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ローガン様が帰って来た時、ジェイク君はお昼寝中だった。
「ローガン様、一緒に庭を散歩しませんか?」
「ああ、しよう」
ローガン様と一緒に庭に出ようとした時、ローガン様は急に私の手を繋いだ。
「ローガン様、手はちょっと…」
「ジニア何を言ってる」
「私達は夫婦ではないので、手は…」
「庭は地面だぞ、土だぞ」
「知ってますが」
「もし転んだら怪我をする。怪我をすれば血が出る。邸の中は絨毯だから転んでも痛くはないが土は痛い。だから男性は庭を散歩する時女性の手を繋ぐんだ。女性を護る為に。それは夫婦とか関係ない。男性としての常識だ」
「え?」
「父上が言っていた。良く母上と庭を散歩していたんだが、手を繋いでいたから子供の時に聞いたらそう言われた。俺は男だから一人で歩けと。違うのか?」
「庭でもきちんと歩けば転けたりしないかと」
「俺は良く転けて血が出た。それに痛かった」
「それは子供の時ですか?」
「庭で遊ぶのは子供の時だけだろ?」
「そうですが」
「だからジニアの手を離さない。ジニアは安心して歩け。俺が護ってやる」
「ふふっ、ありがとうございます。では安心して散歩出来ますね」
「ああ」
ローガン様は優しく笑った。
「庭の散歩なんて初めてですね」
「そうだな」
「夫婦の時一緒に散歩すれば良かったですね」
「これから一緒に散歩すれば良い。ジェイクも一緒に」
「そうですね。天気の良い日には気持ち良さそうですね」
「二人でもまた散歩したい。良いだろうか…」
ローガン様は伺うような目を私に向ける。
「ええ、たまには一緒に散歩しましょう」
「ああ」
嬉しそうな声。
花を見てゆっくり歩く。小さい石に躓いた時、転けるほどではない。それでもローガン様はガシッと私の体を掴む。
「ほら言っただろ」
「はい、ありがとうございます」
「手を繋いでいて良かっただろ?」
「ふふっ、そうですね。助かりました」
大きな木の下にあるベンチ。
「座ろうか」
「はい」
ローガン様がベンチに座り私は隣に座ろうとした。
「ジニアどこに座るつもりだ?」
「ローガン様の隣に」
「女性は男性の膝の上に座るんだろ?」
「はい?」
「ベンチは固い。邸の中の椅子は柔らかいから女性が一人で座っても問題はない。だが外のベンチは板張りで固い。そんな所に女性を座らせる事は出来ない。膝の上ならベンチよりは固くないだろ?だから男性は膝の上に女性を座らせるんだ。ジニアも早く俺の膝の上に座るんだ」
「は、はい…」
少し強引にローガン様の膝の上に座らされた。そして後ろからローガン様の両腕で包み込まれる。
「ロ、ローガン様」
「ん?なんだ?膝の上に座ってもし落ちたらどうする。落ちないように腕を女性の腰に回す。俺の腕は命綱だと思ってくれて良い」
ローガン様の体温が私に伝わる。それくらいくっついている。
「ジニア力を抜け」
「は、はい…」
力を抜けと言われても恥ずかしくて…。
「ジニア」
「はい」
「愛する人を膝の上に座らせるというのは良いもんだな。アイビーの時は何も思わなかったが、今は幸せな気分だ。愛しいジニアが俺の膝の上に座り目の前にいる。命綱とはいえ抱きしめる。
幸せだ…」
「はい」
私も幸せな気分。
「もしかしてこれもお義父様から教えてもらいました?」
「ああ、父上からの教えだ」
「ふふっ」
「何が可笑しい」
「いえ」
きっとお義父様はお義母様といつも側にいたかった。今も仲の良いお二人だもの、きっとローガン様の子供の時もこうして夫婦二人の時間を楽しんでいたんだろうと思う。子供の目の前でも側にいたい。手を繋ぎ膝の上に座らせていた。子供はどうしてと尋ねる。お義父様は嘘は言っていない。相手はお義母様だから。
きっと「愛しい人」ではなく「女性」と言ったのね。ローガン様が大人になった時、誰と結婚するのか分からない。愛しい人と結婚するのか、政略結婚か、その時の為に「女性」と言った。
「だからアイビー様も膝の上に座らせて手を繋いでいたんですね」
「ああ。女性に対する男性の常識だからな」
「一つ聞いていいですか?」
「なんだ」
「どうしてアイビー様だったんです?確かにアイビー様には医師という夢がありますが」
「アイビーの後ろ姿を初めて街で見た時俺はジニアだと思った。ジニアとアイビーは背格好が同じだ。それに髪の色も同じ。その時は髪の長さも同じだった。後ろ姿だけなら見間違えても仕方がないくらい似ていた。
その時アイビーは男と歩いていてな、ジニアが浮気していると思った。だから直ぐに声をかけた。そしたらジニアではなく人違いだと謝罪をしたんだが、目の色もジニアと同じだった。それに手には医学書を何冊も持っていた。それもかなり使い込まれた医学書だ。
その時今回の事を思いついた。ジニアと同じ髪の色目の色をしていて、夢を持つ令嬢を探そうと。なかなか見つからなくて半分諦めていた時に男爵当主の愚痴を聞いてな。だからアイビーに会いに行った。そしたら街で間違えた令嬢だったんだ」
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