50 / 55
50 幸せは続く
しおりを挟むフランキーの婚約者になってもさほど変わらない。王子妃教育は終わっているし、苦手なダンスはフランキーが練習相手をする事に決まった。
今は王宮のダンス室でその練習中。
「グレース足を踏んでもいいから俺を見ろ」
見上げればすぐそこにフランキーの顔。
ドキンと胸が鳴った。
耳元でフランキーの声。私の腰に添えられているフランキーの手。
前に一度フランキーに練習相手になってもらった時、どうしてフランキーと踊るダンスが疲れたのか、あんなに頭が真っ白になったのか、自分には分からない感情が何が何だか分からなかった。
ふふっ、あの時私はフランキーを男性だと思ったのね。家族ではない男性だと。
あの時鼓動が早くなったのも今なら分かる。男性として意識したから。
それに家族の枠を取り外し幼い頃から思い起こせばフランキーを男性として好きだったの。手を繋いで安心するのも、ウルーラお姉様との婚約騒動の時にフランキーを取られた気分だと思ったのも、フランキーの隣は私の居場所だと思っていたから。ずっと側にいたくて、でも異性だから側にはいられなくて、だから感傷的になった。幼い男の子から男性になるフランキーをずっと見てきた。近くにいすぎて気付かなかっただけ。
それは前の記憶の家族への拘りが強過ぎて招いた結果でもあるけど、きっと『家族』という重い枷を付けないと今度も私はフランキーを男性として好きになるから。唯一の女児の立場で心に好きな人がいて誰かに嫁ぐ事が出来ないって、それは私が一番知ってるから。だから自ら枷を付けたの。
家族という重い枷を外し私の心に残った気持ちはフランキーを愛しいと思うこの気持ち。前の時みたいに秘し隠さなくても伝えられる気持ち。
ねぇレーナ、人を好きになるのは罪じゃないわ。人を好きになるのは幸せな事よ。
こんなに心が満たされる
綺麗だと思っていた花はより綺麗に見えるし、フランキーに渡すお菓子を作っている時間は幸せだもの。
会えば自然と手を繋ぎ、見つめ合って笑い合う。時にはやきもちを焼いて喧嘩したり、呆れてものが言えなくてもそれもまた幸せだと思う。楽しい事も悲しい事も共有できるって素敵な事よね。
「グレース?どうした?」
「幸せだなって思ったの」
「俺はいつも幸せだ。グレースが俺の側にいてくれるだけで俺は幸せだ。グレースに好きだと気持ちを伝えれる、それが何よりも幸福だと思える」
フランキーはダンスをやめそのまま私を抱き寄せた。そして片手は私の腰に片手は私の頬を優しく包む。
「グレース好きだ。俺にはグレースしかいない。グレースが側に居てくれたら俺はこれからも生きていける。これからも俺に愛させてくれないか。一生死ぬまで、死んでも俺にグレースを愛させてほしい」
「死んでからも?」
「悪いな、死んでからもお前を離せそうにない。もし俺に来世があるのなら、俺は来世もグレースを見つけ出して愛す」
「そう、なら死んでからもフランキーと一緒なら怖くないわね。それに来世もフランキー会えて愛せるならそれも楽しみだわ。
ねぇフランキー、私を愛すだけじゃなくて私の愛も受け取ってね?
愛は愛するだけが愛じゃないわ。愛される事も愛なの。お互い愛を注ぎ愛を受け取りそれを繰り返して愛は育つのよ?」
「ああ、分かってる」
「私もフランキーを一生死ぬまで、死んでからも来世でもフランキーを愛すわ」
「ありがとうグレース。
グレース愛してる」
「私もフランキーを愛してるわ」
重なる視線。
お互い熱を帯びたその視線で目の前の愛する人を見つめる。
「もうダンスの練習は終わりにしてお茶にしないか?」
視線を外したフランキー。
「どうして口付けしないの?」
自然と出た言葉だった。
レーナが言っていたわ。
『女性だって口付けしてほしいと思うものなの。手を繋いで抱きしめ合ってもそれだけじゃ足りないって思う時があるわ。口付けは唇を合わせるだけかもしれない。それでもルイが好きだから愛してるから口付けをしたいと思うの。口付けは婚約者の間に許された愛を伝える行為よ?好きよ、ルイを愛してるわ、その思いが溢れて触れたいと思うの。
それに唇は手や頬とは違うわ、特別な場所なの。心から愛する人だけが触れられる唯一の場所だわ。
なのにルイはあの婚約しようって言った時以来全く口付けをしてくれないのよ。良い雰囲気でもよ?だから聞いたの『口付けしないの?』って。そしたら『本来は婚姻式で初めてするものだ』だって。婚約者なら皆してるわよ。
きっと殿下も同じよ。騎士としての変な拘り?きっとそれよ』
レーナの言っていた意味が分かる。良い雰囲気になれば女性だってそれくらい分かる。それにフランキーだから口付けしたいと思うの。
言葉で伝える愛よりもっと先の…、愛を伝える方法。
手を繋ぐや抱きしめるとは違う、愛しい人しか触れさせない場所。
「俺だって口付けしたい。でもやっぱり初めての口付けは婚姻式でしたい。だから我慢してるんだ」
「我慢は必要かもしれないけど、それは必要な我慢なの?」
フランキーは口説くと言って手の甲に口付けした以来、唇はおろか手や額や頬にも口付けしないの。
「必要な我慢だ。自分の事は自分が一番良く分かってる。お前の唇を奪えば俺は歯止めが利かなくなる。それはお前を傷つける行為だ。だから俺は婚姻式まで我慢する」
「なら額や頬は?それに口説くって言った時に手に口付けして、それっきり……」
私は言っていて恥ずかしくなった。
だって一度もしていない口付けをしたいって言ってるのよ?
「それは、グレースが嫌がったからだろ?口付けを嫌がる女性はいるらしい。唇だけじゃなくて額や頬でもだ。俺はお前が嫌がる事はしない」
「誰が言ってたの?」
「騎士達がそう話していた」
「それはその騎士が嫌われていたからよ。それにあの時は嫌だったんじゃなくて驚いただけ。
別に、嫌じゃ…なかったわ…」
「そうなのか?」
私は頷いた。
「グレース愛してる」
フランキーの唇が私の額にあたった。
それだけで私は嬉しさと幸せと、それとちょっとだけ残念な気持ちになった。
唇じゃないのね…って。
98
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~
Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。
その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。
そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた──
──はずだった。
目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた!
しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。
そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。
もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは?
その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー……
4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。
そして時戻りに隠された秘密とは……
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます
コトミ
恋愛
セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。
「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」
困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる