マモノの神様 ~魔物を作って育ててのんびりクラフトライフ~

十本スイ

文字の大きさ
12 / 32

11

しおりを挟む
「……相変わらずツナギのその力は不思議」

 ムトにはこういう能力を持っているということは教えている。
 ただヤタにも言ってないように、異世界出身だということは黙っているが。

 素早く地面に《クラフト紋》を描き、その上に石材と木材を同時に乗せる。
 直後に《クラフトメニュー》が表れ、作成できる道具の名前が記された。
 その中で石の剣と石の槍、石の盾をそれぞれ二つずつ作る。

 槍と斧は、持ち手の部分が木材だからまだ軽いが、剣と盾はすべてが石で作り上げられていることからかなり重い。その分耐久度と威力は他の武器よりも高いが。
 作った装備品に触れると、装備するのか収納するのか選択肢が出るので、収納をクリックすると、持っていたものがその場から消失し、インベントリに収納される。

「よし、とりあえず石の槍だけを装備するだけでいいよね」

 リーチも長いし比較的軽いので扱いやすい。

「ピィピィ!」
「え? もしかしてイチも一緒に行くの?」
「ピィ!」

 当然と言わんばかりに胸を張るイチ。いや、張る胸はないがそんな感じに見えている。
 まあ確かに魔物を連れてダンジョンにも行けたはずだから大丈夫だと思うけど……。

「よし、じゃあ行くか」

 危なかったら逃げればいいしね。

「待って、ツナギ」
「ん? どうかした、ムト?」
「ムトも行く」
「え? え~っと……」

 チラリとヤタを見てつい判断を仰いでしまう。

「今のお主のレベルだとここから供にダンジョンへ連れていける魔物は一体だけ。しかし同じ魔物でもムトは立場が違うから、恐らくは【箱庭】の魔物として認識されないだろう」
「ということは……?」
「供に行けるとは思う」
「そっか……ムト、本当に行くつもり?」
「ん……ダメ?」

 実際のところムトは強い。
 見た目は十歳児だが、大岩を素手で軽く砕くこともできる。
 前に口から炎を吐いた時は驚いて腰を抜かしてしまったなぁ。

 しかもその炎にぶち当たった大木は一瞬で灰になったし。
 多分今の彼女ならダンジョンレベル80以上でも問題なく攻略できると思う。
 何せ幼いとはいえ伝説の〝五天竜〟の一翼なのだから。

「……分かった。でもできれば僕の指示には従ってね」
「ん、了解」

 これで命の心配はほぼほぼなくなったので、僕も安心してダンジョンへ向かうことができる。

「ニンとサブは、【箱庭】の警備を頼むな」
「「ピィ!」」

 うんうん、素直で良い子に育ってる育ってる。親としては嬉しいもんだ。

「一応言っておくが、吾輩はここから出ることはできぬからな」
「そっか。分かった」
「それともう一つ助言しておく。それは〝リターンゲート〟のことだ」
「……何それ?」

 当然のごとく知ってるけどね。

「向こうについたら分かると思うが、転移した場所には〝リターンゲート〟と呼ばれる、ここと向こうを繋ぐゲートが設置される。しかしながらそれを見ることができ発動できるのは管理人だけだ」
「なるほどなるほど」
「〝リターンゲート〟に触れて【箱庭】と口にすればここに戻って来られる。覚えておくように」
「オッケー。他には?」
「今のところそれくらいか。あとは実地研修ということで、精々多くを学んでくるのだな。まあムトとイチがついているので安心はしているが」

 どうもヤタの僕に対する信用度が低い気がする。
 僕だって一人でもこの程度のダンジョンくらい大丈夫だと思うし……多分。
 よく考えれば生身では当然ながら初めての経験なので、やっぱり緊張はしてるけど。

「準備ができたら、祠に触れてダンジョンへ向かうのだ。イチとムトはツナギの身体に触れるのだ。転移するまでは決して離してはならぬぞ」

 忠告に対し、イチとムトがそれぞれ返事をする。

「――よし! じゃあ行くぞ。――【始まりの森】!」

 その瞬間、僕たち三人の姿が【箱庭】から消失した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

処理中です...