厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

文字の大きさ
159 / 196

153:ガッツリ。

しおりを挟む



 テオ様は、ガッツリ二日酔いらしいです。
 ベッドに寝そべったままテオ様の背中を擦りましたら、もっと真剣に撫でて! と怒られてしまいました。

「っ、うぐぅぅ」
「あーもぉ、大きな声出されるから」
「腹がきぼぢわるい」

 アルコールで胃が荒れているのでしょうね。
 頭痛もするそうですが、そこまでは酷くないとのことで、多少なりとも昨日の水分補給が効いたのでしょう。

 呼び出しベルを鳴らし、夜間から早朝担当だった侍女に、テオ様の朝食の内容の変更をお願いしました。



「お行儀が悪いですよ」
「……けち」

 テオ様は、夫婦の寝室にあるテーブルに片肘を付いて、手のひらに顎を乗せ、ぐだぁっとした感じでリゾットをのんびりと食べられています。

 あーんして、などと寝ぼけたことをぬかされるので、軽やかに無視しましたら、『けち』と言われました。
 それからずっと何を言っても『けち』ばかりです。
 寝ているときは可愛いかったのに。

「……はぁ」

 思ったよりも大きめで低い音の溜め息が出てしまいました。
 
「……怒った、のか?」

 眉を下げた上目遣いの不安そうなお顔でそう言われて、少しだけ溜飲が下がりました。

「いいえ。可愛くないな、とは思っていますが」
「かわいくない…………格好良いは?」

 格好良いかどうかと言われると、昨日の一連はどう考えても格好悪い、としか答えようがありませんが。
 それを伝えましたら、スクッと立ち上がられて、侍女に軍服の用意を命じていました。

「今日はお休みされるのでは?」

 起きて直ぐに、『二日酔いできついから働かない』という旨の手紙、というかメモ? を書いてコーディに渡すようメイドに言っていましたが。

「……国の護りを預かるものとして、一日も無駄には出来ない。私の体調など関係はない」

 急に対外用のお顔でそう言われると、着替え用の部屋へと一人足早に移動して行かれました。



 テオ様は執務をされるとのことなので、私は王妃殿下とご相談しつつ、結婚式に飾る花や布などを決めたりして、夕方まで忙しく過ごしました。
 晩餐になってもテオ様は戻られず、お風呂を上がって髪を乾かしている時に、ザラからテオ様が戻られたと報告を受けました。
 随分と遅くまで執務をされていたようです。
 二日酔いは大丈夫だったのでしょうか?

「おかえりなさい。お疲れさまで――――」
「んっ。私も風呂に入ってくる。先に寝ていいからな」

 テオ様が目の前まで来て、話途中の私の顎をくいっと持ち上げた後、ちゅと軽く触れるキスを落とされました。
 何でしょうか……いつものテオ様と違って、とてもキザです。

 ベッドに寝そべり、なんとなく重たいような感覚のお腹をさすさすと撫でながら本を読んでいましたら、テオ様がお風呂から戻って来られました。

「痛いのか? 大丈夫か?」
「いえ、なんとなく重たいのと、コポコポと動いている感じがして気持ち悪いので……」
「明日は医者を呼んで診てもらおう」
「…………っ、はい」

 私の顔が一瞬強張ってしまったのでしょう。テオ様がギュッと抱きしめてくださいました。

「大丈夫だ。侍医と話し合って、女医を雇った。明日からは彼女に見てもらえる」

 まさか、そんなところにまで気を回して頂けていたとは知らず、心臓が鷲掴みにされたような、甘い苦しさを感じました。
 テオ様の胸に顔を埋めながら、感謝の意を伝えましたら、蟀谷こめかみにキスをされました。

「ん。私は、頼りがいのある婚約者なのでなっ!」

 今朝の『格好悪い』を根に持っていたらしいテオ様の鼻息と顔が、妙に煩かったです。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

処理中です...