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153:ガッツリ。
しおりを挟むテオ様は、ガッツリ二日酔いらしいです。
ベッドに寝そべったままテオ様の背中を擦りましたら、もっと真剣に撫でて! と怒られてしまいました。
「っ、うぐぅぅ」
「あーもぉ、大きな声出されるから」
「腹がきぼぢわるい」
アルコールで胃が荒れているのでしょうね。
頭痛もするそうですが、そこまでは酷くないとのことで、多少なりとも昨日の水分補給が効いたのでしょう。
呼び出しベルを鳴らし、夜間から早朝担当だった侍女に、テオ様の朝食の内容の変更をお願いしました。
「お行儀が悪いですよ」
「……けち」
テオ様は、夫婦の寝室にあるテーブルに片肘を付いて、手のひらに顎を乗せ、ぐだぁっとした感じでリゾットをのんびりと食べられています。
あーんして、などと寝ぼけたことをぬかされるので、軽やかに無視しましたら、『けち』と言われました。
それからずっと何を言っても『けち』ばかりです。
寝ているときは可愛いかったのに。
「……はぁ」
思ったよりも大きめで低い音の溜め息が出てしまいました。
「……怒った、のか?」
眉を下げた上目遣いの不安そうなお顔でそう言われて、少しだけ溜飲が下がりました。
「いいえ。可愛くないな、とは思っていますが」
「かわいくない…………格好良いは?」
格好良いかどうかと言われると、昨日の一連はどう考えても格好悪い、としか答えようがありませんが。
それを伝えましたら、スクッと立ち上がられて、侍女に軍服の用意を命じていました。
「今日はお休みされるのでは?」
起きて直ぐに、『二日酔いできついから働かない』という旨の手紙、というかメモ? を書いてコーディに渡すようメイドに言っていましたが。
「……国の護りを預かるものとして、一日も無駄には出来ない。私の体調など関係はない」
急に対外用のお顔でそう言われると、着替え用の部屋へと一人足早に移動して行かれました。
テオ様は執務をされるとのことなので、私は王妃殿下とご相談しつつ、結婚式に飾る花や布などを決めたりして、夕方まで忙しく過ごしました。
晩餐になってもテオ様は戻られず、お風呂を上がって髪を乾かしている時に、ザラからテオ様が戻られたと報告を受けました。
随分と遅くまで執務をされていたようです。
二日酔いは大丈夫だったのでしょうか?
「おかえりなさい。お疲れさまで――――」
「んっ。私も風呂に入ってくる。先に寝ていいからな」
テオ様が目の前まで来て、話途中の私の顎をくいっと持ち上げた後、ちゅと軽く触れるキスを落とされました。
何でしょうか……いつものテオ様と違って、とてもキザです。
ベッドに寝そべり、なんとなく重たいような感覚のお腹をさすさすと撫でながら本を読んでいましたら、テオ様がお風呂から戻って来られました。
「痛いのか? 大丈夫か?」
「いえ、なんとなく重たいのと、コポコポと動いている感じがして気持ち悪いので……」
「明日は医者を呼んで診てもらおう」
「…………っ、はい」
私の顔が一瞬強張ってしまったのでしょう。テオ様がギュッと抱きしめてくださいました。
「大丈夫だ。侍医と話し合って、女医を雇った。明日からは彼女に見てもらえる」
まさか、そんなところにまで気を回して頂けていたとは知らず、心臓が鷲掴みにされたような、甘い苦しさを感じました。
テオ様の胸に顔を埋めながら、感謝の意を伝えましたら、蟀谷にキスをされました。
「ん。私は、頼りがいのある格好良い婚約者なのでなっ!」
今朝の『格好悪い』を根に持っていたらしいテオ様の鼻息と顔が、妙に煩かったです。
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