憎しみあう番、その先は…

アズやっこ

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 レオンお兄様がお兄様のお墓の前に行き、私とガイはレオンお兄様から離れた所で見つめている。

 レオンお兄様は何も言わずただジッとお墓を見つめている。その後ろ姿が悲嘆に暮れている。


 私はガイの手を引きそっとその場を後にする。


 後ろに振り返った時、遠く離れた所にお母様の肩を抱いたお父様がいて、お兄様のお墓を見つめていた。

 ガイはお父様とお母様に頭を下げた。頭を下げてるガイを引っ張り移動する。お義姉様もソニックとアンネの手を引きその場を後にした。

 ガイは私に小さい声で話しかけてきた。


「アイリス」

「何?」

「お父上とお母上がいたのに良いのか?」

「良いの。きっとお父様はお母様に見せたいのだと思うの」

「何を?」

「自分達と同様に傷つき悲しみ嘆いている獣人がいるという事を」

「そうか」

「それに、レオンお兄様もお兄様と二人きりの方が良いと思ったの」

「確かにな」

「私達がいたら隊長でいないといけないし、兄でいないといけないもの」

「そうだな」

「それにこれが最後になるかも知れないでしょ?」

「何が?」

「お墓に眠るお兄様に会うのが」

「そうだな」

「どうして獣人は人族の街に来ちゃ駄目なの?」

「それは昔色々あったからだろ?」

「私だってガイのご両親やお姉さんのお墓に挨拶したいわ」

「人族は獣人街に入れないからな」

「それは分かってるけど」

「俺だって今日ここに来るのに面倒な書類を何枚も書いてようやく来れたんだ」

「そうなの?」

「まあ人族の番を嫁に貰うのに攫う訳にはいかないから人族の親に挨拶に来る事は認められてる事だからな」

「そうなのね」

「それでも来たいと思って来れる訳じゃない」

「そうよね」

「結婚すれば番と一緒なら書類とか書かなくても入る事は出来るんだけどな」

「そうなんだ」

「それでも後から迎えに来るとかだと書類の提出は必要なんだ。後は出産とかな?」

「色々面倒なのね」

「それでも昔を思えば全く入れない訳じゃない」

「そうだけど」

「それに俺の親も姉さんもお墓はないんだ」

「そうなの?」

「ジンの親父さんの計らいで同じ地に亡骸だけは埋めさせて貰ったけど」

「どう言う事?」

「ジンは良い所の坊っちゃんって言っただろ?」

「うん」

「ジンの親父さんの妹が俺の母さんなんだ。俺の父さんは獣人と人族の子なんだけど、父さんの番が母さんだった」

「もしかして前に半獣って」

「まあそうだな。獣人と人族の子は半獣って言われてる」

「ならミミやレイも?それに産まれるか分からないけど私達の子も?」

「まあそうだな。それでも産まれてきた子は獣の部分が出るから獣人と何も変わらないぞ? そんなの言いたい奴には言わせておけばいい」

「そうだけど」

「半獣なんて言う奴は時代遅れなんだよ」

「そうなの?」

「後は頭の堅い種族だけだ」

「そうなんだ。ならあの人は頭堅い種族って事?」

「そう言う事だ」

「ふ~ん。それで?」

「何が」

「ジン様が良い所の坊っちゃんだって」

「あぁ、ジンは人族で言うなら貴族なんだ。アイリスは伯爵だったよな?」

「そうね」

「獣人では、爵位は無くてな、種族のトップが爵位みたいなものだ。閣下って言われてる」

「ジン様はその息子って事?」

「そう言う事だ。で、ジンの親父さんが管理する墓地の端の方に埋めさせて貰ったんだ。まあ兄上の様な立派なものじゃなくて石をその上に置いただけだけどな」

「それでもお墓はお墓でしょ?」

「まあそうだけど」

「それでも私は入れないのよね?なら結婚したら入れるの?」

「結婚しても獣人街には入れない」

「どうして?番なら問題ないんじゃないの?他の番になる訳じゃないし」

「まあ他の番にはなれない。獣人にとって番はこの世で一人だからな。アイリスの番は俺で獣の種族が違ってもそれは変わらない」

「なら」

「それでも無理なんだ」

「どうして?」

「人族は入れない事になってる」

「ならどうやってご両親とかに会うの?ガイのご両親はいなくてもラシュ様のご両親はご健在よね?ならリーナはどうやってラシュ様のご家族に会うの?」

「それは共存街で会える」

「共存街でしか会えないの?」

「ああ」

「そう。なら私はジン様のお父様とお会いして挨拶すれば良いの?」

「必要ないぞ?」

「どうして?ガイの伯父様でしょ?」

「そうだけど交流ないしな」

「どうして?」

「母さんが死んだのは半獣の子を産んだからだと思ってるからかな?」

「何それ!伯父様がそう言ったの?」

「嫌、婆さん」

「婆さん?」

「母さんの親」

「それでも酷い言い方じゃない」

「婆さんの時代では人族との争いの遺恨がまだ残ってたらしいからな。それに可愛い娘が平民の男と番になるのが耐えられなかったらしい」

「それでも」

「それでも俺だって同じだろ?お母上は獣人の俺を認めたくない」

「そうね」

「俺の母さんは交流を止めた」

「そう」

「だけど俺は止める気はない」

「え?」

「俺は認めて貰うまで諦めない」

「そうだけど」

「俺は認めて貰うまで諦めず頑張るしかないんだ」

「そうだけど、それってガイだけが頑張らないといけないの?お母様だって近寄る努力をしないといけないでしょ?」


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