7 / 13
7
しおりを挟むあれから私も考えた。あの女性の息子さんを愛人にする?私より一つ年下で学園を卒業して男爵を継いだ令息なんて探せば直ぐに分かる。
それでもやめたわ。
平民とはいえ老舗の商会の娘さんと婚約している。政略だとしても娘さんとの関係を築いている二人の仲を壊す事なんて出来ない。
私の矜持が許さないの。
私もやられたからやり返すなんて事、そんな事出来ない。
バタン!
突然入って来たアーロン様。
「おい!今日急遽客人が泊まる事になった。大事な客人だ、粗相は許さないからな!分かったな!」
「分かりました」
それだけ言うと出て行った。私はメイドに客室を整えるように指示を出す。
夕方になり邸がバタバタとしている。きっと客人が来たのだろうと察しはついた。
私も着替えて私室を出た。
アーロン様は私を見ると笑った。
「ジュリア、さあこっちへ」
手を差し出され私はアーロン様の手の上に手を重ねた。
「紹介します。俺の妻のジュリアです。ジュリア、こちらはお世話になっているマティス殿だ」
「マティス様、お初にお目にかかります。ジュリアです」
「綺麗な奥様だ」
「お世辞でも嬉しいです」
「俺はお世辞なんて言わない」
「ありがとうございます」
「ジュリアは俺の自慢の妻です。可愛い妻を娶れて俺も幸せですよ」
「羨ましい限りだ。俺は独り身だからな、あまり見せ付けられると辛いものがある」
アーロン様は私の腰を抱き体を密着させる。
「マティス殿、立ち話よりも夕食を取りながら」
「ああ、そうだな」
アーロン様にエスコートされ食堂へ移動する。私達の後ろにはマティス様。
食堂に着き私はアーロン様の横に座る。マティス様はアーロン様の前に座ると食事が運ばれてきてワインを飲みながら話をする。
マティス様は33歳で奥様に先立たれた。元々病弱だった奥様との間に子はいない。奥様が亡くなってから13年、ずっと独り身を貫いている。
食事が終わり私は私室に戻り湯浴みを済ませネグリジェに着替えてベッドに入る。
目を瞑るとアーロン様への怒りが湧いてくる。こういう時だけ妻をさせる。こういう時だけ優しくする。傍から見れば仲睦まじい夫婦。でも実際は…。
「はぁぁ」
怒りで眠れない。目を瞑っても寝れる気がしない。私はベッドから起き上がりソファーに座った。そこから見える星空。あなた達は毎日綺麗に輝く。私が輝く日は一生こない。
物思いにふけっていた時、扉が開いた。
「おや、奥様の部屋でしたか」
「マティス様どうして…」
「いや、アーロン殿に楽しい夜を、と案内されたんですがね。まさか奥様とは」
「はい?」
「知らないんですか?」
「何を、ですか?」
「アーロン殿は愛人達に夜の接待をさせるんですよ。まあ、あちらのね」
「あちら…」
「男女の営みですよ。取引先の男性に愛人を充てがい接待させる。そしてより強固なものにする。知りませんでした?」
「知りません。愛人達が居るのは知っていますが、まさかそんな事をさせているなんて…」
「で、今日案内された部屋には奥様がいた。俺も初めて接待を受けますが、まさか本当の話とは思いませんでしたが」
「私は違います」
「でも貴女はネグリジェの姿だ」
「これはもう寝ようと」
「ですがアーロン殿は楽しめとこの部屋に案内しましたよ?それに『初物は好きか』と聞かれたので『それなりに』と答えたら、一度しか手が付いていない初心な女だと。物足りないかも知れないけど楽しめと。で、この部屋に居たのが奥様だったという訳です。
俺の相手をしてくれるんですよね?」
ふっ、ふふっ、私は妻でも何でも無いのね。貴族令嬢だったから妻にしただけで、私の利用価値は侯爵家を護る為だけ。面倒な事をさせて、体の接待をさせる。
あぁ、私も所詮愛人の一人。
214
あなたにおすすめの小説
初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました
柚木ゆず
恋愛
「俺の前で声を出すな!!」
マトート子爵令嬢シャルリーの婚約者であるレロッズ伯爵令息エタンには、隣国に嫁いでしまった初恋の人がいました。
シャルリーの声はその女性とそっくりで、聞いていると恋人になれなかったその人のことを思い出してしまう――。そんな理由でエタンは立場を利用してマトート家に圧力をかけ、自分の前はもちろんのこと不自然にならないよう人前で声を出すことさえも禁じてしまったのです。
自分の都合で好き放題するエタン、そんな彼はまだ知りません。
その傍若無人な振る舞いと自己中心的な性格が、あまりにも大きな災難をもたらしてしまうことを。
※11月18日、本編完結。時期は未定ではありますが、シャルリーのその後などの番外編の投稿を予定しております。
※体調の影響により一時的に、最新作以外の感想欄を閉じさせていただいております。
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
9年ぶりに再会した幼馴染に「幸せに暮らしています」と伝えたら、突然怒り出しました
柚木ゆず
恋愛
「あら!? もしかして貴方、アリアン!?」
かつてわたしは孤児院で暮らしていて、姉妹のように育ったソリーヌという大切な人がいました。そんなソリーヌは突然孤児院を去ってしまい行方が分からなくなっていたのですが、街に買い物に出かけた際に9年ぶりの再会を果たしたのでした。
もう会えないと思っていた人に出会えて、わたしは本当に嬉しかったのですが――。現状を聞かれたため「とても幸せに暮らしています」と伝えると、ソリーヌは激しく怒りだしてしまったのでした。
婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?
柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。
わたしには、妹なんていないのに。
お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです
・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。
さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。
しかしナディアは全く気にしていなかった。
何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから――
偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。
※頭からっぽで
※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。
※夫婦仲は良いです
※私がイメージするサバ女子です(笑)
※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪
俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?
姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした
柚木ゆず
恋愛
僕の婚約者であるロゼの家族は、困った人ばかりだった。
異母妹のアメリはロゼの物を欲しがって平然と奪い取り、継母ベルは実子だけを甘やかす。父親であるトムはベルに夢中で、そのためアメリの味方ばかりする。
――そんな人達でも、家族ですので――。
それでもロゼは我慢していたのだけれど、その日、アメリ達は一線を越えてしまった。
「マエル様を欲しくなったの。お姉様の婚約者を頂戴」
「邪魔をすれば、ここにあるユリのアクセサリーを壊すわよ?」
アメリとベルは自分達の都合でこの婚約を解消させようとして、ロゼが拒否をしたら亡き母の形見を使って脅迫を始めたらしいのだ。
僕に迷惑をかけようとしたことと、形見を取り上げられたこと。それによってロゼはついに怒り、僕が我慢している理由もなくなった。
だからこれから、君達にこれまでのお礼をすることにしたんだ。アメリ、ベル、そしてトム。どうぞお楽しみに。
【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。
西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。
それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。
大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。
だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。
・・・なのに。
貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。
貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって?
愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。
そう、申し上げたら貴方様は―――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる