19 / 36
18
しおりを挟む
「でもさ、その“七色の魔本”って人が持ってるとは限らねえんだろ?」
「ああ、そもそも私だって魔本を手に入れたのは偶然だ。たまたま遠征に出ていた先で倒したモンスターが、その腹の中に魔本を隠し持っていただけ。それを私が手に入れたのだからな」
そう、彼女は元々生まれつき“青の魔本”を持っていたわけじゃない。この世界にいる凶暴なモンスターが所持している可能性だってあり、他にも深いダンジョンの奥底で眠っていたという話も聞く。
つまり手に入れるには世界中を回る必要があるということ。
「今って、クーアイの他に“七色の魔本”を持ってる奴……ああ、じゃなくて、本の在り処ってどんだけ分かってんの?」
「確実にあると目されているのは【キューヴェル王国】の国王 ジヴァン・ブル・キューヴェルの手中だな」
「確証が?」
「ああ、一年ほど前に行われた【キューヴェル】と【スタッダート】という国が戦争した時に、ジヴァン王が“紫の魔本”を使用した」
「へぇ」
そんじゃ一冊の所在地は判明してるってわけか。
「ただ、その戦争は酷いものだった」
「酷い? 何が?」
「ジヴァンが魔本の力を使った時に、敵味方構わず多くの死者を出した」
「おいおい、無差別にか?」
「そうだ。私も視察任務で見に行ったが、あの力は異常だった……」
「そんなに? だってお前だって“青の魔本”の持ち主だろ?」
彼女が首を左右に振る。
「私は確かに“青の魔本”の所持者だが、まだ使いこなせてはいない。所持してから一年ほどくらいだしな」
あ、そうなんだ。結構ビギナークラスってわけだ。
「だが、ジヴァン王はその魔本と十年以上向き合ってきていると言われている。経験がまるで違う。魔本は武器だ。経験を積めば積むほど強くなっていく。私はジヴァン王に比べるとまだ新米に等しい。彼の扱う魔本の力を見てそれを痛感させられたよ」
「け、けど敵味方関係無く被害を受ける力ならいらねえんじゃねえの?」
オレだったらいらない。そんな後味の悪い代物なんか。
「そうだな……だが私は、モルニエ様の願いが叶うのなら、たとえ誰をこの手にかけようと耐えてみせる」
おいおい……マジかよ……。どんな覚悟してんだよコイツ……!
そこまで決意させるのには相当な理由があるはず。
「なあ、何でそこまでお前ってモルニエさんに望みを叶えてほしいんだ?」
「だから、モルニエ様と呼べと言っているだろうが。……ったく、私がモルニエ様に仕える理由を聞きたいのか?」
「うん、まあ」
「わ、わたしもお聞きしたいでしゅ!」
今まで口を開かなかったニナも興味があるようだ。言葉は噛んでたけど。
「そうか……。私は元々モルニエ様の一族とは、家族としての繋がりがあったのだ。親戚……といってもいいだろう」
へぇ~つまりこの美少女の血は遺伝だということか。つまりは彼女たちの周りは美女ばかりだということ。これは予想外においしい国主に仕えることができたのかもしれない。
「幼い頃から【ラードック】の国王を支える騎士になるべく育てられてきた。だがそこに疑問を持たなかったわけじゃない。私も人生を選ぶ権利があるのではないかと……な」
そりゃそうだ。敷かれたレールの上を進むのは楽だろうけど、それは本当に自分の人生を生きているって言えるのか……そういう疑問を持つのは普通の感覚だろう。
「だが幼い頃から一緒に育ってきたモルニエ様だ。私は彼女が本当に支えるべき価値のある人物なのかを見極めようとした。幼心にな」
「ふぅん、それで?」
「まだ私たちが子供の頃、彼女が賊に攫われる事件が起きた。私は彼女の傍にいたというのに守れず、情けないことに大人の力に恐怖さえ覚えて震えてしまっていた」
子供なのだから仕方がないといえばそれまでかもしれない。だってそれが普通だから。
「結局、私の母たちがモルニエ様を救って下さった。その場に私もいたのだが、血塗れに倒れる賊の中に立つ彼女を……私は一生忘れはしないだろう。一欠けらも怯える様子を見せず、凛とした佇まい。返り血まで浴びているのに、毅然としたまま我が母にかけた言葉が『大義だった』だぞ? 子供が言える言葉か?」
いや、そんな奴はもう子供じゃないんじゃ……。少なくともオレは即座に土下座をしそうになるな。
「しっかりした足取りで私のもとへ歩き、ニッコリの微笑んで下さった。そして『次は期待してるわよ』とお声まで……身体の心から打ち震えたよ。これが 王。私が支える王なのだとな」
「ひゃ~、とんでもねえなモルニエさんは」
「だからモルニエ様と呼べ。しかし、お前の言う通り、モルニエ様は我が身命にかけて守る価値のあるお方だ。お前も仕えられることに感謝しろ」
どうやら彼女はモルニエの信者と化しているようだ。モルニエの持つ器の広さに惚れたといったところだろう。オレにはあのドS女王の外面しかまだ分からないが、それでもクーアイが惚れこむということは、やはりそれなりなものを持っているということ。
あの歳でとんでもねえお嬢様なこって……。思わず身震いするわ。
ニナもお伽噺でも聞いたように目を丸くして「しゅ、しゅごいでしゅぅ~」と噛んでることも気づかずに声を漏らしている。
「ああ、そもそも私だって魔本を手に入れたのは偶然だ。たまたま遠征に出ていた先で倒したモンスターが、その腹の中に魔本を隠し持っていただけ。それを私が手に入れたのだからな」
そう、彼女は元々生まれつき“青の魔本”を持っていたわけじゃない。この世界にいる凶暴なモンスターが所持している可能性だってあり、他にも深いダンジョンの奥底で眠っていたという話も聞く。
つまり手に入れるには世界中を回る必要があるということ。
「今って、クーアイの他に“七色の魔本”を持ってる奴……ああ、じゃなくて、本の在り処ってどんだけ分かってんの?」
「確実にあると目されているのは【キューヴェル王国】の国王 ジヴァン・ブル・キューヴェルの手中だな」
「確証が?」
「ああ、一年ほど前に行われた【キューヴェル】と【スタッダート】という国が戦争した時に、ジヴァン王が“紫の魔本”を使用した」
「へぇ」
そんじゃ一冊の所在地は判明してるってわけか。
「ただ、その戦争は酷いものだった」
「酷い? 何が?」
「ジヴァンが魔本の力を使った時に、敵味方構わず多くの死者を出した」
「おいおい、無差別にか?」
「そうだ。私も視察任務で見に行ったが、あの力は異常だった……」
「そんなに? だってお前だって“青の魔本”の持ち主だろ?」
彼女が首を左右に振る。
「私は確かに“青の魔本”の所持者だが、まだ使いこなせてはいない。所持してから一年ほどくらいだしな」
あ、そうなんだ。結構ビギナークラスってわけだ。
「だが、ジヴァン王はその魔本と十年以上向き合ってきていると言われている。経験がまるで違う。魔本は武器だ。経験を積めば積むほど強くなっていく。私はジヴァン王に比べるとまだ新米に等しい。彼の扱う魔本の力を見てそれを痛感させられたよ」
「け、けど敵味方関係無く被害を受ける力ならいらねえんじゃねえの?」
オレだったらいらない。そんな後味の悪い代物なんか。
「そうだな……だが私は、モルニエ様の願いが叶うのなら、たとえ誰をこの手にかけようと耐えてみせる」
おいおい……マジかよ……。どんな覚悟してんだよコイツ……!
そこまで決意させるのには相当な理由があるはず。
「なあ、何でそこまでお前ってモルニエさんに望みを叶えてほしいんだ?」
「だから、モルニエ様と呼べと言っているだろうが。……ったく、私がモルニエ様に仕える理由を聞きたいのか?」
「うん、まあ」
「わ、わたしもお聞きしたいでしゅ!」
今まで口を開かなかったニナも興味があるようだ。言葉は噛んでたけど。
「そうか……。私は元々モルニエ様の一族とは、家族としての繋がりがあったのだ。親戚……といってもいいだろう」
へぇ~つまりこの美少女の血は遺伝だということか。つまりは彼女たちの周りは美女ばかりだということ。これは予想外においしい国主に仕えることができたのかもしれない。
「幼い頃から【ラードック】の国王を支える騎士になるべく育てられてきた。だがそこに疑問を持たなかったわけじゃない。私も人生を選ぶ権利があるのではないかと……な」
そりゃそうだ。敷かれたレールの上を進むのは楽だろうけど、それは本当に自分の人生を生きているって言えるのか……そういう疑問を持つのは普通の感覚だろう。
「だが幼い頃から一緒に育ってきたモルニエ様だ。私は彼女が本当に支えるべき価値のある人物なのかを見極めようとした。幼心にな」
「ふぅん、それで?」
「まだ私たちが子供の頃、彼女が賊に攫われる事件が起きた。私は彼女の傍にいたというのに守れず、情けないことに大人の力に恐怖さえ覚えて震えてしまっていた」
子供なのだから仕方がないといえばそれまでかもしれない。だってそれが普通だから。
「結局、私の母たちがモルニエ様を救って下さった。その場に私もいたのだが、血塗れに倒れる賊の中に立つ彼女を……私は一生忘れはしないだろう。一欠けらも怯える様子を見せず、凛とした佇まい。返り血まで浴びているのに、毅然としたまま我が母にかけた言葉が『大義だった』だぞ? 子供が言える言葉か?」
いや、そんな奴はもう子供じゃないんじゃ……。少なくともオレは即座に土下座をしそうになるな。
「しっかりした足取りで私のもとへ歩き、ニッコリの微笑んで下さった。そして『次は期待してるわよ』とお声まで……身体の心から打ち震えたよ。これが 王。私が支える王なのだとな」
「ひゃ~、とんでもねえなモルニエさんは」
「だからモルニエ様と呼べ。しかし、お前の言う通り、モルニエ様は我が身命にかけて守る価値のあるお方だ。お前も仕えられることに感謝しろ」
どうやら彼女はモルニエの信者と化しているようだ。モルニエの持つ器の広さに惚れたといったところだろう。オレにはあのドS女王の外面しかまだ分からないが、それでもクーアイが惚れこむということは、やはりそれなりなものを持っているということ。
あの歳でとんでもねえお嬢様なこって……。思わず身震いするわ。
ニナもお伽噺でも聞いたように目を丸くして「しゅ、しゅごいでしゅぅ~」と噛んでることも気づかずに声を漏らしている。
0
あなたにおすすめの小説
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる