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 ギルドでは数々の依頼を受領することができるのだが、その内容は千差万別で、中には子守りや草むしりなんていうのもあるのだ。
 達成すると報酬金がもらえるのだが、無論簡単な依頼――クエストほど報酬金は少ない。草むしりなどは、ランクも最低のFに位置する。子供の小遣い程度しか稼げはしないだろう。

 しかし最高ランクのSSSランクのクエストをこなすと、その報酬金は莫大。中には十億以上もの報酬を出すというものまで存在する。

 またここではギルドに依頼することもできる。
 本日やってきたのは、【楽あり亭】のアルバイト募集が目的。ここで張り紙を出してもらい、暇な“冒険者”でもいれば雇うつもりだ。

 一般人でも問題ないので、もちろん街の中にも張り紙はする。ただ“冒険者”でもいいので、募集をするということだ。こうしてギルドに公開してもらえれば、より店の宣伝にもなるので一石二鳥になる。

「――依頼内容承りました。では仲介料として一千ジェマを頂きます」

 受付嬢に金を手渡して、あとはクエストを受けてくれる者が出るまで待つだけ。

「よし、んじゃ……と、せっかくだし、何かクエストでも受けてみるか?」
「はい! 久しく戦闘も経験していませんので、このままだと身体が鈍っちゃいます。つまり是非ともクエストをしたいです!」
「ん~けどせっかくの休みだし、軽めのものにしておこっか」
「いいえ! “冒険者”としてのランクも上げたいので、できれば高ランクのクエストを受けたいです!」
「……いいの?」
「もちろんです! つまり何でもこいです!」
「あはは、オッケー、んじゃ……」

 オレはいろいろなクエストの張り紙がされている掲示板へと移動して見回していると……。

「……お! これなかなかいいんじゃねーかな?」
「どれですか?」
 
 ――フレイムファング討伐 三体――

「クエストランクは……Dですか。大丈夫そうですね」
「うん。これならEランクのポアムでも受けられるし、オレもついてるから何かあっても問題ないからね」

 オレのランクは――C。パーティを組んでいるので、チームランクとしてはCであり、問題なく受けられるクエストだ。

「では参りましょう、イックウ様!」

 彼女の言葉に頷くと、その張り紙を受け付けに持っていき受領させてもらった。
 街の外に出る前に、オレは《ステータス》画面を開く。

「あ、また《ステータス》画面とやらを見ているんですか?」
「うん、そうだよ」
「いいなぁ。わたしにもそういうのがあればいいんですけど」

 この世界の住人には、どうやらゲームのような《ステータス》画面はないようだ。その代わりに、ギルドで発行してもらうギルドカードに、《ステータス》が刻まれるのだが、その情報量は圧倒的にオレの《ステータス》画面の方が上である。
 オレは一応アイテムのチェックをしてから、何も問題ないことを確認した後で先に進むようにしているのだ。
 回復薬なども十分にあることを確認すると、ポアムと一緒に街の外へと出て行く。

「フレイムファングってのは、ここから二キロほど離れた岩場に生息してる。基本的に雄と雌で行動するモンスターだな」
「でもこうしてイックウ様と一緒にクエストするのも久しぶりですね。最近じゃお店が忙しくてクエストなんて受けられませんでしたから」
「そうだよなぁ。レベルを上げるためにも、定期的にこうやってバトル経験をしなきゃなんねーんだよな」

 オレはレベルがカンストしているから意味がないが、まだ20レベルに達していないポアムは存分に育て甲斐がある。呑み込みも早いし、根性も度胸もあるので、教える側としては模範的な生徒なのだ。

「はぁ~、良い天気ですから、お弁当とか持ってくれば良かったですね」
「お、それいいな。今度オリク婆も誘ってピクニックにでも行くか」
「それ採用です! つまりとっても楽しみです!」

 こんな大空の下で食べる弁当など至福の時を感じさせてくれるだろう。大自然に囲まれながら、気の合う者たちと一緒に食事。日本では考えられなかった光景だが、いつか実現したいと本気で思う。
 しばらく談笑しながらだだっ広い草原を歩いていると、目の前に岩場が見えてきた。

「あそこ、みたいだな」
「はい!」

 少し緊張感を持ち始めるポアム。彼女にとってはたかがDランクのモンスターといえど、油断すれば致命傷になるダメージを与えられるはず。

「今回もできるだけ、ポアムが前衛で戦ってみて、危なくなった時はオレが入るな」
「了解です! つまり全力で頑張ります!」

 彼女の意気込みを聞き、オレも全身の感覚を広げていく。何かイレギュラーな事態が起きても即座に対応できるように。
 そうして岩場に入ったオレたちだったが、不意にどこかから戦闘をしているような音が聞こえてきた。


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