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第十五話
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誰もがハクイの言い放った発言に対し絶句していた。
そして最初に口火を切ったのは、ニッグだった。
「せ、先生……た、退学とは……?」
「ん? 文字通りこの学院からの追放ということですよ?」
「そ、そんな! たかが〝新人祭〟で最下位になっただけで退学なんて!」
ニッグの言葉を皮切りに、周りもざわざわと不満を明らかにしていく。
ハクイが「はいはい、静かに~」と手を叩く。
「おほん。え~いいですか? 実は学院にとっても【ジェムストーン】の扱いに困ってたりするんですよね。毎年毎年、結果も出せずに、勇者として卒業する者もいない」
これは驚いた。まさか誰一人勇者として巣立った者がいないとは……。
「それでもこれも人生経験だからと、温情で三年間面倒を見てきたのです。ですがそんな僅かながらの期待にも応えられない者ばかり。故に学院は今年からある措置を取ることにしたのです」
一息置いて、焦燥感にかられる生徒たちを見つめながら、静かにハクイが語る。
「〝新人祭〟にて、最下位になれば代表者を退学にするという措置を」
「ど、どうしてそのような理不尽な措置を!」
ニッグが皆の代表となって質問を投げかける。
「そうすれば絶対的な危機感を覚えるでしょう? そして次は自分かもしれないと思い、必死に勉強や鍛錬に励むしかなくなる。退学が怖ければ、ね」
「そ、それは……つまり、退学された代表者は見せしめ……ってことですか?」
「え~まあ、その通りですね」
「そんなっ! 今年からなんて、そんなのあんまりですっ!」
「仕方ないんですよ。それがこの学院のルールですから。それにこの世界は実力主義。才能のない者に費やす時間だって無意味なんですよねぇ」
とんでもないことを告げられたものだ。
そしてハクイは続ける。
「さて、ここで聞きましょう。代表者になる者は手を挙げてください」
誰も手を挙げない。
あの血気盛んだったバッザですら強張った顔のまま固まってしまっている。
無理もない。最下位にならなかったらいいといっても、今までの【ジェムストーン】の戦績はすべて最下位だ。
そして今年は粒揃いらしく、他の四クラスには《銀魔》がいる。
このクラスには《赤魔》すらおらず、序列的に見れば勝ち目などないに等しい。
絶対勝てると思えないのに、わざわざ代表者になる愚かな者はいないだろう。何せ負けたら退学になるのだから。
しかしそんな中――。
「――はい!」
一人、手を挙げた者がいた。
「ほほう。あなたが参加しますか――ヒナテさん?」
ハクイが薄く微笑んだような表情を見せつつ、彼女の名を呼んだ。
当然オレ以外の生徒たちは一様に度肝を抜かれたような様子である。
何せオレを抜かせば、最弱、劣等生と呼ばれる一番将来性を求められない人材なのだ。
それなのに迷うことなく手を挙げている姿は、誰の目にも〝正気ではない〟と捉えられただろう。
……ふっ、そうでなくてはな。
だがオレだけは、彼女の無謀っぷりに感心していた。
そして――。
「ならばオレも出よう」
今度もまたヒナテと同じ、いや、それ以下の扱いであろうオレが名乗りを上げる。
「これは頼もしい。今の話を聞いてもなお揺るがずに己の意志を貫きますか」
初めてハクイが楽しそうな表情を見せる。だがその時だ。
「お、俺だって逃げるわけにはいかねえっ!」
意外にも、先程怯えを見せていたバッザが手を挙げた。
「おや、三人ですか。では代表者決定戦でもして決めるしかないですかね」
また面倒なことになりそうだが……。
「くっ! ……僕は……」
「おいこらもやし野郎! 自分でトップとか抜かしてそれかよ! それでもローダンス様の推薦者か!」
「うぐっ……だ、だけど……」
それでもやはりニッグは怖いのだろう。なまじ推薦を受けているからこそ、もし退学にでもなったら顔向けができなくなるのは必至なのだから。
「はんっ! 結局テメエは口だけってこった! 役にも立たねえ《緑魔》は、そこでウジウジ貝に閉じこもってろ!」
「――っ!? ……今、何て言った?」
するとニッグの様子が変わった。
顔つきが怒りに塗れ、まるでバッザのような気迫すら感じるものになっている。
「僕は決して役立たずなんかじゃないっ! 今の発言を取り消せっ!」
口調も乱暴になっている。どうやらこっちが彼の素のようだ。
「へぇ、そんな顔もできるんじゃねえか。おもしれぇ。だったらテメエも代表者決定戦に出てこいや!」
「当然だバッザ・ケーニッヒ! いや、君ら三人ともに、格の違いってもんを見せつけてやるっ!」
四人が席から立ち上がり、戦う意志を見せつける。
「ふむ。え~他にはいないようですね。ではそうですね……二週間。二週間後に代表者決定戦を行いましょう。四人とも、それで構いませんね?」
オレたちは頷く。
「決定戦の内容はバトルロイヤル方式でいいでしょう。四人とも、勝利を得たいならこの二週間、存分に鍛え上げることです」
まるで予想だにしなかった流れになったが、退屈はしなさそうだ。
そうして入学早々、ワイルドなイベントに参加することになったのである。
「――ほほう、それはまた慌ただしいことになったものだね」
初めての授業が終わった日の夜。
オレは夕食時、クーに今日あったことを伝えていた。
「しかし懐かしいね。私の時も盛り上がったものだよ、〝新人祭〟は」
「む? そういえばクーも卒業生だったのだな」
「まあな。卒業して勇者としてしばらく活動していたけれど、結局こうして家の事業を引き継いでいるんだから分からないものだね」
「へぇ、確かに今のクーを見てると、勇者なんかやってたように見えないな」
「はは。私にもただ前しか見ずに突っ走ってた時代はあったさ。けれどいくら《赤魔》といえど、どうも私は争いごとに向かなくてね」
それで限界を感じて勇者を早くに引退し、父の後を継いだのだと彼は言う。
「そう考えると妻は本当に立派だよ。今もなお勇者としての任を請け負っているのだから」
勇者にも様々な役目がある。
当然前線で戦い魔人どもを退ける役目が主な勇者業だ。しかしクーの妻のように後進育成のために、自分の持つ技や教えを伝え育てる任務を勇者業とする者もいる。
また壊滅した村や町の復興支援、遺跡や未開拓の地へ出向き、人間の暮らしの発展のために尽力するのも仕事の一つだ。
だから今では勇者のことを『何でも屋』と捉える者もいる。
ただ今思えば、トーカもただ魔人やオレと戦うだけではなく、復興支援や後進育成にも力を入れていたことを思い出す。
それを考えれば、ただ戦うだけが勇者ではないのかもしれない。
「しかしなるほど。あの子がいつにもまして燃えているのはそのせいか」
「クーは〝新人祭〟で代表として戦ったのか?」
「いやいや、私よりも優秀な者が出たよ。その者は《銀魔》でね。圧倒的な力で全員を薙ぎ倒してあっさりと優勝をかっさらったんだ」
「その者? 一人だけなのか?」
「ん? ああ、そういえば今年は二人が代表なんだってね。私の頃は代表は一人で、トーナメント形式で争っていたなぁ」
「ほう。その圧倒的な《銀魔》は今でも?」
「ん、『偉大な勇者』として現役で戦っているさ」
「『偉大な勇者』……か」
オレが何気なく呟いた言葉にクーは食いついてきて、「どうかしたかい?」と聞いてきたので、ヒナテがクラスメイト達に宣言したことを教えた。
「なるほど。あの子がそんなことを……」
どこか物寂し気な、それでいて嬉しそうでもある複雑な笑みを彼は浮かべる。
「きっとまだあの子との約束を守ろうとしているんだろうね」
「あの子?」
「……いや、止めておこう。それは私が口にすることではないな。できればあの子から聞いてやってくれ」
どうやらヒナテには『偉大な勇者』になる決意をした重大な過去があるようだ。
そこで脳裏を過ぎるのは、講堂の裏手で聞いたヒナテの呟きだ。
『こんなことで諦めるわけにはいかないわ。そうよね――ミミ』
もしかしたら何か関係しているかもしれない。
まあ教えろといったところで、重大な過去を他人のオレに素直に教えてくれるとは思えないが。それにアイツの過去にそれほど興味があるわけでもないし。
「聞けば今年は豊作らしいじゃないか。例年以上に〝新人祭〟は盛り上がるだろうね」
「まあ《銀魔》が四人もいるらしいからな」
「違うぞ」
「む?」
「君がいるからだ」
「…………」
「それにあの子だって代表に選ばれるかもしれない」
「信じているんだな、娘のことを」
「娘を信じない親などいないさ。それに君が傍にいてくれる」
「随分と過大評価するものだな」
「期待してしまうさ。あのギル様のお孫さんなのだから」
本当にコイツのジイへの信頼度が半端ない。明らかにカンストするどころか限界突破している。もしギルバッド教なるものがあったら、間違いなくズブズブの信者になっていることだろう。
「迷惑をかけるかもしれないが、あの子のことよろしく頼む」
「……ま、善処はしてやる」
「はは、頼むよ。ところで最近キナ臭い噂が飛び交っていてね」
「噂?」
「ああ。王都の近くを魔人が徘徊しているという、ね」
「へぇ、魔人ねぇ」
「君は見たことあるんだったかな?」
「……見たことはある」
実際にその魔人を束ねていましたとは口が裂けても言えそうにない。
何せ奴らの頂点に立つ存在だったのだから。
「奴らは狡猾で暴力的だ。もしかしたら王都に攻め入ってくる可能性も否定できない」
「王都を護衛する勇者どもに任せたらいいんじゃないか?」
「当然配備されているはずさ。けれど網の目というものは残念ながら存在する」
その網の目を潜って、王都に入り込んでくる奴らもいるというわけか。
「もしそれらしい人物を見つけたら下手に手を出さないように」
「……了解だ」
一応そう言っておくことにした。
そして最初に口火を切ったのは、ニッグだった。
「せ、先生……た、退学とは……?」
「ん? 文字通りこの学院からの追放ということですよ?」
「そ、そんな! たかが〝新人祭〟で最下位になっただけで退学なんて!」
ニッグの言葉を皮切りに、周りもざわざわと不満を明らかにしていく。
ハクイが「はいはい、静かに~」と手を叩く。
「おほん。え~いいですか? 実は学院にとっても【ジェムストーン】の扱いに困ってたりするんですよね。毎年毎年、結果も出せずに、勇者として卒業する者もいない」
これは驚いた。まさか誰一人勇者として巣立った者がいないとは……。
「それでもこれも人生経験だからと、温情で三年間面倒を見てきたのです。ですがそんな僅かながらの期待にも応えられない者ばかり。故に学院は今年からある措置を取ることにしたのです」
一息置いて、焦燥感にかられる生徒たちを見つめながら、静かにハクイが語る。
「〝新人祭〟にて、最下位になれば代表者を退学にするという措置を」
「ど、どうしてそのような理不尽な措置を!」
ニッグが皆の代表となって質問を投げかける。
「そうすれば絶対的な危機感を覚えるでしょう? そして次は自分かもしれないと思い、必死に勉強や鍛錬に励むしかなくなる。退学が怖ければ、ね」
「そ、それは……つまり、退学された代表者は見せしめ……ってことですか?」
「え~まあ、その通りですね」
「そんなっ! 今年からなんて、そんなのあんまりですっ!」
「仕方ないんですよ。それがこの学院のルールですから。それにこの世界は実力主義。才能のない者に費やす時間だって無意味なんですよねぇ」
とんでもないことを告げられたものだ。
そしてハクイは続ける。
「さて、ここで聞きましょう。代表者になる者は手を挙げてください」
誰も手を挙げない。
あの血気盛んだったバッザですら強張った顔のまま固まってしまっている。
無理もない。最下位にならなかったらいいといっても、今までの【ジェムストーン】の戦績はすべて最下位だ。
そして今年は粒揃いらしく、他の四クラスには《銀魔》がいる。
このクラスには《赤魔》すらおらず、序列的に見れば勝ち目などないに等しい。
絶対勝てると思えないのに、わざわざ代表者になる愚かな者はいないだろう。何せ負けたら退学になるのだから。
しかしそんな中――。
「――はい!」
一人、手を挙げた者がいた。
「ほほう。あなたが参加しますか――ヒナテさん?」
ハクイが薄く微笑んだような表情を見せつつ、彼女の名を呼んだ。
当然オレ以外の生徒たちは一様に度肝を抜かれたような様子である。
何せオレを抜かせば、最弱、劣等生と呼ばれる一番将来性を求められない人材なのだ。
それなのに迷うことなく手を挙げている姿は、誰の目にも〝正気ではない〟と捉えられただろう。
……ふっ、そうでなくてはな。
だがオレだけは、彼女の無謀っぷりに感心していた。
そして――。
「ならばオレも出よう」
今度もまたヒナテと同じ、いや、それ以下の扱いであろうオレが名乗りを上げる。
「これは頼もしい。今の話を聞いてもなお揺るがずに己の意志を貫きますか」
初めてハクイが楽しそうな表情を見せる。だがその時だ。
「お、俺だって逃げるわけにはいかねえっ!」
意外にも、先程怯えを見せていたバッザが手を挙げた。
「おや、三人ですか。では代表者決定戦でもして決めるしかないですかね」
また面倒なことになりそうだが……。
「くっ! ……僕は……」
「おいこらもやし野郎! 自分でトップとか抜かしてそれかよ! それでもローダンス様の推薦者か!」
「うぐっ……だ、だけど……」
それでもやはりニッグは怖いのだろう。なまじ推薦を受けているからこそ、もし退学にでもなったら顔向けができなくなるのは必至なのだから。
「はんっ! 結局テメエは口だけってこった! 役にも立たねえ《緑魔》は、そこでウジウジ貝に閉じこもってろ!」
「――っ!? ……今、何て言った?」
するとニッグの様子が変わった。
顔つきが怒りに塗れ、まるでバッザのような気迫すら感じるものになっている。
「僕は決して役立たずなんかじゃないっ! 今の発言を取り消せっ!」
口調も乱暴になっている。どうやらこっちが彼の素のようだ。
「へぇ、そんな顔もできるんじゃねえか。おもしれぇ。だったらテメエも代表者決定戦に出てこいや!」
「当然だバッザ・ケーニッヒ! いや、君ら三人ともに、格の違いってもんを見せつけてやるっ!」
四人が席から立ち上がり、戦う意志を見せつける。
「ふむ。え~他にはいないようですね。ではそうですね……二週間。二週間後に代表者決定戦を行いましょう。四人とも、それで構いませんね?」
オレたちは頷く。
「決定戦の内容はバトルロイヤル方式でいいでしょう。四人とも、勝利を得たいならこの二週間、存分に鍛え上げることです」
まるで予想だにしなかった流れになったが、退屈はしなさそうだ。
そうして入学早々、ワイルドなイベントに参加することになったのである。
「――ほほう、それはまた慌ただしいことになったものだね」
初めての授業が終わった日の夜。
オレは夕食時、クーに今日あったことを伝えていた。
「しかし懐かしいね。私の時も盛り上がったものだよ、〝新人祭〟は」
「む? そういえばクーも卒業生だったのだな」
「まあな。卒業して勇者としてしばらく活動していたけれど、結局こうして家の事業を引き継いでいるんだから分からないものだね」
「へぇ、確かに今のクーを見てると、勇者なんかやってたように見えないな」
「はは。私にもただ前しか見ずに突っ走ってた時代はあったさ。けれどいくら《赤魔》といえど、どうも私は争いごとに向かなくてね」
それで限界を感じて勇者を早くに引退し、父の後を継いだのだと彼は言う。
「そう考えると妻は本当に立派だよ。今もなお勇者としての任を請け負っているのだから」
勇者にも様々な役目がある。
当然前線で戦い魔人どもを退ける役目が主な勇者業だ。しかしクーの妻のように後進育成のために、自分の持つ技や教えを伝え育てる任務を勇者業とする者もいる。
また壊滅した村や町の復興支援、遺跡や未開拓の地へ出向き、人間の暮らしの発展のために尽力するのも仕事の一つだ。
だから今では勇者のことを『何でも屋』と捉える者もいる。
ただ今思えば、トーカもただ魔人やオレと戦うだけではなく、復興支援や後進育成にも力を入れていたことを思い出す。
それを考えれば、ただ戦うだけが勇者ではないのかもしれない。
「しかしなるほど。あの子がいつにもまして燃えているのはそのせいか」
「クーは〝新人祭〟で代表として戦ったのか?」
「いやいや、私よりも優秀な者が出たよ。その者は《銀魔》でね。圧倒的な力で全員を薙ぎ倒してあっさりと優勝をかっさらったんだ」
「その者? 一人だけなのか?」
「ん? ああ、そういえば今年は二人が代表なんだってね。私の頃は代表は一人で、トーナメント形式で争っていたなぁ」
「ほう。その圧倒的な《銀魔》は今でも?」
「ん、『偉大な勇者』として現役で戦っているさ」
「『偉大な勇者』……か」
オレが何気なく呟いた言葉にクーは食いついてきて、「どうかしたかい?」と聞いてきたので、ヒナテがクラスメイト達に宣言したことを教えた。
「なるほど。あの子がそんなことを……」
どこか物寂し気な、それでいて嬉しそうでもある複雑な笑みを彼は浮かべる。
「きっとまだあの子との約束を守ろうとしているんだろうね」
「あの子?」
「……いや、止めておこう。それは私が口にすることではないな。できればあの子から聞いてやってくれ」
どうやらヒナテには『偉大な勇者』になる決意をした重大な過去があるようだ。
そこで脳裏を過ぎるのは、講堂の裏手で聞いたヒナテの呟きだ。
『こんなことで諦めるわけにはいかないわ。そうよね――ミミ』
もしかしたら何か関係しているかもしれない。
まあ教えろといったところで、重大な過去を他人のオレに素直に教えてくれるとは思えないが。それにアイツの過去にそれほど興味があるわけでもないし。
「聞けば今年は豊作らしいじゃないか。例年以上に〝新人祭〟は盛り上がるだろうね」
「まあ《銀魔》が四人もいるらしいからな」
「違うぞ」
「む?」
「君がいるからだ」
「…………」
「それにあの子だって代表に選ばれるかもしれない」
「信じているんだな、娘のことを」
「娘を信じない親などいないさ。それに君が傍にいてくれる」
「随分と過大評価するものだな」
「期待してしまうさ。あのギル様のお孫さんなのだから」
本当にコイツのジイへの信頼度が半端ない。明らかにカンストするどころか限界突破している。もしギルバッド教なるものがあったら、間違いなくズブズブの信者になっていることだろう。
「迷惑をかけるかもしれないが、あの子のことよろしく頼む」
「……ま、善処はしてやる」
「はは、頼むよ。ところで最近キナ臭い噂が飛び交っていてね」
「噂?」
「ああ。王都の近くを魔人が徘徊しているという、ね」
「へぇ、魔人ねぇ」
「君は見たことあるんだったかな?」
「……見たことはある」
実際にその魔人を束ねていましたとは口が裂けても言えそうにない。
何せ奴らの頂点に立つ存在だったのだから。
「奴らは狡猾で暴力的だ。もしかしたら王都に攻め入ってくる可能性も否定できない」
「王都を護衛する勇者どもに任せたらいいんじゃないか?」
「当然配備されているはずさ。けれど網の目というものは残念ながら存在する」
その網の目を潜って、王都に入り込んでくる奴らもいるというわけか。
「もしそれらしい人物を見つけたら下手に手を出さないように」
「……了解だ」
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