお兄様が闇に落ちた時、この景色から光が消えます。この湖はお兄様そのもの。そしてお兄様は帝国民の光。光は輝くもの。輝き導くもの。

この湖が光輝いているようにお兄様の光に導かれお兄様を支える者は隣に、臣下や民はお兄様の後ろを付いていきます。

だから消えないで。私の大切なお兄様を消さないで。生きて。

お兄様は私がいなくてもずっと皆の光として生きてきた。だから帝国は栄え国が安定しているの。それはお兄様自身の力よ。

いつか、いつか、お兄様と家族の絆を築くものが現れるまで。そして現れるのを私は願っています。だからそれまで待ってて。そして導いて。その子に王とはなにか、教えられるのはお兄様しかいないから)

(おねえちゃん?)


その声に私は振り返った。


(ルシー)

(おねえちゃん)


私はルシーを抱きしめた。


(おねえちゃん、いまのをつたえればいいの?)

(ルシー?)

(かみさまがいってたの。おねえちゃんのことばをつたえてって。おにいさまがしぬとこのよのおわりなの)

(そう。ルシー、お兄様に伝えてくれる?)

(うん、まかせて)

(お兄様は必ずここに寄るわ。きっと導かれる。私が導かれたように、お兄様も導かれる。ここはお兄様との思い出の土地だから)


それから私はお兄様の特徴、黒い髪で黒い瞳を教えた。


早く皆が待ってるのにどうしてもこの場所を離れる事が出来なかった。この景色を目に焼き付けていたいから。

それに悔いが残っていたのかしら。あの世への扉は閉まったまま。



「な…」


声を聞いて懐かしさを覚えた。最後に聞いた声より少し低くなった声。それに顔付きも少し変わった?大人の男性らしくなった。

私は立っているお兄様の隣に座った。


(お兄様も驚いた?干からびていた湖があの時一緒に見た湖になったの。これもきっと女神様の計らいね。ここは安らぐもの)


子爵の子息、今は男爵当主とルシーがやってきて、ルシーは私の言葉を伝えている。

私はルシーの後ろからお兄様を見つめる。


(お兄様、ごめんね。お父様も護れなかった。私は駄目ね。でもお兄様のそんな顔を見たくないの。恨み憎み、でもそれを隠し死んだように生きてる人みたい。光を失い闇がお兄様を包んでいるのが今の私には分かる。

女神様、お兄様と話す奇跡を、お願いします)


私の体が光に包まれなぜか目の前にはお兄様の瞳と目が合ってる。

私はお兄様に抱きついた。


「お兄様ごめんね、大好きよ」


お兄様の瞳が何かを感じとった。


「お兄様、遠い所からでも分かる光になって。そしたら私は毎日お兄様の光を見つけられる。お父様とコナーとタイラーと、毎日お兄様の光を見るわ。そして皆でお兄様の話をするの。だから一際輝く光になってくれないと遠く離れた私達には分からないわ。

お兄様はいつも私が目指す人なんだから。私の光なのよ。

私の、皆のとても大切な人。お兄様、私は幸せよ。だって最後にお兄様に会えたもの、お兄様と話せたもの。だからとても幸せなの」

「リリーアンヌ」


お兄様はルシーを抱きしめた。ルシー越しではあるけどお兄様の温もりを感じた。


「お兄様、大好きよ」


(ルシーごめんね)

(ううん、いいの)

(ルシーのこの力、私が貰っていくわ。だからルシーは普通の女の子になって過ごして。たくさん遊んで、恋もして?やりたい事、なりたいもの、どんどん試していいの。失敗しても良いのよ?疲れたら休めば良いの。女の子だからって諦めないで。

ルシー、大好きよ。ルシーの将来は明るくなるから。いつもお姉ちゃん応援してるね)

(おねえちゃん、わたしもおねえちゃんだいすき)


私はルシーを抱きしめた。

ルシーが帰り、お兄様は湖を見つめている。私はまたお兄様の隣に座った。


「リリーアンヌ、俺が光か?」

(そうよ。私の光よ)

「お前を助けられなかったのにか?今でも俺は悔やんでるよ。あの時休憩していなかったら、あの時寝ずに歩いていたら、そしたらお前を助けられたかと思うと俺は俺を許す事ができない。後一日後半日早ければ、お前を死なせる事はなかった…。俺には悔いしか残らない。

父上も助けられなかった。お前も助けられなかった。こんな俺が生きてる意味はあるのか?」

(お兄様は助けに来てくれたじゃない。口約束を覚えていてくれたじゃない。私はそれだけで嬉しかったわ。

皇帝のお兄様が目立たないように野宿して毎日歩いて、それは私を助ける為でしょ?その気持ちが私は嬉しい。私が悪女でも罪人でもお兄様は私を助ける事しか考えていなかった。どんな私でも私だと信じてくれたって事でしょ?

ありがとうお兄様、ありがとう…。

だから余計にお兄様には生きてほしい。生きて輝く光になってほしいの。

私の声がお兄様に届いたら良いのに…)


私はお兄様を抱きしめた。

その時、私とお兄様を優しい風が包み込んだ。昔、お兄様と一緒にこの湖を見た時に感じたあの優しい風に包まれた。


「俺が光になれるだろうか」

(お兄様ならなれるわ)


「アダン、ここに居たのか」


その声に二人して振り返った。


「ザイルか」

(ザイル兄様)

「ここで野宿するつもりか?帰るぞ」

「悪いが、少しだけでいい、ここに居たい。……少し一人にしてくれないか」

「駄目だ、側に付いてる。それと一週間だ、ここで過ごすのは一週間だけだ」

「分かった」


それからグレン兄様、レガンス兄様、トネード師匠が集まった。

懐かしい人達と一緒に過ごした。

ここにコナーがいたら良かったのに…。



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