追放されて一人になったので全部斬る!

ルノ

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追放少女と迷子

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ダンジョン攻略は、想像以上に順調だった。

巨大な蜘蛛の群れも、凪咲の一太刀で糸ごと切り裂かれ、
階層の境にある炎が吹き出す階段も、ミナがスライム形態になって凪咲を包みこみ、ほとんど無傷で突破した。

さらには、複雑な謎解きが必要な扉の前。

「えいっ!」

ミナが身体を液状にして鍵穴に入り込み、カチャリと簡単にロックを外す。

「あっさりすぎる…」

凪咲は唖然としながらも、頼もしい妹分に思わず微笑んだ。
隠された宝物庫も見つけ、素材と金貨をしっかりと手に入れる。

(これは……今日はすごくいい日かも)

そんな甘い期待すら抱き始めていた。
だが。

「あれ? どっちから来たんだっけ?」

ふと気づくと、周囲の景色に覚えがなかった。

石造りの通路は、どれもこれも似たようなものばかり。
曲がり角も無数にあり、天井には同じような朽ちたシャンデリア。
目印にしていたと思った柱も、気が付けば何本も並んでいる。

「え、えっと……こっち……?」

「おねえちゃん、そっちさっき行かなかった?」

ミナが不安げに凪咲の袖をつまむ。

「……じゃ、じゃあ、あっち!」

適当に進んでみたが、通路の先は行き止まり。
しかもよく見ると、さっき開けた宝箱と同じものがそこにあった。

「………………」

「……まいご?」

ミナが小さくつぶやいた。

「まいごだね……」

凪咲はぺたんとその場に座り込んだ。
これだけ順調だったにもかかわらず、肝心な「帰り道」を全く考えていなかったのだ。

「ど、どううしよう……」

途方に暮れる凪咲。
ミナはそんな彼女を見上げると、にこっと笑って自分の胸に手を当てた。

「だいじょうぶ! おねえちゃん、ミナ、なつかしいにおい、するほうへいく!」

「え……?」

スライムの特性なのか、ミナにはこのダンジョンの空気の流れ、微かな匂いの違いがわかるらしい。
迷ったときは感覚を信じる――それが魔物本来の本能だ。

「うん、ミナを信じよう」

立ち上がった凪咲は、ミナの小さな手をぎゅっと握った。
こうしてふたりは、来た道をたどるのではなく、ミナの本能を頼りに新しい道を選びながら進み始める。

――初めての迷子も、ふたり一緒なら怖くない。

そんな思いを胸に、ダンジョンの奥深くへと歩みを進めていった。

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