欠陥色の転生魔王 ~五百年後の世界で勇者を目指す~

十本スイ

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第三十二話

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「……これで終わりか?」
「!? ま、まだにゃ!」

 再度その場から消えるほどの速度で、またもオレの背後をついてくる。
 今度は避けることなく、オレは全身から爆発的に魔力を放出させ、その圧力によってウーナンを吹き飛ばす。

「うにゃにゃっ!?」

 そのまま地面に転がってダウンしてくれればポイントダウンだったが、猫のように空中で身を翻して見事に着地してしまった。

「ふぅ~間一髪だったにゃ~。にしても今のって魔圧にゃ? 僕を弾き飛ばすほどって、今の一瞬で有り得にゃいにゃ」
「悪いがオレに不可能はない。お前の攻撃は何一つオレには届かんぞ」
「っ……ずいぶん大きく出たにゃ」
「虚勢を張るのはいいが、さっきまでの勢いはどうした?」

 オレはいまだに魔圧を放っている。
 史上最強の魔王が有する圧力だ。恐らく初めてだろう威嚇に、ウーナンもおいそれと攻め込んでこられないのだろう。

 そしてオレの魔力を感じられる者たちもまた、《銀魔》と対等に渡り合っている様子を見て息を飲んでいる。

「お、おい……アイツ、凄いんじゃねえの?」
「な、何言ってんだよ。しょせん『欠陥色』だぜ? ウーナンが手加減してるに決まってるだろ?」
「そう……よね。《銀魔》が《黒魔》に負けるなんて有り得ないもの」

 などと周りの凡庸どもは好き勝手にほざいている。

「ところで猫娘、お前《法具》持ちだろう? 何故わざわざ《具現》なんて使う?」

 彼女が持つ《法具》が、その左手首に嵌められた腕輪だということは分かっていた。

「にゃぁ、《具現》の方が便利だからに決まってるにゃ」

 普通は自分の扱う武器に《魔石》を埋め込んで持ち得る。その方がすぐに武器を振るうこともできる。《具現》をするのは魔力を消費するので、もったいないと言う者が多い。
 だが確かに《具現》はイメージと魔力次第で好きな武具を幾つも生み出せるという利点はある。

「けど接近戦ではどうも勝てそうににゃいかぁ。にゃらこっからは僕の真骨頂を見せるとするにゃ」

 するとそこへ、ヒナテが相手の攻撃を受けて吹き飛んできた。何とか転倒しないではすんだものの、見れば彼女のポイントは残り6になっている。

「もう4ポイントも削られたのか?」
「うっ、うっさいわね! 向こうだって1ポイント削ったし!」

 と、言い訳がましく言っている中、エーミッタも近づいてきた。その表情はどこか悔しそうである。

「くっ、あんな『出涸らし娘』にポイントを削られるなんて!」

 どうやら無傷でヒナテを倒そうとしたようだ。

「って、はあ? まだあの男、ポイントMAXではありませんか! 何をやっていますのウーナン!」
「にゃはは、めんごめんご。けどこっから本番だし」
「げっ、まさかあなた、アレを使うんじゃないですわよね!」
「うんうん、だって接近戦じゃ多分勝てにゃいしね。リューくんってば強いにゃ」
「!? あなたが勝てないですって? ……あの男、《黒魔》ですわよね?」
「だから言ったにゃ。《魔色》だけで判断したらダメって。エーちゃんも削られてるでしょ?」
「そ、それは……ちょっと油断しただけですわ!」

 あくまでもヒナテの実力で削られたとは認めたくないようだ。

「ここからはコンビプレイにゃ。エーちゃん、時間稼ぎよろしくにゃ!」
「……仕方ないです。まあ私もあの《黒魔》のこと、少し気になっていましたし」

 するとエーミッタが槌を振りかぶり、そのまま大地へと叩きつけた。

「! 気をつけて、クリュウ!」

 言われるまでもない。土から魔力が地面に流れたことも把握している。
 そしてオレたちの両サイドから大地の壁が出現し、そのまま迫ってきてサンドイッチにしようとしてきた。
 オレとヒナテは、ほぼ同時にその場から跳躍して回避した――が、

「――《|大地の手(アースハンド)》!」

 エーミッタの次なる手。文字通り手の形となった大地が迫ってきた。
 オレはすぐ傍にいたヒナテの首根っこを掴む。

「《法具》も持たない分際で空中で何をしようというのですか!」

 そう喚くな。だったら見せてやるから。



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