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レオン隊長視点
窓の外を見るとアイリスとガイが仲良く木に登ってる。アイリスの笑い声、ガイの笑い声が聞こえる。
「10年か…」
「はい…」
伯爵も同じ様に俺の隣で窓の外を眺めてる。
「レオン君」
「何でしょう」
「君にはお礼を言わないといけない。
ありがとう。クロードを護ってくれて、私達家族の元に帰してくれて本当にありがとう」
伯爵は深々と頭を下げた。
「止めて下さい。頭を上げて下さい、お願いします」
伯爵は頭を上げまた外を眺める。
「あの夜、内密に騎士から手紙を貰い、夜中に隠れる様に荷馬車で君がクロードを私達の元に帰してくれた。野に放てと言われ、私達はクロードの亡骸を諦めていた…。クロードが殺され3日後だったな」
「はい、申し訳ありません」
「あの時、君には申し訳ない事をした。君が抱えるクロードを奪うように取り上げ、最後にもう一度クロードに会わせてほしいと言った君を追い出した」
「当たり前です」
「それでも君がクロードを護り隠してくれたお陰で我々家族はクロードと会えたんだ」
「いえ、クロードは立派な騎士です。名を挙げた騎士です。出来る事なら私もクロードを堂々と騎士全員で送り届けたかった。騎士達はクロードの対応に憤りを感じていた。だからクロードを隠す事も出来、クロードを家族の元へ帰す事も出来ました」
「そうか…」
「クロードの亡き後があんな屈辱的な事、許されるはずがありません!」
「私もだが妻も、獣人は獣だ、人族は悪魔だ、と思っているよ」
「私もです。未だに獣人も人族も許せない。クロードの死を罵倒し侮辱した。許せるはずがありません」
「私もだ」
「クロード程、獣人を人と扱い慕ってくれた者はいません。クロード程、獣人と人族が共存出来ると信じた者はいません。そんなクロードに!クロードにする仕打ちがどうして!どうして…。屈辱です。死者への冒涜です」
「ああ、私もそう思う」
「奥方ではありませんが、私もクロードを返して欲しい」
「ああ、私もだ。
私は後悔しているよ。まだ幼いクロードに、人族は頭を使う事を得意にしていて獣人は体を使う事を得意にしている。得意にしている事が違うだけで我々と変わらぬ人なのだと言い聞かせた。種族が違っても仲良く手を取り合えるとな。そのような事を言わなければ、獣人とは分かり合えないと教えていればクロードは死なずに済んだ」
「私もあの時発情期でした。もし発情期で無かったらクロードを助ける事も出来たでしょう。あの時程発情期を憎んだ事などありません」
「まだ10年なんだ」
「はい、私もです」
「表面上は取り繕っても心の内は憎い」
「はい」
「アイリスの相手がまさか獣人とはな」
「そうですね」
「だがアイリスのあんな笑顔も久しぶりに見る。あの子はクロードが亡くなってから心を失くした様になったんだ」
「そうなのですか?」
「クロードの亡骸を伯爵家の墓に入れる事が出来ずこの邸の庭に墓を作った」
「はい」
「この邸の中なら護ってやれる」
「はい」
「アイリスは毎日クロードの墓の前で座っていた。時には横になり誰が何を言っても動かなかった。眠ったアイリスを抱き部屋のベッドに寝かせるそんな毎日だった」
「はい」
「レオン君、ガイ君はアイリスを幸せに出来ると思うか?アイリスを護れると思うか?」
「はい、それは勿論です。ガイは愛情深い狼獣人ですから。番以外に目を向ける事は絶対にありません。一度愛したら己の命を掛けて一生愛しぬき護ります。ガイは一生アイリス嬢以外を愛する事はありません」
「そうか」
「はい、剣に誓って」
「君の言葉を信じよう」
「ありがとうございます」
「アイリスに案内して貰ってクロードに会ってやってほしい」
「よろしいのですか?」
「ああ。長く待たせてしまった」
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
◆◇◆
アイリス父視点
レオン君が部屋を出て行き、
「カーラ入って来なさい」
別の扉から入って来た妻の手を引いて窓際へやって来た。
「なあカーラ、私達以外にも同じ思いを未だに思ってる獣人もいるんだ。 クロードを慕い、クロードの死を悲しみ、涙を流し、憤りを持ってくれる獣人がいたんだ。 同じ人族でも私達と同じ思いを持った者などいなかった。
なあカーラ、獣人を許せとは言わない。私も全ての獣人を許す事など出来ない。だが、信じられる獣人もいると言う事は今日分かった。信じてみないか?」
「旦那様…」
「憎み続けるのも疲れた。それにクロードはそんな事望んではいない」
「旦那様…」
「少なくとも二人、レオン君とガイ君は信じてみないか?」
「…………」
「今すぐとは言わない。だが、見てみろ。アイリスのあんな笑顔はクロードが亡くなってから見ていない。それに、ガイ君とソニックを見ているとクロードとアイリスを思い出さないか?」
「………ううっ…」
「カーラは覚えているか? クロードの左手が変な形をしていた事を」
「……ううっ…は、い…」
「クロードが息を引き取る前から、そして亡くなってこの邸に返って来るまで、レオン君が握りしめていたからだと思う。医師も言っていただろ?何かを握っていたからだと」
「……は、い……ううっ…」
「今日話を聞いて、アイリスが言った言葉で確信した。クロードは最期の時、友の手を握り、友に見送られた。そして友も息を引き取ってもなお離さず護り私達にクロードを返してくれた。
私はそれが知れただけで充分だ」
「……はい…」
私はカーラの抱きしめた。
窓の外を見るとアイリスとガイが仲良く木に登ってる。アイリスの笑い声、ガイの笑い声が聞こえる。
「10年か…」
「はい…」
伯爵も同じ様に俺の隣で窓の外を眺めてる。
「レオン君」
「何でしょう」
「君にはお礼を言わないといけない。
ありがとう。クロードを護ってくれて、私達家族の元に帰してくれて本当にありがとう」
伯爵は深々と頭を下げた。
「止めて下さい。頭を上げて下さい、お願いします」
伯爵は頭を上げまた外を眺める。
「あの夜、内密に騎士から手紙を貰い、夜中に隠れる様に荷馬車で君がクロードを私達の元に帰してくれた。野に放てと言われ、私達はクロードの亡骸を諦めていた…。クロードが殺され3日後だったな」
「はい、申し訳ありません」
「あの時、君には申し訳ない事をした。君が抱えるクロードを奪うように取り上げ、最後にもう一度クロードに会わせてほしいと言った君を追い出した」
「当たり前です」
「それでも君がクロードを護り隠してくれたお陰で我々家族はクロードと会えたんだ」
「いえ、クロードは立派な騎士です。名を挙げた騎士です。出来る事なら私もクロードを堂々と騎士全員で送り届けたかった。騎士達はクロードの対応に憤りを感じていた。だからクロードを隠す事も出来、クロードを家族の元へ帰す事も出来ました」
「そうか…」
「クロードの亡き後があんな屈辱的な事、許されるはずがありません!」
「私もだが妻も、獣人は獣だ、人族は悪魔だ、と思っているよ」
「私もです。未だに獣人も人族も許せない。クロードの死を罵倒し侮辱した。許せるはずがありません」
「私もだ」
「クロード程、獣人を人と扱い慕ってくれた者はいません。クロード程、獣人と人族が共存出来ると信じた者はいません。そんなクロードに!クロードにする仕打ちがどうして!どうして…。屈辱です。死者への冒涜です」
「ああ、私もそう思う」
「奥方ではありませんが、私もクロードを返して欲しい」
「ああ、私もだ。
私は後悔しているよ。まだ幼いクロードに、人族は頭を使う事を得意にしていて獣人は体を使う事を得意にしている。得意にしている事が違うだけで我々と変わらぬ人なのだと言い聞かせた。種族が違っても仲良く手を取り合えるとな。そのような事を言わなければ、獣人とは分かり合えないと教えていればクロードは死なずに済んだ」
「私もあの時発情期でした。もし発情期で無かったらクロードを助ける事も出来たでしょう。あの時程発情期を憎んだ事などありません」
「まだ10年なんだ」
「はい、私もです」
「表面上は取り繕っても心の内は憎い」
「はい」
「アイリスの相手がまさか獣人とはな」
「そうですね」
「だがアイリスのあんな笑顔も久しぶりに見る。あの子はクロードが亡くなってから心を失くした様になったんだ」
「そうなのですか?」
「クロードの亡骸を伯爵家の墓に入れる事が出来ずこの邸の庭に墓を作った」
「はい」
「この邸の中なら護ってやれる」
「はい」
「アイリスは毎日クロードの墓の前で座っていた。時には横になり誰が何を言っても動かなかった。眠ったアイリスを抱き部屋のベッドに寝かせるそんな毎日だった」
「はい」
「レオン君、ガイ君はアイリスを幸せに出来ると思うか?アイリスを護れると思うか?」
「はい、それは勿論です。ガイは愛情深い狼獣人ですから。番以外に目を向ける事は絶対にありません。一度愛したら己の命を掛けて一生愛しぬき護ります。ガイは一生アイリス嬢以外を愛する事はありません」
「そうか」
「はい、剣に誓って」
「君の言葉を信じよう」
「ありがとうございます」
「アイリスに案内して貰ってクロードに会ってやってほしい」
「よろしいのですか?」
「ああ。長く待たせてしまった」
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
◆◇◆
アイリス父視点
レオン君が部屋を出て行き、
「カーラ入って来なさい」
別の扉から入って来た妻の手を引いて窓際へやって来た。
「なあカーラ、私達以外にも同じ思いを未だに思ってる獣人もいるんだ。 クロードを慕い、クロードの死を悲しみ、涙を流し、憤りを持ってくれる獣人がいたんだ。 同じ人族でも私達と同じ思いを持った者などいなかった。
なあカーラ、獣人を許せとは言わない。私も全ての獣人を許す事など出来ない。だが、信じられる獣人もいると言う事は今日分かった。信じてみないか?」
「旦那様…」
「憎み続けるのも疲れた。それにクロードはそんな事望んではいない」
「旦那様…」
「少なくとも二人、レオン君とガイ君は信じてみないか?」
「…………」
「今すぐとは言わない。だが、見てみろ。アイリスのあんな笑顔はクロードが亡くなってから見ていない。それに、ガイ君とソニックを見ているとクロードとアイリスを思い出さないか?」
「………ううっ…」
「カーラは覚えているか? クロードの左手が変な形をしていた事を」
「……ううっ…は、い…」
「クロードが息を引き取る前から、そして亡くなってこの邸に返って来るまで、レオン君が握りしめていたからだと思う。医師も言っていただろ?何かを握っていたからだと」
「……は、い……ううっ…」
「今日話を聞いて、アイリスが言った言葉で確信した。クロードは最期の時、友の手を握り、友に見送られた。そして友も息を引き取ってもなお離さず護り私達にクロードを返してくれた。
私はそれが知れただけで充分だ」
「……はい…」
私はカーラの抱きしめた。
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