パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~

一条おかゆ

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9話 彗星と極光

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 箒と雑巾を置き、汗を拭う。

「ふぅ……。こんなものかな?」

 部屋はピカピカだ!
 ピカピカすぎて眩しいよ!
 というのは流石に誇張だけど、埃一つ無いのは事実だ。

 これで、新居の掃除は一通り済んだかな。

 前の家には、あまり戻りたくないし、僕は新しい家を借りることにした。
 場所は帝都西部。
 二階建てで、なにかと手狭だ。
 前の家に比べると見劣りしてしまう。
 だけど、独り暮らしなら十分だ。

 とまぁ、引っ越しを始めること三日。
 家具の搬入・荷ほどき・掃除が、ようやく終わった。
 ベガや助けたあの二人の協力もあって、予想より早かった。

「お引越しで一文無しになっちゃたから、頑張って稼がないとね」

 僕は着替え、武器防具を装備。
 新居から通りへ出た。

 向かう先は、冒険者ギルドだ。



 新居は、ギルドからさほど遠くない。
 乗合馬車とかリザードとかの交通費がかからない立地で良かった。

 辿り着くや、僕は自在扉を押し開く。
 広い空間には、大量の冒険者がごった返していた。

 動物園の檻のように、クエストボードに人が集結
 備え付けられた長机では、様々なパーティーが作戦会議中。
 他にも、受付嬢をナンパしていたり、二階へ上がっていったり。

 数えきれないほどの人々が、種々様々なことをしている。

「やっぱり、昼頃が一番多いなぁ……」

 さすがに、これだけ人が多いと、足を踏み入れるのも億劫だ。
 だけど、ベガと約束しているんだ。

 会釈しながら、人混みを掻き分けるように進む。
 長机が大量に置かれたほうへと向かい、ベガを探した。

 すると、すぐに見つかった。
 一際美人だからか、ぱっと目についた。

 彼女は長椅子に座って、優雅にコーヒーを飲みながら読書中。
 だけど同時に、絡まれていた。男冒険者二人組に。

「なぁねぇちゃん、俺らと一緒にパーティー組まね?」
「中衛が足んなくてさ~、入ってくれると助かるんだけどな~」

 ……いっそ面白いくらい、下心が透けて見えるね。
 てか、二人のうち一人は明らかに中衛の装備だし、絶対に別の理由で誘ってる気が……。

 でも、ベガは無反応。
 嫌そうな様子も苛立った様子もなく、コーヒーカップ片手に本に集中している。
 好きの反対は無関心って、どこかで誰かが言ってたのを思い出すなぁ。

 まぁ、このまま彼女が絡まれているのを見ていても仕方ない。
 僕は近寄って、ベガの対面に腰掛けた。

「おはよ、ベガ。待ったかな?」

 彼女は本から視線を上げ、僕の顔を見た。

「……ん? あぁ、おはよう、イオ。今日も可愛いね」
「いやだから可愛くないってばっ! 可愛いなんて言われても嬉しくないし!」
「じゃあ、なんて文句で褒められたいの?」
「カッコいいとか、強いとか……そういう、男らしいのが良いに決まってるじゃん」

 ベガは口元に手を当てて「ふふっ」と微笑むと、栞を挟んで本を閉じた。

「イオには、まだまだ早いかな。いつか、その言葉が相応しくなると信じてはいるけどね」

 彼女は飲み終えたコーヒーカップを、近くを通りがかったウェイトレスさんに渡した。
 ついでにウィンクも送ると、ウェイトレスさんは顔を赤らめて走り去った。

 気が付くと、あの冒険者二人はどこかへ去っている。
 僕らが仲良さそうに会話しているのを見て、諦めたのだろう。

「知らない人に絡まれて、ベガも大変だね」
「そうかな? イオは、読書中に虫が飛んでたら気にするタイプ? 危害が無ければ、私は放っておくかなぁ」

 さらっと彼等を虫呼ばわり……。

「ま、それよりクランの申請に行こうか」

 立ち上がる彼女に合わせて、僕も立ち上がった。

 冒険者は全員、ここ冒険者ギルドに所属している。
 そうすることによって、毎日何百件と貼り出されるクエストを受けることができる。
 冒険者ギルドというのは、依頼されたクエストを冒険者に提供する、"巨大な仲介人"だ。

 ちなみに国営。
 対し、クランというのは民間。
 簡単に言っちゃえば、企業のようなものだ。

 所属メンバーで協力し、効率的に魔物を狩りましょう! 
 独りでやるよりリスクも少ないし、より強い魔物を狩れますよ!
 という理由で集まったのがクランだ。

 そして最後。
 パーティーというのは、"実際にクエストに向かう集団"のことだ。

 基本的には、二人から六人程度。
 多くても八人だろう。
 しかし稀に、大規模な討伐隊が編成される。
 その時は百人以上になることもある。

 ま、僕とベガがやろうとしていることを考えれば、あまり縁の無い話だけど。

「クランを立ち上げたいんだ。頼めるかな?」

 受付に着くなり、ベガはカウンターに金貨を何枚か置く。
 受付嬢はそれを受け取り、代わりに書類を取り出した。

「あっ、はい。クラン立ち上げの申請ですね。……では、こちらに記入して頂いてもよろしいでしょうか?」

 置かれた一枚の羊皮紙。
 カウンターに立てられた羽根ペンを手に取り、ベガはすらすらと記入していく。

 書き終えてそれを受付嬢に渡すと、彼女は確認として読み上げた。

「はい。クラン名は……彗星と極光」

 災害の前兆と、戦争の前触れじゃないか。
 ものすごい不吉なネーミングだね……。

「サブクランマスターは、ベガ・フィン・ギースリンゲン。……っ!」

 受付嬢は目を見開き、口元を手を押さえた。
 名門貴族、ギースリンゲン公爵家の名に、驚きを隠せない様子。

 しかし、彼女もプロだ。
 かぶりを振って雑念を払い、業務に戻る。

「クランマスターは……イオ・フィン・ギースリンゲン。ご家族のかたですか?」
「私の嫁さ」
「ち、違います! 僕は嫁じゃない……って嫁!? 僕、夫じゃないの!?」
「ごめん、間違えた。婚姻した嬉しさで頭がこんがらがって……」
「いや、そもそも結婚してないからっ!」

 しかも僕、婚約者を寝取られたばっかなんだよね!?
 ついでに、貴族家から追放されたばかりだし!?

「ただのイオです、平民の! 家名はありません!」
「ま、家名程度、イオならすぐに手に入れるだろうけどね」

 こうして、クラン立ち上げの申請は滞りなく……いや、滞りあって終わった。

 ついでに僕は、前のクラン《宵の明星》からも脱退しておいた。

 これで後腐れはない。
 僕は、クラン《彗星と極光》で、ブレイズたちを越えてやる!
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