妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ

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あれから私も考えた。あの女性の息子さんを愛人にする?私より一つ年下で学園を卒業して男爵を継いだ令息なんて探せば直ぐに分かる。

それでもやめたわ。

平民とはいえ老舗の商会の娘さんと婚約している。政略だとしても娘さんとの関係を築いている二人の仲を壊す事なんて出来ない。

私の矜持が許さないの。

私もやられたからやり返すなんて事、そんな事出来ない。



バタン!

突然入って来たアーロン様。


「おい!今日急遽客人が泊まる事になった。大事な客人だ、粗相は許さないからな!分かったな!」

「分かりました」


それだけ言うと出て行った。私はメイドに客室を整えるように指示を出す。

夕方になり邸がバタバタとしている。きっと客人が来たのだろうと察しはついた。
私も着替えて私室を出た。

アーロン様は私を見ると笑った。


「ジュリア、さあこっちへ」


手を差し出され私はアーロン様の手の上に手を重ねた。


「紹介します。俺の妻のジュリアです。ジュリア、こちらはお世話になっているマティス殿だ」

「マティス様、お初にお目にかかります。ジュリアです」

「綺麗な奥様だ」

「お世辞でも嬉しいです」

「俺はお世辞なんて言わない」

「ありがとうございます」

「ジュリアは俺の自慢の妻です。可愛い妻を娶れて俺も幸せですよ」

「羨ましい限りだ。俺は独り身だからな、あまり見せ付けられると辛いものがある」


アーロン様は私の腰を抱き体を密着させる。


「マティス殿、立ち話よりも夕食を取りながら」

「ああ、そうだな」


アーロン様にエスコートされ食堂へ移動する。私達の後ろにはマティス様。

食堂に着き私はアーロン様の横に座る。マティス様はアーロン様の前に座ると食事が運ばれてきてワインを飲みながら話をする。

マティス様は33歳で奥様に先立たれた。元々病弱だった奥様との間に子はいない。奥様が亡くなってから13年、ずっと独り身を貫いている。


食事が終わり私は私室に戻り湯浴みを済ませネグリジェに着替えてベッドに入る。

目を瞑るとアーロン様への怒りが湧いてくる。こういう時だけ妻をさせる。こういう時だけ優しくする。傍から見れば仲睦まじい夫婦。でも実際は…。


「はぁぁ」


怒りで眠れない。目を瞑っても寝れる気がしない。私はベッドから起き上がりソファーに座った。そこから見える星空。あなた達は毎日綺麗に輝く。私が輝く日は一生こない。

物思いにふけっていた時、扉が開いた。


「おや、奥様の部屋でしたか」

「マティス様どうして…」

「いや、アーロン殿に楽しい夜を、と案内されたんですがね。まさか奥様とは」

「はい?」

「知らないんですか?」

「何を、ですか?」

「アーロン殿は愛人達に夜の接待をさせるんですよ。まあ、あちらのね」

「あちら…」

「男女の営みですよ。取引先の男性に愛人を充てがい接待させる。そしてより強固なものにする。知りませんでした?」

「知りません。愛人達が居るのは知っていますが、まさかそんな事をさせているなんて…」

「で、今日案内された部屋には奥様がいた。俺も初めて接待を受けますが、まさか本当の話とは思いませんでしたが」

「私は違います」

「でも貴女はネグリジェの姿だ」

「これはもう寝ようと」

「ですがアーロン殿は楽しめとこの部屋に案内しましたよ?それに『初物は好きか』と聞かれたので『それなりに』と答えたら、一度しか手が付いていない初心な女だと。物足りないかも知れないけど楽しめと。で、この部屋に居たのが奥様だったという訳です。

俺の相手をしてくれるんですよね?」


ふっ、ふふっ、私は妻でも何でも無いのね。貴族令嬢だったから妻にしただけで、私の利用価値は侯爵家を護る為だけ。面倒な事をさせて、体の接待をさせる。

あぁ、私も所詮愛人の一人。



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