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隊長さん達と別れ、私はガイと近くの公園のベンチに座っている。私はガイの前に座らされ、ガイは後ろから優しく抱きしめてる。
「なぁアイリス」
「何?」
「隊長が兄上を今でも愛してるって言っただろ?」
「そうね」
「嫌じゃないのか?」
「どうして?」
「隊長の愛が友愛なのか、恋愛なのか分からないけどさ、それでも隊長と兄上は雄同士だろ?」
「そうね。 私ね、友愛でも恋愛でもどっちでも良いのよ。家族以外でお兄様の事を今でも思ってくれる人はいないと思ってたし、お兄様の死を今でも悲しみ苦しみ忘れる事ができない人もいないって思ってたの。 今迄敵意や侮辱を向ける人しかいなかったから…」
「そうか」
「お兄様は生涯結婚はしないって言ってたわ。お兄様にとって大切な物は剣と友の手、そして隊長さんの大切な物も剣と友の手。お互いがそう思える間柄なのよ?友愛でも恋愛でもそんなの些細な事でしょ?」
「そういうものか?」
「それにね、私とガイは番でしょ?」
「ああ」
「匂いで分かるのよね?」
「ああ」
「それって好ましい匂いって事でしょ?」
「まあな」
「好ましい匂いだから側に居たい、側に居て欲しい。分かり合いたいって思うでしょ?」
「ああ」
「好ましい匂いなら極悪非道な人でも番だからって好きになるの?」
「それは分からない。番の匂いに吸い寄せられ番しか見えないからな」
「なら私が獣人を殺してって言ったら殺すの?」
「殺すだろうな。番のお願いは俺達獣人には絶対だからな」
「それも厄介ね」
「番とはそういうものなんだ。全てを支配し、それが喜びになる」
「そうなのね」
「何で?」
「うん、お兄様と隊長さんも番ではないけど番に近い存在だったのかな?って思ったの。お互いの側にいたくて、分かり会える同士で、そしてお互い愛し合ってて…」
「それは、」
「だって結婚より友の手を取りたいって思う?例え騎士だとしてもよ?剣は分かるわ。騎士にとって剣は命と同じ、もしくは命より大切な物」
「そうだな」
「別に結婚が全てじゃないわ。それでもお兄様は貴族だったのよ?それも長男。 お父様の跡を継ぐつもりだったのかは分からないわ。騎士として騎士道を貫くつもりだったのかもしれない。それでも友の手を取りたいと言ったお兄様に迷いはなかったの」
「そうか」
「お兄様も隊長さんを好ましく思ってたのは事実だと思うの。じゃなきゃ背中を預ける事なんて出来ないもの」
「背中か」
「騎士にとって背中を預けるって相手を信用し信頼してるからでしょ?それに互いを理解し思い合ってるからでしょ? 戦友、同士、確かにそうよ?それでも最期まで掴んでいたいのが剣と友の手、そして実際最期の時掴んでいたのも剣と友の手だったの。
私なら最期の時何を掴む?って聞かれたら最愛の人の手を掴みたいわ」
「俺もだ」
「お兄様は最期、大切な物を掴んで亡くなった。きっとお兄様は最期、苦しまずに幸せだったと思うの」
「そうか」
「それでも隊長さんに会って話を聞いたからそう思えたのだけど。それまでお兄様の死は無念だって思ってたわ。傷つけられ苦しんで苦しんで、最期は孤独に息を引き取ったって。 でも違ったわ、隊長さんが最期の時までお兄様の側に居てくれ手を握り、お兄様の死を悲しんでくれた」
「そうだな。なぁ、」
「何?」
「どうして隊長が手を握ってたって知ってるんだ?隊長に話を聞くまで兄上と友だった事も知らなかっただろ?」
「そうね。ただね、お兄様の亡骸は亡くなって直ぐに家に戻ってきた訳じゃないの。私もまだ子供だったから詳しく教えて貰えなかったし、お兄様の亡骸も見せて貰えなかったの。それでも夜中に皆に内緒でお兄様の亡骸を見てショックを受けたわ」
「そうか」
「お兄様の亡骸が帰って来た時、夜中だったの。使用人が慌ただしくしてて、お父様の大きな声、それから馬車の音に目が覚めて、外を見たの。荷馬車から何かを大事そうに運んでるのが見えたわ。お母様の叫び声が響いて私は耳を塞いだの。その時、一歩歩いては振り返り礼をしてる人がいたの。その人、荷馬車に乗らずじっと邸を見つめて立っていた。仲間の人に無理矢理馬車に乗せられ帰って行ったわ。
邸の中はお父様の大きな声とお母様の泣き叫ぶ声、私は見つからない様に部屋を出て声のする方に行ったの。そしたら我が家の医師の声が聞こえたの。経過が立ち過ぎて手の形はもう戻らないって。ずっと握られていたのだろうって。 私はずっと切り落とされた右手の事を言っていたって今日まで思ってたの。でも違ったのね」
「違った?」
「きっと隊長さんがお兄様が亡くなってから家に帰って来るまでずっと左手を握っていたのよ。お兄様の亡骸は野に放てって言われてたわ、それでも隊長さんが護りずっと側に居てくれてたのね」
「なぁアイリス」
「何?」
「隊長が兄上を今でも愛してるって言っただろ?」
「そうね」
「嫌じゃないのか?」
「どうして?」
「隊長の愛が友愛なのか、恋愛なのか分からないけどさ、それでも隊長と兄上は雄同士だろ?」
「そうね。 私ね、友愛でも恋愛でもどっちでも良いのよ。家族以外でお兄様の事を今でも思ってくれる人はいないと思ってたし、お兄様の死を今でも悲しみ苦しみ忘れる事ができない人もいないって思ってたの。 今迄敵意や侮辱を向ける人しかいなかったから…」
「そうか」
「お兄様は生涯結婚はしないって言ってたわ。お兄様にとって大切な物は剣と友の手、そして隊長さんの大切な物も剣と友の手。お互いがそう思える間柄なのよ?友愛でも恋愛でもそんなの些細な事でしょ?」
「そういうものか?」
「それにね、私とガイは番でしょ?」
「ああ」
「匂いで分かるのよね?」
「ああ」
「それって好ましい匂いって事でしょ?」
「まあな」
「好ましい匂いだから側に居たい、側に居て欲しい。分かり合いたいって思うでしょ?」
「ああ」
「好ましい匂いなら極悪非道な人でも番だからって好きになるの?」
「それは分からない。番の匂いに吸い寄せられ番しか見えないからな」
「なら私が獣人を殺してって言ったら殺すの?」
「殺すだろうな。番のお願いは俺達獣人には絶対だからな」
「それも厄介ね」
「番とはそういうものなんだ。全てを支配し、それが喜びになる」
「そうなのね」
「何で?」
「うん、お兄様と隊長さんも番ではないけど番に近い存在だったのかな?って思ったの。お互いの側にいたくて、分かり会える同士で、そしてお互い愛し合ってて…」
「それは、」
「だって結婚より友の手を取りたいって思う?例え騎士だとしてもよ?剣は分かるわ。騎士にとって剣は命と同じ、もしくは命より大切な物」
「そうだな」
「別に結婚が全てじゃないわ。それでもお兄様は貴族だったのよ?それも長男。 お父様の跡を継ぐつもりだったのかは分からないわ。騎士として騎士道を貫くつもりだったのかもしれない。それでも友の手を取りたいと言ったお兄様に迷いはなかったの」
「そうか」
「お兄様も隊長さんを好ましく思ってたのは事実だと思うの。じゃなきゃ背中を預ける事なんて出来ないもの」
「背中か」
「騎士にとって背中を預けるって相手を信用し信頼してるからでしょ?それに互いを理解し思い合ってるからでしょ? 戦友、同士、確かにそうよ?それでも最期まで掴んでいたいのが剣と友の手、そして実際最期の時掴んでいたのも剣と友の手だったの。
私なら最期の時何を掴む?って聞かれたら最愛の人の手を掴みたいわ」
「俺もだ」
「お兄様は最期、大切な物を掴んで亡くなった。きっとお兄様は最期、苦しまずに幸せだったと思うの」
「そうか」
「それでも隊長さんに会って話を聞いたからそう思えたのだけど。それまでお兄様の死は無念だって思ってたわ。傷つけられ苦しんで苦しんで、最期は孤独に息を引き取ったって。 でも違ったわ、隊長さんが最期の時までお兄様の側に居てくれ手を握り、お兄様の死を悲しんでくれた」
「そうだな。なぁ、」
「何?」
「どうして隊長が手を握ってたって知ってるんだ?隊長に話を聞くまで兄上と友だった事も知らなかっただろ?」
「そうね。ただね、お兄様の亡骸は亡くなって直ぐに家に戻ってきた訳じゃないの。私もまだ子供だったから詳しく教えて貰えなかったし、お兄様の亡骸も見せて貰えなかったの。それでも夜中に皆に内緒でお兄様の亡骸を見てショックを受けたわ」
「そうか」
「お兄様の亡骸が帰って来た時、夜中だったの。使用人が慌ただしくしてて、お父様の大きな声、それから馬車の音に目が覚めて、外を見たの。荷馬車から何かを大事そうに運んでるのが見えたわ。お母様の叫び声が響いて私は耳を塞いだの。その時、一歩歩いては振り返り礼をしてる人がいたの。その人、荷馬車に乗らずじっと邸を見つめて立っていた。仲間の人に無理矢理馬車に乗せられ帰って行ったわ。
邸の中はお父様の大きな声とお母様の泣き叫ぶ声、私は見つからない様に部屋を出て声のする方に行ったの。そしたら我が家の医師の声が聞こえたの。経過が立ち過ぎて手の形はもう戻らないって。ずっと握られていたのだろうって。 私はずっと切り落とされた右手の事を言っていたって今日まで思ってたの。でも違ったのね」
「違った?」
「きっと隊長さんがお兄様が亡くなってから家に帰って来るまでずっと左手を握っていたのよ。お兄様の亡骸は野に放てって言われてたわ、それでも隊長さんが護りずっと側に居てくれてたのね」
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