140 / 148
第七章 ダンジョン
140 新たなモンスター
しおりを挟む
あれから二日、順調に攻略をして今日は少し進めば七十三階に下りられるだろう。
セーフゾーンを出て七十三階へ向けて移動をする。
途中に何グループかいるが、問題なく倒して階段へとたどりついた。
「ここから先は情報が一切ないかもしれないから、慎重に進もう。場合によってはプルも考慮にいれよう。ただ、リンクする可能性も高いから、そこは臨機応変に、だな」
「おう」
「ええ、了解よ」
「はいです」
階段を下りて、ミニマップを確認する。
「あ」
「んあ? なんだ?」
「あー、宝箱がある。階段からは遠いところだ。そちらにいけば七十三階をクリアするのは結構かかりそうだな」
「こんな階層での宝箱だもの、時間がかかっても行くべきだと思うわ」
「おう、俺も同意だな」
「私もです」
「わかった。それじゃ宝箱を目指そうか。とはいえ、とりあえずはモンスターの確認からだな」
まさかの宝箱でルートは変えなくてはならなくなったが、こんな階層にある宝箱などどれだけいいものかわからない。
とりあえずは、まずはモンスターの確認だ。
慎重に進み、遠くにモンスターの姿を確認した。
最初にパッと見たときは、兎の獣人かと思ってしまったが、よく見ればそれは違った。
ウサギの耳かと思ったものは耳ではなく蛾の触覚のようなものだった。
しかし、体型は人型ではなく、ウサギのようで、見える部分の毛皮は真っ白だ。
それに軽装備のようなものをつけている。
疑似兎獣人というところか。
そんな疑似兎獣人は歩きながら洞窟内に転がる小さな小石に遊ぶように魔法を撃ち込んでいる。
その魔法は雷であったり氷であったりと多彩だ。
鑑定をしてみると、疑似兎獣人には名前の記載がなかった。
ただそれ以外の記載はあり、多彩な魔法を繰り出して攻撃をしてくるらしく、近接攻撃は然程得意ではないが、動きがかなり俊敏らしい。
そんな疑似兎獣人が二体だ。
そして残りの四匹は某モンスターをハントするゲームにいるような敵だ。
顔は猫科だが、体はトカゲっぽい。
手足は硬そうな鱗に覆われ、ゴツゴツとしていて、ノッシノッシと歩いている。
背中や顔には毛が生えており、尻尾は真ん中から先にかけてトゲのような鱗が逆立っていて、危険そうだ。
疑似兎獣人が魔法を撃つたびにそちらに視線を向けているので、魔法に対して敏感な気がする。
鑑定した結果は、疑似兎獣人と同じで名前の記載はないが、それ以外は記載がある。
鑑定はスマフォとは違うのか?
とにかく攻撃方法を見てみるか。
攻撃方法はブレス攻撃と、噛みつき、引っ搔き、尻尾による攻撃と、基本的には近接攻撃のようだ。
「名前ねぇのか」
「ああ、多分見たことがないモンスターなのか、一定数以上に認識されていないせいか」
俺がそう説明していると、フィーネが話しかけてきた。
「ねぇルカ」
「ん?」
「名前、今つけてみてはどうかしら?」
「名前を?」
「ええ、誰もみたことがなくて名前がつけられていないのか、それとも一定数以上の認識かはそれでわかるんじゃないかしら?」
「なるほど。じゃあ誰かがつけて、それを俺たちが認識すればつくかもしれないな」
「ふぅん。んじゃ、ルカがつけろよ」
「え、なんでだよ」
「考えるのめんどくせぇし、ルカのが言葉知ってるじゃん」
「ええ……」
「そうね、ルカのセンスに期待するわ」
そう言ってフィーネが笑い、エルナも笑顔で頷いた。
「期待です!」
予想外である。
「まじか……。まぁいいか、今回は俺がつけるけど、次からは誰かがつけてくれよ」
「やなこった」
「そうね、考えてはおくわ」
「思いつかない気がします」
次も俺がつけないといけない流れになりそうだが、そもそも俺が名前をつけても鑑定にはでないかもしれない。
それなら次からはつけなくてもいいし……。
「じゃ、あの疑似兎獣人、とりあえず『マジックラビット』にする」
「マジックラビットか。意味ってあんのか?」
「そのままだな、魔法を使うウサギでマジックラビットだ」
「マジックラビット。いいわね」
「マジックラビットさんですね。覚えました」
全員が認識したところで鑑定をかけてみた。
「うわ、まじか」
「何かしら?」
「鑑定に名前ついてた……」
「ほー。んじゃ名前つけたからかね?」
「そうね、名前として認識したせいか、それとも私たちがそれを名前として認識したかね。ルカ、次は私たちには名前を教えずに一人で名前をつけて認識してみて頂戴」
「ああ、わかった」
あれ、サラッと俺が名付けることになっているが……まぁいいか。
さて、あの某モンスターをハントするゲームにでてきてそうなやつにはなんてつけるか。
そのままはさすがにあれだしな、混ぜてみるか。
あれの名前は『リオクーガ』だ。
よし、鑑定してみよう。
鑑定した結果、名前は記載されていなかった。
「鑑定してみたがないな。一定数以上かもしれない」
「何人以上に認識されたらなのかしらね」
「一人ずつにコッソリ教えてみるというのはどうでしょう?」
「ああ、やってみるか。じゃ、ミハエルにまず教えてみるか」
「おうよ」
俺はミハエルに耳打ちをし、ミハエルは頷いた。
「ミハエル、認識したか?」
「おう、バッチリだぞ」
そうして鑑定してみる。
「お、名前ついたな」
「なるほど、それなら二人以上が認識した時点でってことになりそうね」
「そうみたいだな」
「名前はなんてつけたのですか?」
「『リオクーガ』だ」
「どういう意味なのでしょう?」
「あー、意味はどうだったかな……リオが王様とかなんかそういう意味で、クーガは確か、猫科の肉食獣の名前だったと思う」
「猫の王様ですか。可愛くはないですけど、強そうですね!」
「はは。そうだな。確かに可愛くはないな」
まぁ、あんな猫がいたら恐ろしすぎて近寄れない。
「とりあえず、マジックラビットが魔法戦をしてきて、リオクーガはブレスと近接攻撃か。ミハエル、どうする?」
「んー、俺がウサギのがいいかもしれねぇな」
「わかった。じゃあ俺はリオクーガにいってみるか」
「おう、でも気をつけろよ、ルカ」
ミハエルがこうして俺に警告をしたことなど初めてだ。
これはちょっとやばいのかもしれない。普通に拘束魔法などを使わないと危ないかもしれないな。
「ああ、わかった」
とりあえずリオクーガにダメージは入らなくともとにかく一番速度のあるウインドバレットを撃ち込む。
リオクーガは予想通り、俺のバレットに敏感に反応して素早く避けた。
それでも意識は俺に向いたのでそのまま左側へと俺は動き、リオクーガを左に連れてくることができた。
ミハエルはそんなリオクーガの隣をスルっと抜けてマジックラビットに向かっている。
多分もう見る余裕はなくなる。
ジャベリンを何度も撃ち込んでいるが、リオクーガは俺のジャベリンを尻尾で簡単に弾いている。
尻尾が傷ついている様子もなく、サンダージャベリンによる麻痺も焼け焦げもないようだ。
随分と魔法抵抗が高いようだ。
それが尻尾だけなのか全身なのか。
とりあえず予想以上に動きが速く、魔法への反応速度が高いので、とりあえず足を止めないと攻撃すらまともにできない。
俺は壁を登ろうとしているリオクーガにリストレインを発動する。
リオクーガは壁に登ろうとした状態でピタっと止まった。
そこに頭、背中に向けてサンダージャベリンを撃ち込む。
リオクーガは俺の魔法を避けることなくまともに受け、それは見事に貫通して煙となって消えた。
なるほど、尻尾だけが魔法抵抗が高く、その他はそうでもないわけか。
だからこそあれほど魔法に対して敏感だったわけだな。
だがリストレインのおかげで楽に倒せるようになった。
やはり強力だな。
五秒だけしか足止めはできないが、五秒というのは大きい。
そのまま次のリオクーガにリストレインを発動し魔法を撃ち込もうとしたところで横から強烈な尻尾による攻撃がきた。
しまったと思うが遅く、リオクーガの尻尾が俺を直撃する。
なんとか腕で防御をしたが吹き飛ばされてしまう。
リストレインと魔法を撃つことに意識をもっていき過ぎた。
洞窟の壁にぶつかる寸前に体勢を整え、壁に足から着地し、そのまま壁を蹴って戻る。
右腕はじんじんと痺れてはいるが、問題はない。
今度は油断なく、周囲に意識を向けながら再びリストレインを発動して動きを止めて、ジャベリンを撃ち込む。
リストレインは連続で発動することができないので、一体ずつしか足を止めることはできない。
どれかにリストレインがかかっていると、次のやつに発動しても効果がないのだ。
これは不便ではあるが、どれだけ強い敵であっても五秒足止めできるのだから仕方ないともいえる。
リオクーガの動きに注意しつつ、確実に足を止めてから止めを刺していく。
少し時間はかかったが、なんとか全て倒しきることができた。
俺が全て倒す少し前にミハエルは戦闘を終えていたようだ。
「大丈夫か? ルカ」
「ああ、油断した。すまん」
「おう、気をつけろよ」
ミハエルの注意に頷く。
「ああ。それで、マジックラビットはどうだ?」
「やばいな、あいつ。でも、多分俺でないと無理だな」
「どういうことだ?」
「あの兎、ものすごい魔法抵抗が高いぞ」
「ほう?」
「防御力はたいしたことないみたいだがな、エルナのジャベリンが一度当たったんだが、というか手で止められたんだが、傷一つなかった。むしろ余裕だって感じで手で受け止めてた」
「なるほど」
「あとあれだな、魔法がすげぇわ。ルカ並みに色々撃ってくる。つかジャベリン撃ってきたぞ、あの兎」
「まじか」
「おう、ルカのより小さくて、エルナと同じくらいの大きさだが、アースジャベリンを撃ってきた。他にもあるかもしれねぇが、確認できたのはアースジャベリンだけだ」
まさかこの階層からジャベリンか。
Sランク相当というのは本当だな。
「となると、俺はマジックラビットとやるのは無理だな」
「多分な、動きもめちゃはえーしやばいわ、あの兎。幸いなのは近接攻撃は然程強くねぇってことだな。魔法だけだから避けれるし」
そうケロっと言うミハエルに俺は苦笑しつつ言葉を返す。
「そんなにホイホイ魔法を避けれるのはミハエルとレオンくらいだろ」
「そうかー? こう、なんとなくわかんじゃん」
「俺にはわからんぞ」
「そうか……? まぁいいや、そんでそっちはどうだ?」
「リオクーガは動きが速くて尻尾部分はかなり魔法抵抗力が高い、マジックラビットと同じだな。でも尻尾以外は魔法に強いわけではない。だからこそ魔法に敏感なんだろうが。ま、言えばミハエルとレオンと同じだよ、魔法に敏感に反応して避けてくる。だから足止めをして魔法を撃ちこむしかないな。俺のミスリルの剣では切れないし刺さらん」
「ふむ、ま、それならこのままの振り分けでいいな」
「ああ、俺はこのままリオクーガでいく」
俺がそう言ったところでフィーネとエルナが言った。
「私はマジックラビットに攻撃するわね」
「私はリオクーガですね! 止めはお任せして、牽制と動きの阻害を狙います」
「ああ、二人ともそれで頼む」
誰がどれを担当するか決まったところで再び宝箱を目指して歩き始めた。
距離的に二日後くらいには宝箱にたどりつけるだろう。
しかしこれは俺のようにマップがあるからわかるが、普通ならまず見つからない気がするな。
そう考えると俺の魔法は本当にチートだな。
それでもこれも俺の能力なのだから、よしとしよう。
「さ、行くか」
そうして俺たちは再び歩き始めた。
セーフゾーンを出て七十三階へ向けて移動をする。
途中に何グループかいるが、問題なく倒して階段へとたどりついた。
「ここから先は情報が一切ないかもしれないから、慎重に進もう。場合によってはプルも考慮にいれよう。ただ、リンクする可能性も高いから、そこは臨機応変に、だな」
「おう」
「ええ、了解よ」
「はいです」
階段を下りて、ミニマップを確認する。
「あ」
「んあ? なんだ?」
「あー、宝箱がある。階段からは遠いところだ。そちらにいけば七十三階をクリアするのは結構かかりそうだな」
「こんな階層での宝箱だもの、時間がかかっても行くべきだと思うわ」
「おう、俺も同意だな」
「私もです」
「わかった。それじゃ宝箱を目指そうか。とはいえ、とりあえずはモンスターの確認からだな」
まさかの宝箱でルートは変えなくてはならなくなったが、こんな階層にある宝箱などどれだけいいものかわからない。
とりあえずは、まずはモンスターの確認だ。
慎重に進み、遠くにモンスターの姿を確認した。
最初にパッと見たときは、兎の獣人かと思ってしまったが、よく見ればそれは違った。
ウサギの耳かと思ったものは耳ではなく蛾の触覚のようなものだった。
しかし、体型は人型ではなく、ウサギのようで、見える部分の毛皮は真っ白だ。
それに軽装備のようなものをつけている。
疑似兎獣人というところか。
そんな疑似兎獣人は歩きながら洞窟内に転がる小さな小石に遊ぶように魔法を撃ち込んでいる。
その魔法は雷であったり氷であったりと多彩だ。
鑑定をしてみると、疑似兎獣人には名前の記載がなかった。
ただそれ以外の記載はあり、多彩な魔法を繰り出して攻撃をしてくるらしく、近接攻撃は然程得意ではないが、動きがかなり俊敏らしい。
そんな疑似兎獣人が二体だ。
そして残りの四匹は某モンスターをハントするゲームにいるような敵だ。
顔は猫科だが、体はトカゲっぽい。
手足は硬そうな鱗に覆われ、ゴツゴツとしていて、ノッシノッシと歩いている。
背中や顔には毛が生えており、尻尾は真ん中から先にかけてトゲのような鱗が逆立っていて、危険そうだ。
疑似兎獣人が魔法を撃つたびにそちらに視線を向けているので、魔法に対して敏感な気がする。
鑑定した結果は、疑似兎獣人と同じで名前の記載はないが、それ以外は記載がある。
鑑定はスマフォとは違うのか?
とにかく攻撃方法を見てみるか。
攻撃方法はブレス攻撃と、噛みつき、引っ搔き、尻尾による攻撃と、基本的には近接攻撃のようだ。
「名前ねぇのか」
「ああ、多分見たことがないモンスターなのか、一定数以上に認識されていないせいか」
俺がそう説明していると、フィーネが話しかけてきた。
「ねぇルカ」
「ん?」
「名前、今つけてみてはどうかしら?」
「名前を?」
「ええ、誰もみたことがなくて名前がつけられていないのか、それとも一定数以上の認識かはそれでわかるんじゃないかしら?」
「なるほど。じゃあ誰かがつけて、それを俺たちが認識すればつくかもしれないな」
「ふぅん。んじゃ、ルカがつけろよ」
「え、なんでだよ」
「考えるのめんどくせぇし、ルカのが言葉知ってるじゃん」
「ええ……」
「そうね、ルカのセンスに期待するわ」
そう言ってフィーネが笑い、エルナも笑顔で頷いた。
「期待です!」
予想外である。
「まじか……。まぁいいか、今回は俺がつけるけど、次からは誰かがつけてくれよ」
「やなこった」
「そうね、考えてはおくわ」
「思いつかない気がします」
次も俺がつけないといけない流れになりそうだが、そもそも俺が名前をつけても鑑定にはでないかもしれない。
それなら次からはつけなくてもいいし……。
「じゃ、あの疑似兎獣人、とりあえず『マジックラビット』にする」
「マジックラビットか。意味ってあんのか?」
「そのままだな、魔法を使うウサギでマジックラビットだ」
「マジックラビット。いいわね」
「マジックラビットさんですね。覚えました」
全員が認識したところで鑑定をかけてみた。
「うわ、まじか」
「何かしら?」
「鑑定に名前ついてた……」
「ほー。んじゃ名前つけたからかね?」
「そうね、名前として認識したせいか、それとも私たちがそれを名前として認識したかね。ルカ、次は私たちには名前を教えずに一人で名前をつけて認識してみて頂戴」
「ああ、わかった」
あれ、サラッと俺が名付けることになっているが……まぁいいか。
さて、あの某モンスターをハントするゲームにでてきてそうなやつにはなんてつけるか。
そのままはさすがにあれだしな、混ぜてみるか。
あれの名前は『リオクーガ』だ。
よし、鑑定してみよう。
鑑定した結果、名前は記載されていなかった。
「鑑定してみたがないな。一定数以上かもしれない」
「何人以上に認識されたらなのかしらね」
「一人ずつにコッソリ教えてみるというのはどうでしょう?」
「ああ、やってみるか。じゃ、ミハエルにまず教えてみるか」
「おうよ」
俺はミハエルに耳打ちをし、ミハエルは頷いた。
「ミハエル、認識したか?」
「おう、バッチリだぞ」
そうして鑑定してみる。
「お、名前ついたな」
「なるほど、それなら二人以上が認識した時点でってことになりそうね」
「そうみたいだな」
「名前はなんてつけたのですか?」
「『リオクーガ』だ」
「どういう意味なのでしょう?」
「あー、意味はどうだったかな……リオが王様とかなんかそういう意味で、クーガは確か、猫科の肉食獣の名前だったと思う」
「猫の王様ですか。可愛くはないですけど、強そうですね!」
「はは。そうだな。確かに可愛くはないな」
まぁ、あんな猫がいたら恐ろしすぎて近寄れない。
「とりあえず、マジックラビットが魔法戦をしてきて、リオクーガはブレスと近接攻撃か。ミハエル、どうする?」
「んー、俺がウサギのがいいかもしれねぇな」
「わかった。じゃあ俺はリオクーガにいってみるか」
「おう、でも気をつけろよ、ルカ」
ミハエルがこうして俺に警告をしたことなど初めてだ。
これはちょっとやばいのかもしれない。普通に拘束魔法などを使わないと危ないかもしれないな。
「ああ、わかった」
とりあえずリオクーガにダメージは入らなくともとにかく一番速度のあるウインドバレットを撃ち込む。
リオクーガは予想通り、俺のバレットに敏感に反応して素早く避けた。
それでも意識は俺に向いたのでそのまま左側へと俺は動き、リオクーガを左に連れてくることができた。
ミハエルはそんなリオクーガの隣をスルっと抜けてマジックラビットに向かっている。
多分もう見る余裕はなくなる。
ジャベリンを何度も撃ち込んでいるが、リオクーガは俺のジャベリンを尻尾で簡単に弾いている。
尻尾が傷ついている様子もなく、サンダージャベリンによる麻痺も焼け焦げもないようだ。
随分と魔法抵抗が高いようだ。
それが尻尾だけなのか全身なのか。
とりあえず予想以上に動きが速く、魔法への反応速度が高いので、とりあえず足を止めないと攻撃すらまともにできない。
俺は壁を登ろうとしているリオクーガにリストレインを発動する。
リオクーガは壁に登ろうとした状態でピタっと止まった。
そこに頭、背中に向けてサンダージャベリンを撃ち込む。
リオクーガは俺の魔法を避けることなくまともに受け、それは見事に貫通して煙となって消えた。
なるほど、尻尾だけが魔法抵抗が高く、その他はそうでもないわけか。
だからこそあれほど魔法に対して敏感だったわけだな。
だがリストレインのおかげで楽に倒せるようになった。
やはり強力だな。
五秒だけしか足止めはできないが、五秒というのは大きい。
そのまま次のリオクーガにリストレインを発動し魔法を撃ち込もうとしたところで横から強烈な尻尾による攻撃がきた。
しまったと思うが遅く、リオクーガの尻尾が俺を直撃する。
なんとか腕で防御をしたが吹き飛ばされてしまう。
リストレインと魔法を撃つことに意識をもっていき過ぎた。
洞窟の壁にぶつかる寸前に体勢を整え、壁に足から着地し、そのまま壁を蹴って戻る。
右腕はじんじんと痺れてはいるが、問題はない。
今度は油断なく、周囲に意識を向けながら再びリストレインを発動して動きを止めて、ジャベリンを撃ち込む。
リストレインは連続で発動することができないので、一体ずつしか足を止めることはできない。
どれかにリストレインがかかっていると、次のやつに発動しても効果がないのだ。
これは不便ではあるが、どれだけ強い敵であっても五秒足止めできるのだから仕方ないともいえる。
リオクーガの動きに注意しつつ、確実に足を止めてから止めを刺していく。
少し時間はかかったが、なんとか全て倒しきることができた。
俺が全て倒す少し前にミハエルは戦闘を終えていたようだ。
「大丈夫か? ルカ」
「ああ、油断した。すまん」
「おう、気をつけろよ」
ミハエルの注意に頷く。
「ああ。それで、マジックラビットはどうだ?」
「やばいな、あいつ。でも、多分俺でないと無理だな」
「どういうことだ?」
「あの兎、ものすごい魔法抵抗が高いぞ」
「ほう?」
「防御力はたいしたことないみたいだがな、エルナのジャベリンが一度当たったんだが、というか手で止められたんだが、傷一つなかった。むしろ余裕だって感じで手で受け止めてた」
「なるほど」
「あとあれだな、魔法がすげぇわ。ルカ並みに色々撃ってくる。つかジャベリン撃ってきたぞ、あの兎」
「まじか」
「おう、ルカのより小さくて、エルナと同じくらいの大きさだが、アースジャベリンを撃ってきた。他にもあるかもしれねぇが、確認できたのはアースジャベリンだけだ」
まさかこの階層からジャベリンか。
Sランク相当というのは本当だな。
「となると、俺はマジックラビットとやるのは無理だな」
「多分な、動きもめちゃはえーしやばいわ、あの兎。幸いなのは近接攻撃は然程強くねぇってことだな。魔法だけだから避けれるし」
そうケロっと言うミハエルに俺は苦笑しつつ言葉を返す。
「そんなにホイホイ魔法を避けれるのはミハエルとレオンくらいだろ」
「そうかー? こう、なんとなくわかんじゃん」
「俺にはわからんぞ」
「そうか……? まぁいいや、そんでそっちはどうだ?」
「リオクーガは動きが速くて尻尾部分はかなり魔法抵抗力が高い、マジックラビットと同じだな。でも尻尾以外は魔法に強いわけではない。だからこそ魔法に敏感なんだろうが。ま、言えばミハエルとレオンと同じだよ、魔法に敏感に反応して避けてくる。だから足止めをして魔法を撃ちこむしかないな。俺のミスリルの剣では切れないし刺さらん」
「ふむ、ま、それならこのままの振り分けでいいな」
「ああ、俺はこのままリオクーガでいく」
俺がそう言ったところでフィーネとエルナが言った。
「私はマジックラビットに攻撃するわね」
「私はリオクーガですね! 止めはお任せして、牽制と動きの阻害を狙います」
「ああ、二人ともそれで頼む」
誰がどれを担当するか決まったところで再び宝箱を目指して歩き始めた。
距離的に二日後くらいには宝箱にたどりつけるだろう。
しかしこれは俺のようにマップがあるからわかるが、普通ならまず見つからない気がするな。
そう考えると俺の魔法は本当にチートだな。
それでもこれも俺の能力なのだから、よしとしよう。
「さ、行くか」
そうして俺たちは再び歩き始めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,711
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる