37 / 196
37:パフォーマンスだった?
しおりを挟む******
――――なるほど!
セオドリック殿下のお話を聞いて色々と納得です。
それでお兄様もお父様もエスコートを請け負ってくださらなかったのですね。
そして、それはお母様の企み八割ってところですわね。
「他の男の色など纏うな……」
「……? 纏った覚えはありませんが?」
「あの護衛の男の色だった」
「ロブですか?」
えっと、ロブの色とは…………あ!
「あれはただ、ドレスの色に合わせただけなのですが」
「私が贈った色も合っただろう!」
「まぁ、多少、ギリギリ? 諦めれば? でも、デザインが致命的なほど合いませんでしたので」
「……」
あぁっ、思った事をハッキリと言い過ぎました。セオドリック殿下の顔が『無』です。
「いえ、その、デザインはとても素敵でございましたです、はい」
「…………」
「せ、セオドリック殿下――――」
「あの男はミラベルとなんの関係も無いのだな?」
「ロブですか? なんの関係も無くは無いですが。ロブは私専属の優秀な護衛ですし」
「…………」
殿下がまたもや『無』な表情のまま顔を近づけて来られて、ちゅ、とキスをされました。謎のタイミング過ぎて避けようがありませんでした。
「……このような関係では無いのだな?」
「しっ、しませんよ!」
「んっ」
何故か満足そうな表情をされました。
「いったい、何なのですか!」
そもそも、何故ずっとこのような格好をさせられているのか……。
膝から下ろして欲しいと言ったのに、さらりと無視されました。
「ミラベルは、怒ると頬の色が濃くなる……可愛い」
蕩けるような笑顔で頬を撫でられ、ボッと火が付いたように体が……特に顔が熱くなりました。
セオドリック殿下はくつくつと笑いながらさらに私の頬を撫でていました。
「……殿下」
「テオと」
「……」
「ミラベル、ずっとそう呼んで欲しかったんだ。呼んで?」
「っ……あー、もうっ! テオッ!」
「ん、何だ?」
「てっ、テオ……様が、厨二病を続ける理由は解りました。知らなかったとはいえ、色々と言って申し訳ございませんでした」
セオドリック殿下が嬉しそうに微笑むので、頑張って『テオ』様と呼ぶようにしましょう。
それよりも、ちょっと……いえ、かなり気になっている事があるのでそちらを知りたいのですが。
「では、あの『厨二病』セリフの求婚は、パフォーマンスだったのですか?」
それぞれの護衛や侍女、そのほか覗き見なのか通りすがりだったのかの人影がチラリと見えたり、木陰に潜まれた方々など、割と何人もの視線がありましたし。
「ちっ、ちが、う……ちがうんだ」
あの光景をぼぉっと思い出していましたら、テオ様が苦しそうに声を洩らすのでハッとして、テオ様の顔を見ました。
湯気が出るんじゃ……? というくらいに真っ赤になっていらっしゃいました。
「て、テオ様?」
「あれは……違うんだ」
「……間違いの、求婚だったと?」
思ったよりも低い声が出てしまいました。
すると、テオ様がビクリと肩を震わせ、一気にまくし立てて話し出されました。
「違うっ! 違うんだ。自分を鼓舞しようとして、客観的に解説したり、自分がミラベルに好かれてそうなところを挙げていたんだ。そしたら、目の前にいたミラベルが…………庭に儚げに佇むミラベルが可愛くて! プロポーズはちゃんとした言葉で言うつもりだったんだ! だがっ、頭が真っ白になって、訳わからなくて。ずっと当たり前に使っていたから『魔王』が出て来てっ…………あんなことになりました。ごめんなさい」
「…………」
最後は絞り出すように謝られました。
ちょっと涙目のテオ様が耳まで真っ赤にして、ちらりとこちらに視線を向けられました。
何故かどんどんと困惑した表情になっていらっしゃいます。
「ミラベル……そんなに、嫌だった?」
「……ぇ?」
「泣くほど嫌だったのか?」
頬を触ると、濡れていました。ボタボタと涙が溢れていました。
「っあ…………いえ」
あのプロポーズはパフォーマンスでは無かったと、テオ様の本当の気持ちだったのだと、知る事が出来てホッとしました。
きっとその安心から涙が溢れ落ちたのだと思います。
0
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる