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第三十八話 コアの遺産をゲットした件について
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「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
丸城が吠えながら、向かってきた火球を受け止めた。
そして驚くことに抱きしめるように力を込め、次の瞬間、火球を霧散させることに成功する。
当然その状況を見ていた者たちは一様に言葉を失っていた。
いや、四奈川だけが何故か目をキラキラさせて「熊さんです!」とほざいていたが。アイツ、この状況のヤバさ絶対理解してねえよな。
にしてもあの丸城って奴、熊になるとかビックリするわ。
ていうかそんなジョブもあるんだな。熊が職業ってどういうことなのかサッパリだけど。
ただ火球を打ち負かしたとはいえ、ダメージは相当なものらしく、丸城は片膝をついて呼吸を荒げていた。
「……丸、大丈夫か?」
「はあ、はあ、はあ……問題ありやせんぜ。まだ……戦えます」
「………………退くぞ」
「は……は? わ、若?」
「今のでハッキリした。アイツにはまだ勝てない。だから退く」
「ですがコアは目の前ですぜ! 若ならあのドラゴンを倒さずにコアだけを破壊できるはずですぜ!」
「いや、正直トロルが最後だと思ってたから、もう気力がない。それに……」
「それに?」
「…………眠いし、めんどーせえ」
「若……」
丸城はガックリと肩を落とすが、すぐに「分かりやした」と言うと、日柱を背負ってその場から早々と撤退していった。
「フンッ、臆病者め! 宝を目の前にして逃げるとは情けない奴め!」
そう北常はバカにするが、俺はそうは思わない。
むしろ飛柱の評価がさらに高くなった。同時に危険度も増したが。
勝てないと判断すると、冷静に退くことができる。こういう状況で感情的になるだけ命のリスクが上がるのだ。
アイツはドラゴンが自分よりも強者だということを認知し、その上で、無理に特攻しても返り討ちになる確率が高いと踏んだ。そして無理矢理に戦おうとすれば、丸城もまた無事では済まないと、今の一連の出来事で推察したのだろう。
だから退く。自分の……そして部下の命を守るために。
さすがは若くともヤクザの若頭を背負うだけはある。状況判断に優れ、かつ己の力を正確に把握できている奴は厄介だ。付け入る隙がなくなってしまうから。
確信する。アイツはもっと強く……ヤバイ存在になる。
その証拠に……。
「フフフ、やはり素晴らしいわね飛柱兵卦。是非手駒に欲しいわ」
ガキもまた俺と同じ評価を下している。
「お嬢様、私たちもここは退きましょう。この相手は荷が重いです」
「乙女さんがそう言うなら。けど悔しいです。コアはすぐそこなのに!」
葉牧さんも冷静に判断を下せる人物だ。ブレスで吹き飛ばされて尻餅をついている四奈川を横抱きに抱えて逃げる準備をする。
「どいつもこいつも逃げようとは。恥を知れ恥を!」
ただ一人、北常だけはまだドラゴンを倒せると思っているらしい。まさに脳筋。
「織音様! 見ていてください! このわたしがあなた様に勝利を捧げてごらんにいれます!」
「初秋、殿は任せたわよ」
「はっ、織音様が退却される時間は必ず稼いで……って、織音様!?」
まさかガキまでもが逃げる算段をしているとは思っていなかったのか、北常は信じられないという面持ちで彼女を見ている。
「いい、初秋。心乃たちがいなくなるということは回復が望めなくなるということよ。相手はトロルよりも数段格上の相手。今のあたしたちでは二人がかりでも討伐は難しいわ」
「そ、そんなことはありません! 織音様のお力さえあれば、あのようなトカゲなど! だから安心してください! この命が尽きたとしても、必ず織音様をコアのもとへ送り出してみせます故!」
「初秋!」
「!?」
「……あたしはここであなたを失うつもりなどないわ」
「織音様……」
「あたしは愚かな王になるつもりはない。ここでの正しい判断は――撤退よ」
「くっ…………了解しました」
それでもまだ納得できていないのか、北常は悔し気に唇を噛みしめている。
だが二組が踵を返して逃げようとしたその時、待ったをかけたのはドラゴンだった。
敵である者たちを逃がすまいと、大きく息を吸い込み始めたのである。
あれだけのブレスを吐く肺活量だ。吸い込む力も絶大なようで、四人がその吸引力に引っ張られそうになってしまう。
四人が吸い込まれまいと床に伏せて耐える……が、その中でも一際体格の小さい一ノ鍵のガキは、踏ん張りが効かずに、体重の軽さもあってフワリと浮く。
当然掴むものがなくなったガキはそのままドラゴンの口へと飛ばされていく。
「お、織音様ぁぁぁっ!?」
北常が助けようと手を伸ばすが、何も掴むことができずに見送ることしかできなかった。
四奈川たちも、その一瞬の出来事に虚を突かれたように固まっているだけ。
ガキもまた、スキルを使う暇などないのか唖然としていた。
そして、ガキがドラゴンに食べられると思われた直後――。
「グギャァァァァッ!?」
突然ドラゴンが吸引を止めて顔を上げ悶え始めたのである。
それもそのはずだ。ドラゴンの右目には、短刀が突き刺さっていたのだから。
しかし途中まで吸い込まれそうだったガキは、体勢を崩したまま床へと落下していた。
北常が受け止めようと駆け出すが、とても間に合わない。
このままでは床にあわや激突といったところで、フワッと寸前にしてガキの身体は止まった。
きっと他者からは浮いているように見えるだろう。
まあ誰の仕業かと言われれば俺しかいないのだが。
見捨てることももちろんできたが、ほとんど反射的に身体が動いてしまっていた。
どんだけ傲慢な態度でも、さすがに十歳くらいのガキを見捨てるのは気が引けたのかもしれない。
だから咄嗟にドラゴンの瞳に短刀を投げつけ、その上で落下してくるガキを受け止めたという流れだ。
しかしそのせいで……。
「……え? あ、あなたは……!?」
あー見られちゃってるよなぁ……はは。
幸い仮面を被っているので素顔は見られてないが、俺という存在は認知されてしまった。
「グゴォォォォッ!」
ヤバイッ、ドラゴンがキレてら!
俺はそのまま横抱きにガキを抱えたまま走り、北常のもとへと急ぐ。
「お、織音様?」
北常には宙に浮かびながらガキが向かってきているように見えていることだろう。
というかこの力、ここまでしても他の連中に見えないなんて、最早『透明術師』じゃないかな?
そう思いつつも、北常の傍にガキを下ろす。
そしてその場を離れようとするが、
「ま、待ちなさいっ!」
当然俺の姿を捉えているガキは、素直に俺を逃がしてはくれない。
だが、そこでファインプレイをしたのが北常だ。
「失礼します、織音様!」
「ちょっ、ま、待ちなさい初秋!?」
またもや吸引しようとするドラゴンを見て、北常はガキを抱えてその場から階段の方へと走り始めた。
見れば四奈川たちも一緒に走っている。
よし、ナイスだ脳筋ちゃん!
俺はそのまま柱の陰に走って、一度スキルを切ってからまた発動させる。
これでドラゴンにはまた気配を気取られることはなくなった……のだが、
「今度はブレスかよぉぉぉぉぉっ!?」
吸引ではなく吐く方だったようで、あちらこちらに火球を吐き出してくる。
床や天井、柱などが次々と壊されていく。
ヤバイヤバイッ! このままじゃ生き埋めにされかねねえ!
こうなったら多少強引でもドラゴンを避けてコアを破壊しなければならない。
覚悟を決めて柱から飛び出すと、タイミングよく俺に向かって火球が飛んでくる。
なんとぉぉぉぉぉっ!?
アイツ、本当に俺のこと見えてねえんだろうなぁ!
確かに視線は合ってないので偶然なのだろうが、こうまで連発されると数打てば当たるを実現されそうだ。
俺は死角になっているはずのドラゴンの右側へと回る。
獲物を逃したことプラス右目の痛みからか、ドラゴンは好き勝手に暴れ回っている状態だ。
尻尾を振り回し、爪でそこら中を引っ掻いている。
少しでもかすればあの世生き間違いなしだろう。
ああもう、怖えなぁ! 逃げてぇぇぇ!
でも四奈川じゃないが、せっかく目の前にお目当てのものがあるんだ。ここで引き返すのはもったいなさ過ぎる。
……よしっ!
俺は暴れるドラゴンの猛威をギリギリで回避しながら扉へと迫っていく。
そしてもうすぐだと思った瞬間、こちらに向けて柱が倒れ込んできた。
ちょっ、それは無しだろっ!?
しかし俺の身体は意思とは勝手に動き、前方へと飛び込んでそのまま扉の中へと入ったのである。
…………あ、そっか。良い仕事をしてくれたぜ……《自動回避》。
マジでランクアップしといて良かった。……マジで。
俺は扉の中の突き当りにあるものをそこで初めて目にした。
階段があって、その上には台座が一つ。
台座の上には、見慣れたコアが……って、やけに大きくね?
面を上げてじっくりと見つめた。
確かに宙に浮かぶ発行体というところは今までとは変わらないのだが、三倍くらいの大きさがある。
ここまで大きなダンジョンだと、コアもまた相応に形を変えているのかもしれない。
俺は予備のサバイバルナイフをバッグから取り出し、コアに向けて構える。
「これでっ、攻略達成だぁっ!」
ナイフを全力で突き刺した瞬間、コアが風船のように一気に膨れ上がり弾け飛んだ。
すると背後でギャーギャーうるさかった声が止み、辺りの景色もまた空間が歪み始めていく。
恐らく元の旧校舎へと戻ろうとしているのだろう。
〝ダンジョンクリア コア撃破ボーナス獲得 《コアの遺産》を獲得〟
続けてレベルアップの報せも届くが、俺が注目したのは当然《コアの遺産》ゲットについてだ。
「やりぃ、手にしましたよヒオナさん」
「やったやないか、あんさん」
そこへどこに行っていたのか、エロ猫が戻ってきた。
すると台座の上にチョコンと両手で持てる程度の大きさの宝箱が出現したのだ。
金色に彩られた、いかにも高級感溢れる箱である。
「え、えっと……これが例の宝箱……だよな?」
「あんさん、とりあえず早う脱出しな。他の連中に見つかってまうで?」
おっと、そうだったな。
俺は宝箱をバッグの中に入れて、エロ猫を服の中に押し込むと、再度《ステルス》を使用してその場から離れて行った。
丸城が吠えながら、向かってきた火球を受け止めた。
そして驚くことに抱きしめるように力を込め、次の瞬間、火球を霧散させることに成功する。
当然その状況を見ていた者たちは一様に言葉を失っていた。
いや、四奈川だけが何故か目をキラキラさせて「熊さんです!」とほざいていたが。アイツ、この状況のヤバさ絶対理解してねえよな。
にしてもあの丸城って奴、熊になるとかビックリするわ。
ていうかそんなジョブもあるんだな。熊が職業ってどういうことなのかサッパリだけど。
ただ火球を打ち負かしたとはいえ、ダメージは相当なものらしく、丸城は片膝をついて呼吸を荒げていた。
「……丸、大丈夫か?」
「はあ、はあ、はあ……問題ありやせんぜ。まだ……戦えます」
「………………退くぞ」
「は……は? わ、若?」
「今のでハッキリした。アイツにはまだ勝てない。だから退く」
「ですがコアは目の前ですぜ! 若ならあのドラゴンを倒さずにコアだけを破壊できるはずですぜ!」
「いや、正直トロルが最後だと思ってたから、もう気力がない。それに……」
「それに?」
「…………眠いし、めんどーせえ」
「若……」
丸城はガックリと肩を落とすが、すぐに「分かりやした」と言うと、日柱を背負ってその場から早々と撤退していった。
「フンッ、臆病者め! 宝を目の前にして逃げるとは情けない奴め!」
そう北常はバカにするが、俺はそうは思わない。
むしろ飛柱の評価がさらに高くなった。同時に危険度も増したが。
勝てないと判断すると、冷静に退くことができる。こういう状況で感情的になるだけ命のリスクが上がるのだ。
アイツはドラゴンが自分よりも強者だということを認知し、その上で、無理に特攻しても返り討ちになる確率が高いと踏んだ。そして無理矢理に戦おうとすれば、丸城もまた無事では済まないと、今の一連の出来事で推察したのだろう。
だから退く。自分の……そして部下の命を守るために。
さすがは若くともヤクザの若頭を背負うだけはある。状況判断に優れ、かつ己の力を正確に把握できている奴は厄介だ。付け入る隙がなくなってしまうから。
確信する。アイツはもっと強く……ヤバイ存在になる。
その証拠に……。
「フフフ、やはり素晴らしいわね飛柱兵卦。是非手駒に欲しいわ」
ガキもまた俺と同じ評価を下している。
「お嬢様、私たちもここは退きましょう。この相手は荷が重いです」
「乙女さんがそう言うなら。けど悔しいです。コアはすぐそこなのに!」
葉牧さんも冷静に判断を下せる人物だ。ブレスで吹き飛ばされて尻餅をついている四奈川を横抱きに抱えて逃げる準備をする。
「どいつもこいつも逃げようとは。恥を知れ恥を!」
ただ一人、北常だけはまだドラゴンを倒せると思っているらしい。まさに脳筋。
「織音様! 見ていてください! このわたしがあなた様に勝利を捧げてごらんにいれます!」
「初秋、殿は任せたわよ」
「はっ、織音様が退却される時間は必ず稼いで……って、織音様!?」
まさかガキまでもが逃げる算段をしているとは思っていなかったのか、北常は信じられないという面持ちで彼女を見ている。
「いい、初秋。心乃たちがいなくなるということは回復が望めなくなるということよ。相手はトロルよりも数段格上の相手。今のあたしたちでは二人がかりでも討伐は難しいわ」
「そ、そんなことはありません! 織音様のお力さえあれば、あのようなトカゲなど! だから安心してください! この命が尽きたとしても、必ず織音様をコアのもとへ送り出してみせます故!」
「初秋!」
「!?」
「……あたしはここであなたを失うつもりなどないわ」
「織音様……」
「あたしは愚かな王になるつもりはない。ここでの正しい判断は――撤退よ」
「くっ…………了解しました」
それでもまだ納得できていないのか、北常は悔し気に唇を噛みしめている。
だが二組が踵を返して逃げようとしたその時、待ったをかけたのはドラゴンだった。
敵である者たちを逃がすまいと、大きく息を吸い込み始めたのである。
あれだけのブレスを吐く肺活量だ。吸い込む力も絶大なようで、四人がその吸引力に引っ張られそうになってしまう。
四人が吸い込まれまいと床に伏せて耐える……が、その中でも一際体格の小さい一ノ鍵のガキは、踏ん張りが効かずに、体重の軽さもあってフワリと浮く。
当然掴むものがなくなったガキはそのままドラゴンの口へと飛ばされていく。
「お、織音様ぁぁぁっ!?」
北常が助けようと手を伸ばすが、何も掴むことができずに見送ることしかできなかった。
四奈川たちも、その一瞬の出来事に虚を突かれたように固まっているだけ。
ガキもまた、スキルを使う暇などないのか唖然としていた。
そして、ガキがドラゴンに食べられると思われた直後――。
「グギャァァァァッ!?」
突然ドラゴンが吸引を止めて顔を上げ悶え始めたのである。
それもそのはずだ。ドラゴンの右目には、短刀が突き刺さっていたのだから。
しかし途中まで吸い込まれそうだったガキは、体勢を崩したまま床へと落下していた。
北常が受け止めようと駆け出すが、とても間に合わない。
このままでは床にあわや激突といったところで、フワッと寸前にしてガキの身体は止まった。
きっと他者からは浮いているように見えるだろう。
まあ誰の仕業かと言われれば俺しかいないのだが。
見捨てることももちろんできたが、ほとんど反射的に身体が動いてしまっていた。
どんだけ傲慢な態度でも、さすがに十歳くらいのガキを見捨てるのは気が引けたのかもしれない。
だから咄嗟にドラゴンの瞳に短刀を投げつけ、その上で落下してくるガキを受け止めたという流れだ。
しかしそのせいで……。
「……え? あ、あなたは……!?」
あー見られちゃってるよなぁ……はは。
幸い仮面を被っているので素顔は見られてないが、俺という存在は認知されてしまった。
「グゴォォォォッ!」
ヤバイッ、ドラゴンがキレてら!
俺はそのまま横抱きにガキを抱えたまま走り、北常のもとへと急ぐ。
「お、織音様?」
北常には宙に浮かびながらガキが向かってきているように見えていることだろう。
というかこの力、ここまでしても他の連中に見えないなんて、最早『透明術師』じゃないかな?
そう思いつつも、北常の傍にガキを下ろす。
そしてその場を離れようとするが、
「ま、待ちなさいっ!」
当然俺の姿を捉えているガキは、素直に俺を逃がしてはくれない。
だが、そこでファインプレイをしたのが北常だ。
「失礼します、織音様!」
「ちょっ、ま、待ちなさい初秋!?」
またもや吸引しようとするドラゴンを見て、北常はガキを抱えてその場から階段の方へと走り始めた。
見れば四奈川たちも一緒に走っている。
よし、ナイスだ脳筋ちゃん!
俺はそのまま柱の陰に走って、一度スキルを切ってからまた発動させる。
これでドラゴンにはまた気配を気取られることはなくなった……のだが、
「今度はブレスかよぉぉぉぉぉっ!?」
吸引ではなく吐く方だったようで、あちらこちらに火球を吐き出してくる。
床や天井、柱などが次々と壊されていく。
ヤバイヤバイッ! このままじゃ生き埋めにされかねねえ!
こうなったら多少強引でもドラゴンを避けてコアを破壊しなければならない。
覚悟を決めて柱から飛び出すと、タイミングよく俺に向かって火球が飛んでくる。
なんとぉぉぉぉぉっ!?
アイツ、本当に俺のこと見えてねえんだろうなぁ!
確かに視線は合ってないので偶然なのだろうが、こうまで連発されると数打てば当たるを実現されそうだ。
俺は死角になっているはずのドラゴンの右側へと回る。
獲物を逃したことプラス右目の痛みからか、ドラゴンは好き勝手に暴れ回っている状態だ。
尻尾を振り回し、爪でそこら中を引っ掻いている。
少しでもかすればあの世生き間違いなしだろう。
ああもう、怖えなぁ! 逃げてぇぇぇ!
でも四奈川じゃないが、せっかく目の前にお目当てのものがあるんだ。ここで引き返すのはもったいなさ過ぎる。
……よしっ!
俺は暴れるドラゴンの猛威をギリギリで回避しながら扉へと迫っていく。
そしてもうすぐだと思った瞬間、こちらに向けて柱が倒れ込んできた。
ちょっ、それは無しだろっ!?
しかし俺の身体は意思とは勝手に動き、前方へと飛び込んでそのまま扉の中へと入ったのである。
…………あ、そっか。良い仕事をしてくれたぜ……《自動回避》。
マジでランクアップしといて良かった。……マジで。
俺は扉の中の突き当りにあるものをそこで初めて目にした。
階段があって、その上には台座が一つ。
台座の上には、見慣れたコアが……って、やけに大きくね?
面を上げてじっくりと見つめた。
確かに宙に浮かぶ発行体というところは今までとは変わらないのだが、三倍くらいの大きさがある。
ここまで大きなダンジョンだと、コアもまた相応に形を変えているのかもしれない。
俺は予備のサバイバルナイフをバッグから取り出し、コアに向けて構える。
「これでっ、攻略達成だぁっ!」
ナイフを全力で突き刺した瞬間、コアが風船のように一気に膨れ上がり弾け飛んだ。
すると背後でギャーギャーうるさかった声が止み、辺りの景色もまた空間が歪み始めていく。
恐らく元の旧校舎へと戻ろうとしているのだろう。
〝ダンジョンクリア コア撃破ボーナス獲得 《コアの遺産》を獲得〟
続けてレベルアップの報せも届くが、俺が注目したのは当然《コアの遺産》ゲットについてだ。
「やりぃ、手にしましたよヒオナさん」
「やったやないか、あんさん」
そこへどこに行っていたのか、エロ猫が戻ってきた。
すると台座の上にチョコンと両手で持てる程度の大きさの宝箱が出現したのだ。
金色に彩られた、いかにも高級感溢れる箱である。
「え、えっと……これが例の宝箱……だよな?」
「あんさん、とりあえず早う脱出しな。他の連中に見つかってまうで?」
おっと、そうだったな。
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