追放されて一人になったので全部斬る!

ルノ

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追放少女と戦闘

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ダンジョンの中はひんやりとした乾いた空気に包まれていた。
石造りの通路は細く曲がりくねり、薄暗い光に照らされているだけだった。

「足元、気をつけてね……って言っても、ミナは強いか」

凪咲がそう言った直後だった。

「わっ……!」

ミナがずぼっと床に沈んだ。
シンプルな落とし穴トラップだ。

「えっと……大丈夫?」

凪咲が慌てて手を伸ばすと、ミナは底からぴょこりと顔を出した。
スライム形態に戻っていたため、体は全く傷ついていない。

「へへっ……だいじょうぶ……!」

苦笑しつつ引き上げると、また歩き出す。
だが。

「わああっ! おいしそうなケーキ!」

「待って、幻覚だって――」

言い終わる前にミナは飛び込んでしまい、幻覚が消えると同時に天井の矢がビュンビュンと降り注いだ。
スライム体の彼女は矢に貫かれても、すぐに体をぷるんと震わせ、何事もなかったように復元する。

さらに、曲がり角を曲がった途端。

「きゃっ!」

ミナは勢いよく石柱にぶつかり、倒れてきた柱の下敷きに。
しかし、ぺたんこに潰れても、しゅるんと元に戻る。

「ミナ、ほんとに強いね」

凪咲は呆れ半分、感心半分でつぶやいた。
普通なら即死レベルのトラップの連続。
いや最後のは恐らくトラップですらなかったが。
ミナは、スライム特有の耐久性でまったくの無傷だった。

(この子、すごいのか、すごくないのか分かんないな……)

そんな風に苦笑していたその時だった。

――カシャカシャカシャッ!

乾いた骨の音が、通路の奥から響いてきた。

「モンスターだ!」

現れたのは、ボロボロの鎧をまとった骸骨――スケルトンの群れ。
その数、五体。

ミナは思わず凪咲の後ろに隠れた。
体がぶるぶる震えている。

「大丈夫、私がやる」

凪咲は一歩前に出ると、すっと細剣を抜いた。
無心で、ただ技を極めた己の体にすべてを預ける。

――居合一閃。

銀光が、空気を裂いた。

一瞬の後、スケルトンたちは音もなく崩れ落ちた。
頭蓋骨も、胴も、四肢も、細かく斬り刻まれ、もはや修復すらできない。

アンデッドは多少の損傷では止まらない存在。
だが、ここまで完膚なきまでに斬り裂かれれば、さすがに動けない。

「すごい……!」

ミナがきらきらと目を輝かせた。
凪咲も心の奥で、小さく拳を握る。

(やっぱり……戦うことだけは、私の取り柄だ)

スケルトンの残骸から、素材となる「魔骨のかけら」を拾い集める。
これだけでも、十分街での報酬にはなるだろう。

「よし、行こう、もっと奥へ!」

「うん、おねえちゃん!」

ふたりは再び歩き出す。
まだ見ぬ冒険と、わずかな不安と、そして胸いっぱいの高揚感を抱いて――。
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