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第27話「夏の終わり」
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その日、遥香たちから「帰りにどこか寄っていかない?」という誘いを受けていたが、それを断って校舎の外で彼を待っていた。
(謝らないと……)
今日の昼に香織は水城に対して最低な事をしてしまった。自分の気持ちも正直に得ないまま、周りの友達に流されて結果的に水城を物凄く傷つけた。
午後の授業中もあの時取ってしまった態度の事で頭がいっぱいになってしまい、どうにかしないとと悩んでいた結論に出たのは、早く謝らないと手遅れになってしまうという思いだった。
早く来ないかな、と気持ちを落ち着かせる。そして話しかけるイメージトレーニングを何回か繰り返していると、松田君と話している水城の声が聞こえてきた。
(来る……)
玄関の扉がガチャリと開く。
心を引き締めて、太陽の光を腕で遮りながら出てくる影に手を伸ばそうとしたその時だ。
(あ……)
ーー話しかけてくんな。
食堂を出て行く彼の背中がそう言っていたように、香織と一瞬だけ目が合った水城の瞳は、自分にそう訴えかけているような気がした。
行き場がなくなった伸ばそうとした手をひっこめる。
(水城に……嫌われちゃった……)
正直なところ、食堂で水城の目から視線をそらしてしまった時から薄々勘付いていたが、認めたくなかった。だが今の水城の対応を見てはっきりと自覚してしまった。
その瞬間、これまで我慢してきた涙がぼろぼろと溢れ出してきた。
水城の事は好きだ。今思えば、自分が気づかなかっただけで、勉強合宿で勉強を教えてくれた時から気になっていた。この前も家に突然お邪魔したのに嫌な顔を見せないで、帰りだって暗いのに駅まで送ってくれた。球技大会の時帰りも見ず知らずの女の子の為に自分を犠牲にして助けた姿を見て本当に格好良いなと思った。
それから学校でも知らない内に水城のことが視界に入るようになって、優しい彼の表情を見るたび、よりいっそう好きになった。
(ただ…)
だけど、その好きな人に嫌われてしまった。もしあの時水城は自分にちょっかいなんてかけてないし、あの事故は人を庇ったからだ。と周りの人が信じてくれなくても口に出していたらこんな結末にはならなかったかもしれない。
保身のために取った行動が、結局自分と水城の仲を引き裂いてしまった。
出来る事ならばもう一度水城に会って本心で謝りたい。そして、絶対に振り向いてくれないのは割っているが「好きだ」って言いたい。でもそれが叶う望みではないという事は身に染みて感じている。
香織は行き場のない絶望感と虚無感に包まれて、止まらない涙を必死に拭い続けた。
(謝らないと……)
今日の昼に香織は水城に対して最低な事をしてしまった。自分の気持ちも正直に得ないまま、周りの友達に流されて結果的に水城を物凄く傷つけた。
午後の授業中もあの時取ってしまった態度の事で頭がいっぱいになってしまい、どうにかしないとと悩んでいた結論に出たのは、早く謝らないと手遅れになってしまうという思いだった。
早く来ないかな、と気持ちを落ち着かせる。そして話しかけるイメージトレーニングを何回か繰り返していると、松田君と話している水城の声が聞こえてきた。
(来る……)
玄関の扉がガチャリと開く。
心を引き締めて、太陽の光を腕で遮りながら出てくる影に手を伸ばそうとしたその時だ。
(あ……)
ーー話しかけてくんな。
食堂を出て行く彼の背中がそう言っていたように、香織と一瞬だけ目が合った水城の瞳は、自分にそう訴えかけているような気がした。
行き場がなくなった伸ばそうとした手をひっこめる。
(水城に……嫌われちゃった……)
正直なところ、食堂で水城の目から視線をそらしてしまった時から薄々勘付いていたが、認めたくなかった。だが今の水城の対応を見てはっきりと自覚してしまった。
その瞬間、これまで我慢してきた涙がぼろぼろと溢れ出してきた。
水城の事は好きだ。今思えば、自分が気づかなかっただけで、勉強合宿で勉強を教えてくれた時から気になっていた。この前も家に突然お邪魔したのに嫌な顔を見せないで、帰りだって暗いのに駅まで送ってくれた。球技大会の時帰りも見ず知らずの女の子の為に自分を犠牲にして助けた姿を見て本当に格好良いなと思った。
それから学校でも知らない内に水城のことが視界に入るようになって、優しい彼の表情を見るたび、よりいっそう好きになった。
(ただ…)
だけど、その好きな人に嫌われてしまった。もしあの時水城は自分にちょっかいなんてかけてないし、あの事故は人を庇ったからだ。と周りの人が信じてくれなくても口に出していたらこんな結末にはならなかったかもしれない。
保身のために取った行動が、結局自分と水城の仲を引き裂いてしまった。
出来る事ならばもう一度水城に会って本心で謝りたい。そして、絶対に振り向いてくれないのは割っているが「好きだ」って言いたい。でもそれが叶う望みではないという事は身に染みて感じている。
香織は行き場のない絶望感と虚無感に包まれて、止まらない涙を必死に拭い続けた。
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