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7:五年が経ちました。
しおりを挟むセオドリック殿下の通訳者になっていつの間にやら五年が経っていました。
セオドリック殿下は十七歳、私は十三歳になりました。殿下は来年がデビュタントボール。成人です。
実は殿下が成人を迎えるのを機に、と随分前に王妃殿下とお約束していた事がございました。そろそろそれをセオドリック殿下にお伝えしようと考えています。
「そうですか、本日も殿下とお会い出来そうにありませんのね」
殿下は二年ほど前から政務の手伝いをされており、ここ最近は特に忙しいようで、週に一度会えるかどうかという状態です。
そして、本日も会えない旨の手紙……らしきものをいただきました。
「ミラベル様、落ち込まれないで下さい! 先程、殿下の補佐官にお伺いしたのですが、来週の夜会の翌日はお休みを設けられそうだ、との事でしたよ」
「まぁ、そうなのね。ありがとう、リジー」
リジーは王城での私専属の侍女です。
最近、殿下が執務に携わるようになった関係で夜会に参加されるので、殿下のパートナーとして同伴するようになっていました。
殿下も私もまだ成人前なので、挨拶程度で直ぐに退場するのですが、そういった顔見せなどが後々の関係に大きく関わってくるので、夜会への参加は絶対なのです。
準備や調整など、実家から連れてくる侍女のザラだけでは大変だろうとの事で、王妃殿下の計らいで専属侍女を付けていただけました。
因みに、リジーは殿下と私は相思相愛だと勘違いしています。
どこをどう勘違いしたらそうなるのでしょうか。謎です。
「お嬢様、本日はお勉強が終わられましたら、すぐに屋敷に戻られますか?」
「うーん。ザラ、今日はお母様にお茶会などの予定は入っていなかったわよね?」
「はい。本日は私室にて刺繍をされるとの事でした」
であれば、王妃殿下にもお茶会の予定は無いはずですわ。この五年で一番仲が深まったのはあのお二方ですから。
リジーにお願いして王妃殿下への面会の依頼をしました。
王妃殿下から、王族が私的に使う小さめのサロンで会っていただける旨の返事をいただけましたので、直ぐに向かいました。
「王妃殿下、急なお願いをして申し訳ございません。本日もお麗しく――――」
「そんな他人行儀な挨拶いいわよぉ。ほら、こちらにいらっしゃいな。で、どうしたのかしら?」
カーテシーで王妃殿下に挨拶していましたら、座るように促されました。
「はい、セオドリック殿下が来年には成人の儀を迎えますので、そろそろ例の事をお伝えしようかと思っています」
「えぇ? まだ諦めてなかったの?」
「はい」
「んー。私は反対だけど、ミラベルちゃんがそう決めたのなら、口出しはしないわ」
「ありがとう存じます、この御恩はいずれ――――」
「もぅ、堅苦しいのは無しって言ったでしょ?」
「……はい。ありがとう存じます」
再度、王妃殿下にお礼を言うと、ニッコリと笑って、頭を撫でて下さいました。
「ミラベルちゃんは凄く頑張ってくれたもの。困ったら何でも言いなさいな。私が全力で助けるわ」
「っ、はい!」
王妃殿下の優しさが暖かくて、目頭が熱くなりました。
初めはセオドリック殿下の為だけに権力で囲い込んで籠絡された、と憤りに近い感情を抱いた事もありましたが、伯爵家の領地や家族を見ていますと、私達の方が明らかに恩恵を受け過ぎています。
ここいらでちゃんと現実を見詰め、殿下と向き合わないと――――。
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