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130:しょうもない。
しおりを挟む跪いたテオ様に、ガツリと太股の外側を掴まれ、ギリリと力を入れられました。
「いたいいたい!」
「……ミラベル、コレは、何だ」
「ただの地味な怪我ですが」
何いってんだコイツ感を声に乗せてそうお伝えすると、テオ様がハッ! と空気を漏らすように笑われました。
「大きな虫に咬まれたのか」
「いや、どんな妄想ですか」
「…………まさか、貝で⁉」
「そうです!」
「っ、貝で……あられもないプレイをしたのか⁉」
――――どんな妄想だよっ!
多少、心の声が荒くなったのは、仕方がないと思います!
そして、多少強めにテオ様の頭をスパコーンと叩いたのも、仕方がないと思います!
「なぜ殴る」
「馬鹿ですか!」
「馬鹿言うな」
こういった、しょうもないことで疑われたり……は、今までも多々ありました。ロブと話すたびにテオ様が不機嫌になっていたのも、そういうことを疑われていたのかと、今更ながら腑に落ちました。
色々と我慢していましたが、ここで限界が来てしまいました。
――――もう、嫌です。
「何なんですか。私は誰かとそういうことをする人間だ、とお思いなのですか。ならば婚約を解消すればいい。こんな格好までしてテオ様を待っていたのに、馬鹿みたい。ほんと、馬鹿みたい。テオ様なんて大っ嫌いです! 出てって!」
貝殻を脱ぎ捨てて、テオ様に投げ付けました。
貝殻がガシャガシャと馬鹿みたいな音を出してテオ様にぶつかり、ブラらしきものはポカンとしたテオ様の肩にぶら下がり、パンツらしきものは床に落ちました。
本当に、馬鹿みたいです。
興奮からなのか、悔しさからなのか、涙が溢れて来ました。
それを手の甲でグシグシと拭いながら、素っ裸でベッドに入り布団に包まって、テオ様の呆然とした視線から逃げました。
――――大嫌い。
「っ、ミラベル」
――――大嫌い。
「ミラベル……」
寂しそうな声を出しているけど、ゆさゆさと揺らされるけど、テオ様の顔なんて見たくないのです。
「ミラベル、そんなに怒るなよ」
――――大嫌い。
「ミラベル…………ごめん」
布団の上から、ギュッと抱き締められました。
何なんですか。
あんな事件があったのに。男の人が近付くと、今でも背中が少しゾワッとしているのに。テオ様だけしか有り得なのに。
凄く、凄く凄く、胃がムカムカします。
「大嫌い!」
「っ! ごめん」
テオ様が更に強く抱きしめて来ました。
「……苦しいです」
「ん、ごめん。何度も嫉妬して、ごめん。有り得ないことだけど……覚えのない痕があって…………頭に血が上った」
――――覚えのない痕。
え、全部覚えてるの? え、キモっ! とかいう今更なツッコミはグッと我慢しました。
「大嫌いですっ!」
「うん。私は大好きだよ」
「離してください」
「嫌だ。一緒に寝る」
「嫌です」
「だが、私も嫌だ」
「嫌いです」
「ん、私は好いている」
――――人の話を全然聞いてませんね。
「ハゲてしまえ」
「ん、絶対に禿げない。代々ふさふさだ」
「ぷよぷよのポヨポヨになってしまえ」
「ん、鍛えてるから無理」
「白髪になってしまえ」
「この髪色ではそんなに目立たないぞ? ミラベルは生えたら目立ちそうだな」
「っ! デリカシーの欠片もないのですか!」
「くっ、ハハッ。ごめん」
「テオ様なんて大嫌いです!」
「ん、愛しているよ、ミラベル」
結局、テオ様に抱きしめられたまま、しょうもない言い合いをしながら、ぐっすりと眠ってしまいました。
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