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22:ニギニギ、ニギニギ……グッ!
しおりを挟む「…………へぇ」
殿下はこの五年間、精力的に執務や社交をし、友人もできた、普通に話していた、と仰られました。
「へぇ、とはなんだ! 我がファクルタースを侮るなよ? 我は闇に侵されてなお光を失わず、凡庸なる者共と対話し、時には我に近付けるようをコントラクトゥスもしたのだぞ」
「………………へぇ」
今のどこに普通の会話があったのか、説明を求めたくもありますが……面倒ですので放置します。
「それで、私はまた殿下の通訳者に戻されたのですか?」
「通訳者……まぁ、なんだ…………そうだが?」
殿下がなぜが俯き気味でチラチラとこちらを伺ってきます。
私より背が高いのに上目遣いってどうやっているんでしょうか。
ちょっとかわいいぃぃいえいえ、絆されてはなりませんっ!
あと、近いです、すんごく近いです。もうちょっと離れて座られて下さい。
何なら向かい側とかに!
なんで肩をくっ付けてくるんですか。なんで膝もくっ付けて来るんですか。
ちょ、人の膝を撫でさすらないで下さいっ!
妙にグイグイ近付いてくるセオドリック殿下の胸を押し返しながら話を続けました。
「せっ、正式にですか?」
「正式、というか、元々だ」
――――んんっ? 元々?
ちょっと良く意味が解りませんでした。
元々とはどういう意味なのでしょうか。
「我と赤き果実の契約は切れてはおらぬ」
「……ずっと婚やく……ちがった。通訳者のままだったと?」
「なぁ、そろそろ『通訳者』と言うのは諦めたらどうなんだ?」
何を急に標準語でしゃべってるんですか、イラッとしますわね。
ではなくて!
今、ものっすごく爆弾投下されましたわよね?
「五年前に、私はお役御免いたしましたよね?」
「いや? 赤き果実が契約に逆らい我に歯向かって来たから一時的処罰を与えただけだが?」
「…………」
「全く。イジけて五年も役目を放棄しおって。我の口添えがなければ婚約者のままではいられなかったのだぞ? 少しは感謝しろ」
――――はぃ?
なんでしょう。イラッとします。『コイツ殴りてぇ』と思ったのは私だけなのでしょうか?
色々と思うところあって右手をニギニギして拳を作っていましたら、声が届くか届かないかのところに控えていたロブが何やら変なジェスチャーをしていました。
「おい、赤き果実の護衛が変な動きをしているぞ?」
「殿下に言われたくございません」
「ぬあっ⁉ 我のどこが変なのだ! 我は完璧ではないか!」
――――見た目だけは、ですね。
殿下が登場しながら宣っていた内容は……まぁまぁ同意できてしまいました。
『この世の全ての光を反射するかのように眩いプラチナブロンドの長い髪』はとても美しいです。
羨ましいほどにサラサラです。
『重厚かつ洗練された漆黒の軍服と王族のみに着用が許された豪奢なマント』はとてもお似合いですわね。
『悠然と庭園を歩んでいた』姿はとても男らしかったですし、『庭園で咲き誇っているどの花よりも美麗』だとは……まぁ、思いましたが!
ぶっちゃけ、見た目だけは好みではありますが……。
「……中身が非常に残念ですものね」
「は? あの護衛か?」
「いえ。殿下が、です」
「んなぁっ⁉ 我っ⁉」
殿下が本気で驚かれていましたが、どこに驚く要素があったのでしょうね?
あと、ロブは何のジェスチャーをしているのでしょうか。
――――ん? 手? グーパーグーパー、バツ?
「あ! 殿下を殴ったら駄目?」
ロブがぶんぶんと上下にヘッドバンキングしていました。
「ふおぉぉ⁉」
「殿下、煩いです」
「はぁぁ⁉」
――――煩いなぁ、もぉ。
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