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しおりを挟む「どうして今日は邸なの?」
アーロン様の私室の扉を叩こうとした時、部屋の中から女性の声がして私は叩くのをやめた。
「今日あの女は外出した。当分の間は帰ってこない」
今日私は王宮の事務官に侯爵家の報告書を渡す為に邸を出発した。馬車の中で再度確認したらアーロン様のサインが無いのに気づき引き返して来た。私よりも早く出掛けたアーロン様が邸にいる確率は低い。それでもサインが無ければ意味がない。私は今日は諦め明日にしようと思っていた。
邸に戻って来た時、玄関前にはアーロン様の馬車が止まっていた。サインは絶対に必要。愛人とお楽しみ中でも構わないとメイドが止めるのを無視してアーロン様の私室の前まで来た。
「何も邸に来なくてもいつもの場所で良かったでしょ?」
アーロン様が出掛ける時たまにお洒落というか、服や髪型をいつもと違う格好にして出掛ける時がある。今日もそうだった。
「俺の部屋に来てほしかったんだ。それにマイラの為に当主夫人の部屋も使ってない。
なあマイラ、いつになったら俺の子を産んでくれるんだ?」
「そういう事は可愛い奥様に頼みなさい」
「俺は愛しい人との子が欲しいんだ。俺が好きなのも愛しているのもこの世でただ一人、マイラだけだ。なあ良いだろ?俺の子を産んでくれ」
「だから何度も言ってるでしょ?何の為に奥様を娶ったのよ」
「父上がマイラとの結婚を反対したからだろ?父上は俺に言った。あの女と結婚したら好きにしていいと。だから好きでもないあの女と嫌々結婚したんだ。俺が愛してるのは昔からずっとマイラだけだ。俺が好きだと言うのも愛してると言うのもマイラにだけだ。マイラも分かっているだろ?」
「嘘でも奥様に言ってないの?それは可哀想よ?」
「言う訳ないだろ?好きも愛してるも俺はマイラにしか言いたくない。まあ可愛いは言ったけど可愛いは女性全般に言うものだろ?」
確かに今思えば可愛いは言われたけど好きや愛してるなんて言葉一回も言われた事が無かった。それにアーロン様は愛しい人との子が欲しいと言っていた。私の子が欲しいなんて一言も言っていない。私がただ勘違いしただけ。
「マイラとの愛を護れるなら俺はどんな事でもする。父上もどうしてそこまでマイラを毛嫌いするんだろうな」
「私でも反対するわよ。私は未亡人なのよ?それにもう36歳よ?ようやく学園を卒業した息子が爵位を継いだの。私は息子の後見人として結婚なんて出来なかったもの。結婚なんてしたら男爵家は義理の弟のものになってたわ。それだけは絶対に嫌だったの」
「それも分かってるよ。でももう結婚出来るだろ?俺も離縁するから俺と結婚しよう、な?」
「それに子供だって出来るか分からないわ。もし出来たとしても今更子育てなんて嫌よ。ね?今の関係でいいでしょ?」
「俺はマイラの子しか嫌だ。それに子育てはあの女がいるだろ?あの女を使用人にして育てさせればいいじゃないか」
「私は貴方よりも貴方のご両親と年が近いのよ?貴方は若い奥様と子供を作りなさい」
「嫌だ!なあ、マイラ良いだろ?俺も離縁したら父上ももう反対しない。な?だから俺と結婚しよう。なんなら先に子が出来れば父上も認めるしかなくなる、そう思わないか?」
「もう馬鹿な事言わないで」
仲良く話す二人の声を私は扉の外で聞いている。アーロン様が愛しているのはこの人なの?それともこの人も愛人の一人?
でも明らかに愛人達と会う時とは違う格好で今日出掛けて行った。いつもお洒落して出掛ける時は紫系の服を着て出掛ける。
きっとこの人がアーロン様の本命。
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