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クロメくんたちが出て行って約一時間ほど経過した。
私はあれからずっとロニカさんと一緒に治癒魔術をかけ続けてきたが、さすがに一時間ぶっ通しはキツイ。
元々治癒魔術というのはかなりの魔力を消耗してしまう。すでに私の全身は虚脱感が襲い汗が大量に吹き出している。
こ、このままではいずれ私の魔力は底をついてしまう……。
「――――ねえ、神父」
「ロニカ……さん?」
「しんどいなら無理しないで休んでてもいいよ」
「え?」
「神父が気絶したりしたらヤバイ時に対応できなくなるかもしれないし、あとはロニカに任しとけば?」
「し、しかし一人では負担も増大してしまいますよ?」
「んー別に大丈夫だと思うよ。もうすぐクロメも帰ってくると思うし、それまではさ」
今までともに治癒魔術をかけ続けてこられたから引き延ばすことができた時間。ここで私がリタイアすれば、私がそれまで負担していたエネルギーをすべて彼女一人が背負わないといけない。
いや、待ってください……ロニカさん、何故あなたはそんなにも涼しげな顔をしているんですか?
集中し過ぎていて気付かなかったが、よく見れば、ロニカさんの表情は治療を始めた時と何ら変わりはない。
時折面倒そうに欠伸までするほどだ。
その様子に思わず気が抜けて魔術を解いてしまったが、すぐにロニカさんから発せられる魔力が膨れ上がり、私の分まで賄い始めた。
それでもまだ余裕すら感じる平然とした彼女の姿に私は呆けてしまう。
い、一体彼女にはどれほどの……っ!?
私も生まれつき魔力が多い。そもそも常人よりも魔力量が多いからこそ、治癒魔術の才があったのだ。
それでも治癒魔術をかけ続ければ二人で負担を分け合ったとしても一時間が限界。それなのに、彼女はいまだに汗の一粒すらかいていない。
ロニカさんはあのイスタリ家の血筋。……これが脈々と受け継がれる圧倒的な才の違いですか。
この小さな身に秘められた大いなる力に、つい恐ろしさを感じて身震いしてしまう。
現在彼女が行使している魔術に使用する魔力は、常人ならば数分とかからずに枯渇するほどだ。
きっと彼女ならこの状態のまま一時間くらい耐えられるかもしれない。
それが頼もしくもあるが、やはり怖いと思ってしまう。
大き過ぎる器、強過ぎる力をここまでハッキリと実感するのは初めてではないが、自分よりも遥かに歳が下の若者に、こうまで力の差を見せつけらるとは開いた口が塞がらない。
は、はは……羨ましいものですね、血筋というのは……。
「で、では少しお任せします、ね」
「ん、りょ~か~い」
そんな間延びした返事を聞いてから――十分後。
扉を開いて姿を見せたのはジャンクさんだった。
手ぶらで現れた彼を見て、正直絶望を感じてしまう。マインさんと抱き合う彼から、すべての素材をクロメくんに預けているという聞いてホッとする。
しかしやはり難点はあり、思った通り《赤百合》が見つからないとのこと。
何とか花屋で最近購入した者たちを探し回ったそうだが、ジャンクさんが訪ねた人たちからは手に入れられなかったのだという。
あとはクロメくんだけが頼り。
ここにいる誰もがもう祈るしかなかった。今から遠出をして《赤百合》を探したとしても、さすがに一日以上はかかってしまう。海を渡る必要があるので、近くの陸地まで向かい街を探索ということになれば最低でもそれくらいはかかる。
いくら何でもこの強度の魔術を一日以上かけ続けることはロニカさんでも無理。彼女もそれはさすがに無理だと口にしていた。
こういう時、転移魔術が使える『魔族』が妬ましく思ってしまう。その力あれば様々な場所へ瞬時に赴くことが可能だから。
クロメくん……もう君だけが最後の綱です。どうか……お願いします!
そう願い、少しでも時間を引き延ばせればと思ってロニカさんの隣に立ち、再度魔力を絞り出し魔術を行使しようとした矢先――
「――――お待たせしましたぁ!」
待ちに待った声が部屋中に響いた。
私はあれからずっとロニカさんと一緒に治癒魔術をかけ続けてきたが、さすがに一時間ぶっ通しはキツイ。
元々治癒魔術というのはかなりの魔力を消耗してしまう。すでに私の全身は虚脱感が襲い汗が大量に吹き出している。
こ、このままではいずれ私の魔力は底をついてしまう……。
「――――ねえ、神父」
「ロニカ……さん?」
「しんどいなら無理しないで休んでてもいいよ」
「え?」
「神父が気絶したりしたらヤバイ時に対応できなくなるかもしれないし、あとはロニカに任しとけば?」
「し、しかし一人では負担も増大してしまいますよ?」
「んー別に大丈夫だと思うよ。もうすぐクロメも帰ってくると思うし、それまではさ」
今までともに治癒魔術をかけ続けてこられたから引き延ばすことができた時間。ここで私がリタイアすれば、私がそれまで負担していたエネルギーをすべて彼女一人が背負わないといけない。
いや、待ってください……ロニカさん、何故あなたはそんなにも涼しげな顔をしているんですか?
集中し過ぎていて気付かなかったが、よく見れば、ロニカさんの表情は治療を始めた時と何ら変わりはない。
時折面倒そうに欠伸までするほどだ。
その様子に思わず気が抜けて魔術を解いてしまったが、すぐにロニカさんから発せられる魔力が膨れ上がり、私の分まで賄い始めた。
それでもまだ余裕すら感じる平然とした彼女の姿に私は呆けてしまう。
い、一体彼女にはどれほどの……っ!?
私も生まれつき魔力が多い。そもそも常人よりも魔力量が多いからこそ、治癒魔術の才があったのだ。
それでも治癒魔術をかけ続ければ二人で負担を分け合ったとしても一時間が限界。それなのに、彼女はいまだに汗の一粒すらかいていない。
ロニカさんはあのイスタリ家の血筋。……これが脈々と受け継がれる圧倒的な才の違いですか。
この小さな身に秘められた大いなる力に、つい恐ろしさを感じて身震いしてしまう。
現在彼女が行使している魔術に使用する魔力は、常人ならば数分とかからずに枯渇するほどだ。
きっと彼女ならこの状態のまま一時間くらい耐えられるかもしれない。
それが頼もしくもあるが、やはり怖いと思ってしまう。
大き過ぎる器、強過ぎる力をここまでハッキリと実感するのは初めてではないが、自分よりも遥かに歳が下の若者に、こうまで力の差を見せつけらるとは開いた口が塞がらない。
は、はは……羨ましいものですね、血筋というのは……。
「で、では少しお任せします、ね」
「ん、りょ~か~い」
そんな間延びした返事を聞いてから――十分後。
扉を開いて姿を見せたのはジャンクさんだった。
手ぶらで現れた彼を見て、正直絶望を感じてしまう。マインさんと抱き合う彼から、すべての素材をクロメくんに預けているという聞いてホッとする。
しかしやはり難点はあり、思った通り《赤百合》が見つからないとのこと。
何とか花屋で最近購入した者たちを探し回ったそうだが、ジャンクさんが訪ねた人たちからは手に入れられなかったのだという。
あとはクロメくんだけが頼り。
ここにいる誰もがもう祈るしかなかった。今から遠出をして《赤百合》を探したとしても、さすがに一日以上はかかってしまう。海を渡る必要があるので、近くの陸地まで向かい街を探索ということになれば最低でもそれくらいはかかる。
いくら何でもこの強度の魔術を一日以上かけ続けることはロニカさんでも無理。彼女もそれはさすがに無理だと口にしていた。
こういう時、転移魔術が使える『魔族』が妬ましく思ってしまう。その力あれば様々な場所へ瞬時に赴くことが可能だから。
クロメくん……もう君だけが最後の綱です。どうか……お願いします!
そう願い、少しでも時間を引き延ばせればと思ってロニカさんの隣に立ち、再度魔力を絞り出し魔術を行使しようとした矢先――
「――――お待たせしましたぁ!」
待ちに待った声が部屋中に響いた。
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