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第二章
報告
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ルスルルの断崖での、イエヤスさんやゾウもどきのナオトラと出会ったことを報告するために俺たちは予定時間を少し切り上げて城に戻ってきていた。
予定していた水の時刻まで少し時間があるからか、まだ戻ってきている人はいなかった。
そうそうに王都から出たため、雫や絢香には合わなかったんだよな。
「ハルヤ様、ナーマ様、陛下がお呼びです」
父様が政務の合間に時間を作ってくれ、俺たちはその時間まで執務室横の応接室で待機していたが、ようやくその時間になったようでメイドが呼びにきた。
王城の中でも俺がハルヤ殿下であるという事実を知らされているものは極少数のため、この呼びにきたメイドも俺を殿下として認識していないようだ。
人は髪色や目の色が違えば言われなければ気付かないものらしい。
「分かりました。ありがとうございます」
「ハルヤ様、行きましょうか」
メイドの呼びかけに俺たちは礼を言うと、腰を上げて、執務室に向かった。
到着すると扉をノックし、父様の声がしたので、俺たちは部屋へと入った。
「失礼いたします、陛下」
「お時間を作っていただきありがとうございます。父様」
「良い。お前が言うからには緊急の報告なのだろう。ともかく、椅子にかけなさい」
父様に礼を述べると、席を手のひらで指し、かけるように言った。
その言葉で俺は椅子にかけると、父様も執務机の椅子から立ち上がり俺たちの目の前に座った。
ナーマは騎士としての立場があるからか、椅子の後ろ側に立っていた。
「ナーマも座りなさい」
「お言葉ありがたいのですが、騎士としての意地ですので」
「そうか。頑固なところはガストンに似ているな」
父様は嬉しそうな表情でナーマを見るとそう呟いた。
「それで、報告というのを聞かせてもらおうか」
「はい。父様、ルスルルの断崖はご存知ですよね」
「あぁ、もちろん。我が国の貴重な史跡の一つだ」
「実は———」
俺は父様にさっきあった出来事を要約して伝える。
抜け漏れているところなどはナーマにも補足してもらいながら報告をする。
もちろん、地球との繋がりなどは伏せて報告した。
報告を聞く、父様の表情はどこか陰りを帯びていた。
「そうか‥‥。はぁ、お前が無事で何よりだ。それで、そのイエヤスという人物は我が国に対して脅威になり得るか?」
「遭遇し、会話をしただけですが敵意は感じませんでした。むしろ友好的といえると思います。こちら側につくか、あるいは中立でいる場合は脅威にはなり得ないでしょう」
「そう思う根拠はなんだ?」
俺の答えに挑戦的な目で問うた。
「大きな理由として、敵意のある者が先制攻撃をこちら側が行ったのに反撃をしないのはおかしいからです。また、俺たちにペラペラと情報を話すはずがありません」
「よく出来た根拠だ。しかし、その情報が偽物という場合もある。真偽については慎重に考えるべきだな。ジガルデアいるか?」
「なんでございましょう、陛下」
父様が呼びかけると王城の執事長であるジガルデア・フランドが恭しく礼を取りながら入ってきた。
ジガルデアは生家が王城の執事長を担う家系で、今代の当主は息子に譲ってしまったが、ジガルデアは昔も今も王城に勤めてくれている。
「すまないが、ナタータ宰相を呼んでくれ。あ、それとナリアス、フィークスにも頼む」
「承知致しました」
ジガルデアは願いを聞き終わると、再びと恭しく礼を取り、ナタータ宰相や兄様を呼びに部屋を出た。
フィークスというのは兄様の側近で、ナタータ宰相の嫡男だ。
兄様が次期国王であれば、フィークスは次期宰相という立場にいる。
「陛下、お呼びでしょうか」
ジガルデアが呼びにいって数分後、ナタータ宰相が扉をノックし入ってきた。
「急な呼び出し、すまない。もう間も無くナリアスも来るだろうからしばらく待ってくれ」
「承知致しました。では、その間の時間こちらの資料をご覧いただきたいのですが‥」
「分かった、こちらへ」
ナタータ宰相は手に抱えていた資料を父様に渡すと、二人で何やら熟考しながら、相談していた。
「ハルヤ様、俺、すごく場違いな気がするのですが、いても良いのでしょうか‥?」
父様とナタータ宰相の会話に耳を傾けていると、後ろに控えていたナーマが不安気に声をかけてきた。
「どうした、急に」
「陛下にナリアス殿下、ナタータ宰相、フィークス様、そしてハルヤ様。みなさん高貴な方達ばかりで、一介の騎士がこの場にいるなど‥」
「お前は俺の護衛騎士だろう?十分な理由じゃないか」
「ハルヤ様…」
「それに、あの場にナーマもいたのだから当事者だしな。俺が忘れている部分を補えるのはナーマしかいない。そのナーマがが退出してしまえば、誰が俺の言葉を補ってくれるんだ?」
ナーマに対して説得するような、諭すような気持ちで言葉を紡ぐとナーマは虚をつかれたようにポカンとした表情になり、意志のこもった目で俺を見ながら頷いた。
「俺は甘ったれていました。ハルヤ様のことは俺が支えます」
「あぁ、頼んだ」
繋がっていた絆がより一層強まったような気がする。
こそばゆさもあるけれど、繋がりを感じるのはとても嬉しいものだ。
「失礼致します。お呼びでしょうか、父上」
ナーマとの繋がりを感じていると、兄様がフィークスを伴い部屋に入ってきた。
「あぁ。みな、掛けてくれ」
父様の号令で兄様は俺の横に、ナタータ宰相とフィークスは隣同士に座った。
父様は執務机の椅子に座ると、呼んだ案件である俺の報告を完結に纏め説明した。
「なるほど……。何はともあれ、ハルヤ殿下がご無事で何よりでした」
「あぁ、本当に。まったく危険な事に首を突っ込んで…!」
「いさあいですふぉ…にいしゃま」
ナタータ宰相が俺の無事に安堵を浮かべるとそれ便乗するように兄様が頬をつねってきた。
あまりに強く引っ張るもので、上手く喋れない……。
「ナリアス様……避けられてもよろしいのですか」
「はぁ!そうだった。痛くはなかったかい?」
「いえ、大丈夫です」
ため息をついてしまいそうな呆れが混じった声でフィークスは兄様に声をかけると、兄様はハッとした表情を浮かべて俺の頬から手を離した。
もう、兄様の手網を握るのはフィークスが最も上手なのかもしれない。
予定していた水の時刻まで少し時間があるからか、まだ戻ってきている人はいなかった。
そうそうに王都から出たため、雫や絢香には合わなかったんだよな。
「ハルヤ様、ナーマ様、陛下がお呼びです」
父様が政務の合間に時間を作ってくれ、俺たちはその時間まで執務室横の応接室で待機していたが、ようやくその時間になったようでメイドが呼びにきた。
王城の中でも俺がハルヤ殿下であるという事実を知らされているものは極少数のため、この呼びにきたメイドも俺を殿下として認識していないようだ。
人は髪色や目の色が違えば言われなければ気付かないものらしい。
「分かりました。ありがとうございます」
「ハルヤ様、行きましょうか」
メイドの呼びかけに俺たちは礼を言うと、腰を上げて、執務室に向かった。
到着すると扉をノックし、父様の声がしたので、俺たちは部屋へと入った。
「失礼いたします、陛下」
「お時間を作っていただきありがとうございます。父様」
「良い。お前が言うからには緊急の報告なのだろう。ともかく、椅子にかけなさい」
父様に礼を述べると、席を手のひらで指し、かけるように言った。
その言葉で俺は椅子にかけると、父様も執務机の椅子から立ち上がり俺たちの目の前に座った。
ナーマは騎士としての立場があるからか、椅子の後ろ側に立っていた。
「ナーマも座りなさい」
「お言葉ありがたいのですが、騎士としての意地ですので」
「そうか。頑固なところはガストンに似ているな」
父様は嬉しそうな表情でナーマを見るとそう呟いた。
「それで、報告というのを聞かせてもらおうか」
「はい。父様、ルスルルの断崖はご存知ですよね」
「あぁ、もちろん。我が国の貴重な史跡の一つだ」
「実は———」
俺は父様にさっきあった出来事を要約して伝える。
抜け漏れているところなどはナーマにも補足してもらいながら報告をする。
もちろん、地球との繋がりなどは伏せて報告した。
報告を聞く、父様の表情はどこか陰りを帯びていた。
「そうか‥‥。はぁ、お前が無事で何よりだ。それで、そのイエヤスという人物は我が国に対して脅威になり得るか?」
「遭遇し、会話をしただけですが敵意は感じませんでした。むしろ友好的といえると思います。こちら側につくか、あるいは中立でいる場合は脅威にはなり得ないでしょう」
「そう思う根拠はなんだ?」
俺の答えに挑戦的な目で問うた。
「大きな理由として、敵意のある者が先制攻撃をこちら側が行ったのに反撃をしないのはおかしいからです。また、俺たちにペラペラと情報を話すはずがありません」
「よく出来た根拠だ。しかし、その情報が偽物という場合もある。真偽については慎重に考えるべきだな。ジガルデアいるか?」
「なんでございましょう、陛下」
父様が呼びかけると王城の執事長であるジガルデア・フランドが恭しく礼を取りながら入ってきた。
ジガルデアは生家が王城の執事長を担う家系で、今代の当主は息子に譲ってしまったが、ジガルデアは昔も今も王城に勤めてくれている。
「すまないが、ナタータ宰相を呼んでくれ。あ、それとナリアス、フィークスにも頼む」
「承知致しました」
ジガルデアは願いを聞き終わると、再びと恭しく礼を取り、ナタータ宰相や兄様を呼びに部屋を出た。
フィークスというのは兄様の側近で、ナタータ宰相の嫡男だ。
兄様が次期国王であれば、フィークスは次期宰相という立場にいる。
「陛下、お呼びでしょうか」
ジガルデアが呼びにいって数分後、ナタータ宰相が扉をノックし入ってきた。
「急な呼び出し、すまない。もう間も無くナリアスも来るだろうからしばらく待ってくれ」
「承知致しました。では、その間の時間こちらの資料をご覧いただきたいのですが‥」
「分かった、こちらへ」
ナタータ宰相は手に抱えていた資料を父様に渡すと、二人で何やら熟考しながら、相談していた。
「ハルヤ様、俺、すごく場違いな気がするのですが、いても良いのでしょうか‥?」
父様とナタータ宰相の会話に耳を傾けていると、後ろに控えていたナーマが不安気に声をかけてきた。
「どうした、急に」
「陛下にナリアス殿下、ナタータ宰相、フィークス様、そしてハルヤ様。みなさん高貴な方達ばかりで、一介の騎士がこの場にいるなど‥」
「お前は俺の護衛騎士だろう?十分な理由じゃないか」
「ハルヤ様…」
「それに、あの場にナーマもいたのだから当事者だしな。俺が忘れている部分を補えるのはナーマしかいない。そのナーマがが退出してしまえば、誰が俺の言葉を補ってくれるんだ?」
ナーマに対して説得するような、諭すような気持ちで言葉を紡ぐとナーマは虚をつかれたようにポカンとした表情になり、意志のこもった目で俺を見ながら頷いた。
「俺は甘ったれていました。ハルヤ様のことは俺が支えます」
「あぁ、頼んだ」
繋がっていた絆がより一層強まったような気がする。
こそばゆさもあるけれど、繋がりを感じるのはとても嬉しいものだ。
「失礼致します。お呼びでしょうか、父上」
ナーマとの繋がりを感じていると、兄様がフィークスを伴い部屋に入ってきた。
「あぁ。みな、掛けてくれ」
父様の号令で兄様は俺の横に、ナタータ宰相とフィークスは隣同士に座った。
父様は執務机の椅子に座ると、呼んだ案件である俺の報告を完結に纏め説明した。
「なるほど……。何はともあれ、ハルヤ殿下がご無事で何よりでした」
「あぁ、本当に。まったく危険な事に首を突っ込んで…!」
「いさあいですふぉ…にいしゃま」
ナタータ宰相が俺の無事に安堵を浮かべるとそれ便乗するように兄様が頬をつねってきた。
あまりに強く引っ張るもので、上手く喋れない……。
「ナリアス様……避けられてもよろしいのですか」
「はぁ!そうだった。痛くはなかったかい?」
「いえ、大丈夫です」
ため息をついてしまいそうな呆れが混じった声でフィークスは兄様に声をかけると、兄様はハッとした表情を浮かべて俺の頬から手を離した。
もう、兄様の手網を握るのはフィークスが最も上手なのかもしれない。
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