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「この度は、誠に感謝致す!」
地面だというのに、正座をしてしっかり礼を言ってくる少女。そんなことをされれば、逆にこちらがいたたまれなくなってしまう。
「あ、いや、別に困った時はお互い様ってことで」
「そ、そうです! 無事で良かったです!」
「誠に忝(かたじけな)いでござる! せっちゃ……っ」
「「……せっちゃ?」」
オレとポアムが同時に首を傾げる。
「えと……もしかして何かのお茶の種類とか? 喉乾いてる? 何か出そうか?」
オレのここにきての気遣い。なかなか空気を読んだナイスな発言だと思った。しかし何故か彼女は、顔を俯かせながら耳を真っ赤にしてプルプル震えている。
……えっと、オレなんかマズイこと言った?
なら“せっちゃ”とは何だろうかと考えていると、
「おほん! せ、拙者はヒノデと申す者でござる! 歳は十四!」
…………ああ、噛んだだけなんだね。
それは思いつかなかった。一応心の中でヒノデという少女に謝っておいた。
「え、えっと、オレはイックウ。こっちは……」
「わたしはポアムと言います!」
「これはご丁寧に忝いでござる!」
「ところで、一人でこんなところに、何かクエストかな?」
「い、いえ! 拙者、武者修行中でして」
「む、武者修行? “冒険者”じゃないの?」
「あ、一応登録はしているでござる」
「そうなんだ。オレたちも“冒険者”で、ここにはクエストに来たんだよ」
「なるほど。先程の手際、さぞご高名である方と存知上げますが」
「いやいや、まだまだCランクの駆け出しだよ」
「何と!? あのような強さをお持ちでござるのに!?」
「ま、まあ、登録して間もないからね。そんなことより、そろそろ正座、止めにしない?」
小さい子一人だけ正座させているみたいで居心地が悪い。
「で、ですが命を救われた者としては……」
「そういうのはいいって。だから、ほら」
「……畏まったでござる」
ようやくその場で立ち上がってくれる。
「でも、本当に危ないところでしたよね」
ポアムがホッと肩を竦めながら言うと、ヒノデが気恥ずかしそうに目を伏せる。
「拙者もまだまだ修行が足らないでござる。あれしきのことで不覚を取るとは」
「ヒノデさんはランクは幾つですか?」
「拙者はDランクでござる」
「ん……なら仕方ないと思うよ。だって翡翠蝶は単独でDランク。あれだけの群れを相手にした場合、その討伐ランクは一つ上がるし、君一人じゃ荷が重いのは確かだしね」
「そう、なのでござるか?」
「そうなのでござるよ」
「ふふ、移ってますよ、イックウ様」
「あ……」
ついござる口調になってしまい、その場に笑いが生まれる。
「それよりも、イックウ殿!」
「ん? 何?」
「拙者はイックウ殿に惚れましたでござる!」
「……はい?」
「え……ええェェェェェェッ!?」
いやいや、何でそこでオレよりも驚いているのでしょうか、ポアムさん。
「ほ、惚れ惚れ惚れ、惚れたってどういうことですかっ!」
「言葉の通りでござる。先程のイックウ殿の実力。素晴らしいものでござった。一瞬にしてモンスターを倒すのもそうでござるが、拙者も抱えられたのにまったく気づかなかったでござる。す、少し恥ずかしかったでござる」
頬を染めながらモジモジとするヒノデ。
「そ、それってお姫様抱っこをされたからですか!? つ、つまり責任を取れということですか!?」
「ちょ、落ち着けってポアム。食い気味半端なくない!?」
何故そこまでポアムが慌てるのかよく分からない。
「えっと、惚れたってオレの腕に、だよね?」
「うむ、でござる」
「え……あ、そういうことですか……ふぅ」
オレは何となくそうではないかなとは思っていた。ゲーム時代でも、こういうことはよくあった。なまじ実力が高いので、初心者たちに指導を請われたりしたのだ。まあ、いきなり惚れたと言われたのはさすがに初めてではあったが。
え? 恋愛的な意味で解釈しなかったのかって? ……するわけがないでしょ。だってオレだし。初見で惚れられるなんてことは決してないだろう。そこまで自惚れることはない。
「よければご指南頂ければ嬉しいのでござるが」
「あ~それは難しいかな」
「ダ、ダメなのでござるか?」
そんな捨てられた子犬みたいな顔しないでほしい。
地面だというのに、正座をしてしっかり礼を言ってくる少女。そんなことをされれば、逆にこちらがいたたまれなくなってしまう。
「あ、いや、別に困った時はお互い様ってことで」
「そ、そうです! 無事で良かったです!」
「誠に忝(かたじけな)いでござる! せっちゃ……っ」
「「……せっちゃ?」」
オレとポアムが同時に首を傾げる。
「えと……もしかして何かのお茶の種類とか? 喉乾いてる? 何か出そうか?」
オレのここにきての気遣い。なかなか空気を読んだナイスな発言だと思った。しかし何故か彼女は、顔を俯かせながら耳を真っ赤にしてプルプル震えている。
……えっと、オレなんかマズイこと言った?
なら“せっちゃ”とは何だろうかと考えていると、
「おほん! せ、拙者はヒノデと申す者でござる! 歳は十四!」
…………ああ、噛んだだけなんだね。
それは思いつかなかった。一応心の中でヒノデという少女に謝っておいた。
「え、えっと、オレはイックウ。こっちは……」
「わたしはポアムと言います!」
「これはご丁寧に忝いでござる!」
「ところで、一人でこんなところに、何かクエストかな?」
「い、いえ! 拙者、武者修行中でして」
「む、武者修行? “冒険者”じゃないの?」
「あ、一応登録はしているでござる」
「そうなんだ。オレたちも“冒険者”で、ここにはクエストに来たんだよ」
「なるほど。先程の手際、さぞご高名である方と存知上げますが」
「いやいや、まだまだCランクの駆け出しだよ」
「何と!? あのような強さをお持ちでござるのに!?」
「ま、まあ、登録して間もないからね。そんなことより、そろそろ正座、止めにしない?」
小さい子一人だけ正座させているみたいで居心地が悪い。
「で、ですが命を救われた者としては……」
「そういうのはいいって。だから、ほら」
「……畏まったでござる」
ようやくその場で立ち上がってくれる。
「でも、本当に危ないところでしたよね」
ポアムがホッと肩を竦めながら言うと、ヒノデが気恥ずかしそうに目を伏せる。
「拙者もまだまだ修行が足らないでござる。あれしきのことで不覚を取るとは」
「ヒノデさんはランクは幾つですか?」
「拙者はDランクでござる」
「ん……なら仕方ないと思うよ。だって翡翠蝶は単独でDランク。あれだけの群れを相手にした場合、その討伐ランクは一つ上がるし、君一人じゃ荷が重いのは確かだしね」
「そう、なのでござるか?」
「そうなのでござるよ」
「ふふ、移ってますよ、イックウ様」
「あ……」
ついござる口調になってしまい、その場に笑いが生まれる。
「それよりも、イックウ殿!」
「ん? 何?」
「拙者はイックウ殿に惚れましたでござる!」
「……はい?」
「え……ええェェェェェェッ!?」
いやいや、何でそこでオレよりも驚いているのでしょうか、ポアムさん。
「ほ、惚れ惚れ惚れ、惚れたってどういうことですかっ!」
「言葉の通りでござる。先程のイックウ殿の実力。素晴らしいものでござった。一瞬にしてモンスターを倒すのもそうでござるが、拙者も抱えられたのにまったく気づかなかったでござる。す、少し恥ずかしかったでござる」
頬を染めながらモジモジとするヒノデ。
「そ、それってお姫様抱っこをされたからですか!? つ、つまり責任を取れということですか!?」
「ちょ、落ち着けってポアム。食い気味半端なくない!?」
何故そこまでポアムが慌てるのかよく分からない。
「えっと、惚れたってオレの腕に、だよね?」
「うむ、でござる」
「え……あ、そういうことですか……ふぅ」
オレは何となくそうではないかなとは思っていた。ゲーム時代でも、こういうことはよくあった。なまじ実力が高いので、初心者たちに指導を請われたりしたのだ。まあ、いきなり惚れたと言われたのはさすがに初めてではあったが。
え? 恋愛的な意味で解釈しなかったのかって? ……するわけがないでしょ。だってオレだし。初見で惚れられるなんてことは決してないだろう。そこまで自惚れることはない。
「よければご指南頂ければ嬉しいのでござるが」
「あ~それは難しいかな」
「ダ、ダメなのでござるか?」
そんな捨てられた子犬みたいな顔しないでほしい。
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