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第七話 しおんの秘密
「いやぁ、突然の訪問にもかかわらず、快く迎え入れてくださって感謝しますよ」
そんなちっとも感謝していない様子の重道おじさんとやら。
現在俺たちはしおんの家の中。その広大なリビングにて中央に座らされていた。
俺の隣にはいまだブルブルと怯えているしおんと――。
「よく言いますね、脅迫して無理矢理入って来たくせに」
不愉快さを隠そうともしない声音を放ち、重道おじさんを睨みつけるのは、しおんの姉である夜疋真鈴だ。
見た目はしおんをもう少し成長させた感じ。特筆すべきはいつも美しい着物を身に着けていることと、そのボリューミーな胸部であろうか。
着物なので締め付けているはずなのにもかかわらず、その大きさはまったく隠せていないほど。
男ならつい目が向かってしまうが、しおんに似てやはり美女なので、スタイルだけでなく顔立ちも良いという芸術品のような人だ。
「しかも……日六くんまで巻き込んで」
「あーそりゃあすみませんでしたなぁ。こっちも予想外といえば予想外だったんですわ。けどせっかくだから利用できるもんは利用しようと、ね」
「あなたみたいな人が同族かと思うと虫唾が走りますわ」
「カハハ、それはこっちのセリフですわ。こっちは同族のためにしてることです。それなのにあんた方は個人の感情を優先してるだけ。勝手に実家も飛び出してこ~んなとこに二人で住み、当主もカンカンになっておりますよ。さあ、一族にとってどっちが正解か間違ってるか、そんなもんは聞くまでもないですわ」
……さっきからちょいちょ気になる言い方だな。同族? 一族?
親戚……っていうのは間違いなさそうだけど、わざわざそんな言い方するか?
それに明らかにしおんも真鈴さんも、このオッサンのことを嫌ってるみてえだし。
まあ拉致した挙句に脅してんだから当然っちゃ当然だけど。
ただもう一つ気になったのは、実家を飛び出して二人で住んでいるって話だ。俺やソラネは、しおんから両親は滅多に家にいないけど一緒には住んでいるって聞いていた。
つまりあれはしおんが吐いた嘘ってことだ。
「ご、ごめんね……ろっくん。わたしのせいで……!」
すると震えた小声でしおんが謝ってきた。
「……気にすんなって」
「気にするよ。だってこんな……わたし……っ」
確かに友人が自分のせいで拉致されたとあっちゃ気が気でないよな。俺ももしこんなのが初めてだったら絶望に打ちひしがれているんだろう。
けどなぁ……向こうでも誘拐とかされたことあったし。拷問だって受けたこともあった。だがそれでも俺は、こっちの世界に戻るために必死こいて生き抜いてきた。
だからか、この程度のトラブルじゃ何も思わなくなってきている。
あー完全にマヒしてんな、俺の感覚。
ただこれでも苛立ってはいる。せっかく日常に戻ってきた矢先にこれだ。
でも絶対にしおんのせいなんかじゃないし、何があってもしおんを恨むこともない。
だって……すべては事件を引き起こした奴らが悪いに決まってるしな。
「あ? 何だ小僧……この儂を睨むとはいい度胸だな」
いけないいけない。つい殺意が溢れてしまったようだ。
「あーすんません。そっからでもアンタの息が臭くて、つい本能的に睨んでしまったんすよー」
「なっ……おいガキィ、お前立場分かってるのか?」
するとオッサンは懐から銃を取り出すと、俺に向かって銃口を向けた。
だがすぐに真鈴さんが俺の前に庇うように立つ。
「止めてください! この子は無関係でしょう!」
しまった。俺が適当なことをすると真鈴さんたちに迷惑がかかっちまうか。う~ん……。
「無関係……無関係ねぇ。そういやそのガキはしおんお嬢様と何やら親密なご関係でしたなぁ。……そのガキは、〝あのこと〟を知ってるんですかな?」
「「っ!?」」
オッサンの言葉に、しおんと真鈴さん両者の表情が強張った。
……あのこと?
しおんを見れば、さっきよりも明らかに怯えている。完全に〝あのこと〟のせいだろうが……。
何か言い難いことでもあるのか?
確かにしおんとは友達だと思っているが、何もかもを話し合うような親友という感じではない。そもそも女と男ということもあって、親密度でいえばソラネの方がしおんと仲が良いだろう。
だから俺が知らないことだってもちろんあって然るべきだが……。
どうにも彼女たちの様子を見ていたら、とても口にできるような隠し事ではない様子。
「その様子、やっぱ知らないか。おいガキ、何ならこの儂が教えてやるよ」
「止めてっ!」
急に声を発したのはしおんだ。こんな大声を聞いたのは初めてだ。
「お願いっ、止めて重道おじさん! それだけは……それだけは……お願い……っ」
そんなにしてまで隠す必要のあることらしい。
しかしそんなしおんの様子が堪らなく愉快なのか、オッサンはさらに笑みを深くする。
「何も知らず、それでも友人と言えるんですかなぁ」
「っ……それは……」
「重道おじさん、あなた……一体どういうつもりですか!」
「真鈴お嬢様は黙っててくださいや。それに、だ。そこのガキみたいな低俗な人間と、いつまで仲良しごっこを続ける気ですか? 情報では他にもいましたなぁ。秋津ソラネ、千司堂虎丸」
どうやらこっちの情報も筒抜けのようだ。
それよりも低俗な人間ってどゆこと?
「何も知らないガキどもをだまくらかして友情ごっこ。……反吐が出るわ」
「お願い…………止めて…………止めてぇ……っ」
しおんが涙を流し始める。それほどまでに隠し通したい秘密らしい。
しかし無情にもオッサンの口は真実を語ってしまう。
「いいかガキィ、よく聞け。お前が友達として接してるそこのお嬢様はなぁ――」
「や、止めてぇぇぇぇぇっ!」
「――――――――〝ヴァンパイア〟なんだよ」
そんなちっとも感謝していない様子の重道おじさんとやら。
現在俺たちはしおんの家の中。その広大なリビングにて中央に座らされていた。
俺の隣にはいまだブルブルと怯えているしおんと――。
「よく言いますね、脅迫して無理矢理入って来たくせに」
不愉快さを隠そうともしない声音を放ち、重道おじさんを睨みつけるのは、しおんの姉である夜疋真鈴だ。
見た目はしおんをもう少し成長させた感じ。特筆すべきはいつも美しい着物を身に着けていることと、そのボリューミーな胸部であろうか。
着物なので締め付けているはずなのにもかかわらず、その大きさはまったく隠せていないほど。
男ならつい目が向かってしまうが、しおんに似てやはり美女なので、スタイルだけでなく顔立ちも良いという芸術品のような人だ。
「しかも……日六くんまで巻き込んで」
「あーそりゃあすみませんでしたなぁ。こっちも予想外といえば予想外だったんですわ。けどせっかくだから利用できるもんは利用しようと、ね」
「あなたみたいな人が同族かと思うと虫唾が走りますわ」
「カハハ、それはこっちのセリフですわ。こっちは同族のためにしてることです。それなのにあんた方は個人の感情を優先してるだけ。勝手に実家も飛び出してこ~んなとこに二人で住み、当主もカンカンになっておりますよ。さあ、一族にとってどっちが正解か間違ってるか、そんなもんは聞くまでもないですわ」
……さっきからちょいちょ気になる言い方だな。同族? 一族?
親戚……っていうのは間違いなさそうだけど、わざわざそんな言い方するか?
それに明らかにしおんも真鈴さんも、このオッサンのことを嫌ってるみてえだし。
まあ拉致した挙句に脅してんだから当然っちゃ当然だけど。
ただもう一つ気になったのは、実家を飛び出して二人で住んでいるって話だ。俺やソラネは、しおんから両親は滅多に家にいないけど一緒には住んでいるって聞いていた。
つまりあれはしおんが吐いた嘘ってことだ。
「ご、ごめんね……ろっくん。わたしのせいで……!」
すると震えた小声でしおんが謝ってきた。
「……気にすんなって」
「気にするよ。だってこんな……わたし……っ」
確かに友人が自分のせいで拉致されたとあっちゃ気が気でないよな。俺ももしこんなのが初めてだったら絶望に打ちひしがれているんだろう。
けどなぁ……向こうでも誘拐とかされたことあったし。拷問だって受けたこともあった。だがそれでも俺は、こっちの世界に戻るために必死こいて生き抜いてきた。
だからか、この程度のトラブルじゃ何も思わなくなってきている。
あー完全にマヒしてんな、俺の感覚。
ただこれでも苛立ってはいる。せっかく日常に戻ってきた矢先にこれだ。
でも絶対にしおんのせいなんかじゃないし、何があってもしおんを恨むこともない。
だって……すべては事件を引き起こした奴らが悪いに決まってるしな。
「あ? 何だ小僧……この儂を睨むとはいい度胸だな」
いけないいけない。つい殺意が溢れてしまったようだ。
「あーすんません。そっからでもアンタの息が臭くて、つい本能的に睨んでしまったんすよー」
「なっ……おいガキィ、お前立場分かってるのか?」
するとオッサンは懐から銃を取り出すと、俺に向かって銃口を向けた。
だがすぐに真鈴さんが俺の前に庇うように立つ。
「止めてください! この子は無関係でしょう!」
しまった。俺が適当なことをすると真鈴さんたちに迷惑がかかっちまうか。う~ん……。
「無関係……無関係ねぇ。そういやそのガキはしおんお嬢様と何やら親密なご関係でしたなぁ。……そのガキは、〝あのこと〟を知ってるんですかな?」
「「っ!?」」
オッサンの言葉に、しおんと真鈴さん両者の表情が強張った。
……あのこと?
しおんを見れば、さっきよりも明らかに怯えている。完全に〝あのこと〟のせいだろうが……。
何か言い難いことでもあるのか?
確かにしおんとは友達だと思っているが、何もかもを話し合うような親友という感じではない。そもそも女と男ということもあって、親密度でいえばソラネの方がしおんと仲が良いだろう。
だから俺が知らないことだってもちろんあって然るべきだが……。
どうにも彼女たちの様子を見ていたら、とても口にできるような隠し事ではない様子。
「その様子、やっぱ知らないか。おいガキ、何ならこの儂が教えてやるよ」
「止めてっ!」
急に声を発したのはしおんだ。こんな大声を聞いたのは初めてだ。
「お願いっ、止めて重道おじさん! それだけは……それだけは……お願い……っ」
そんなにしてまで隠す必要のあることらしい。
しかしそんなしおんの様子が堪らなく愉快なのか、オッサンはさらに笑みを深くする。
「何も知らず、それでも友人と言えるんですかなぁ」
「っ……それは……」
「重道おじさん、あなた……一体どういうつもりですか!」
「真鈴お嬢様は黙っててくださいや。それに、だ。そこのガキみたいな低俗な人間と、いつまで仲良しごっこを続ける気ですか? 情報では他にもいましたなぁ。秋津ソラネ、千司堂虎丸」
どうやらこっちの情報も筒抜けのようだ。
それよりも低俗な人間ってどゆこと?
「何も知らないガキどもをだまくらかして友情ごっこ。……反吐が出るわ」
「お願い…………止めて…………止めてぇ……っ」
しおんが涙を流し始める。それほどまでに隠し通したい秘密らしい。
しかし無情にもオッサンの口は真実を語ってしまう。
「いいかガキィ、よく聞け。お前が友達として接してるそこのお嬢様はなぁ――」
「や、止めてぇぇぇぇぇっ!」
「――――――――〝ヴァンパイア〟なんだよ」
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