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38:ほぼ事実のほぼ捏造。
しおりを挟む安心から溢れ出た涙を落ち着け、少し深呼吸をしました。今後の為にしっかりとし確認して、伝えたい事があります。
テオ様の膝を……多少ゴタゴタしつつ、何とか膝から下りて、隣に座りました。
「テオ様は、これからも厨二病を私の前でも続けるのですか?」
「うむ。なるべくはミラベルの前でも続けようと思っている…………が、今は『魔王』が直ぐに剥がれてしまうな」
嬉しすぎて、と頬を染めつつ付け加えられて、何も言えなくなりました。
ただ、心がぽかぽかドキドキとして、ぎゅうっと締め付けられて、『殿下が愛しい』という気持ちが溢れました。
――――この気持ちを伝えたい。
「セオドリック殿下」
「またそう呼――――」
「セオドリック殿下、私も愛しています。幼き頃より、ずっとお慕い申し上げていました」
「っ……ん、ん。んっ、そうか」
今度はテオ様が涙を溢す番でした。
明後日の方を向いていらっしゃいますが、ちらりと見えている耳と頬が真っ赤で、頬から顎にかけてキラリとした雫が流れていましたから、きっと。
割と直ぐに泣き止んだテオ様が、「なっ、泣いてなどいないからなっ!」とか宣いつつ、私が何故『婚約解消』という行動に出たのかを知りたいと仰られたので、今度は私が本音でお話する番になりました。
まぁ、そもそも『婚約者候補』なのですが。婚約式などしていませ――――あ、はい。割愛ですね。
――――ええと、どこから話しましょうか。
取り敢えず、初めは面倒な人だと思っていたのです。
家族が籠絡され、毎日渋々と王城へ通っていました。でも、妃教育はとても楽しかったです。
勉強できる環境というのは、望んでも手に入らないこともあるのだと知っていましたから。
――――まぁ、思い出した、とも言いますが。
「王族からの命令だったので、従っていました」
そう言うと、テオ様がしゅんとした顔になってしまいました。
何でしょう、先程から心臓がキュンキュンします。
初めは嫌々でしたが、話していく内に、テオ様ってツンデレ&コミュ障だなと思うようになり、それからは可愛らしいなぁ、と観察していました。
「つん? 可愛らしい……?」
テオ様が物凄く不服そうですが、スルーして話を続けます。
二人揃ってお茶会や夜会に参加するようになって、寄生令嬢と陰で呼ばれるようになりました。
「寄生令嬢、だと?」
「ええ」
少し語学が堪能だからと、セオドリック殿下の問題を盾にしている。
ドレスは最高級の物を王妃殿下に強請って作ってもらっている。
王族の居住区に部屋を用意させた。
セオドリック殿下の私室に入り込んでいる。
セオドリック殿下を怒鳴り散らしている。
セオドリック殿下のお言葉を無視している。
お可哀想なセオドリック殿下、あんな卑しい子供が相手なんて。
お可哀想なセオドリック殿下、あんな貧相な子供が相手なんて。
「……誰が言った? 全員教えろ。明日の太陽を拝めなくしてやる」
テオ様が地を這うような声で何やら物騒な事を宣っていらっしゃいましたが、まるっとスルーします。
「ほぼ事実なので、別に良いのですが――――」
「ほぼ捏造だろうが! 何故、私に楯突くときのようにやり返さない!」
「煩いですわよ。どちらも『ほぼ事実』なのですから、そこはどうでも良いのです!」
――――まったく、話が進みませんわね。
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