魔女の喫茶店

たからだから

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――クラゴの誘拐事件編――

闇と炎と、怒り

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 ギルがアパタイトバードを追い掛けている間ミアは、魔術師と戦っていた。
 妖精を連れた魔術師が2人、残りの3人は妖精が居ないのを見ると2人がノーマジであり、残りの3人が純血の魔術師だろう。
 そして、先程から飛ばしてくる魔術は闇の魔力を感じるものだった。

 魔力を持つ者は属性と言うものがある。光、闇、火、水、風、雷、大地、等何種類もありその属性に特化する事が可能だ。
 闇の属性は元々から持っている者も居れば、染まる者も居る。そうして、闇の魔法使いや魔術師が生まれる。闇が悪い訳では無いのだが、これは昔からの刷り込みのせいかもしれない。
 ミアは匂いを元に属性が何かを調べようと呪文を掛けながら、彼等の攻撃を軽々と躱していく。
トゥラ・キーク・スペル追尾し魔力を示せ
 すぐに細い雲の様な煙が現れると、色は紫と黒が混じった禍々しい色に変色しその先を辿ると彼等が居た。やはり、彼等は闇の魔術師だと。
 彼等が死の使いスノードロップかどうかは分からないが、ミアの推測通りアパタイトバードは何者かに利用されていただけであった、彼等に。

「クソッ!ちょこまかと動きやがって……ッ!」
「私、急いでるのよ。……ちょっと熱いけど、我慢してちょうだい!」
 ミアは詠唱せずに杖を振れば前触れも無く、空に炎が舞ながら魔術師達を囲む。まるで生き物の様な動きで飛び越えられない程高さに燃え上がると、魔術師達は熱さになるべく炎から離れた。
「……じゃあ、さようなら~。また、会いましょう?」
 小さく笑ってヒラヒラと軽く手を振れば、ミアは箒でギルが向かった方向へと走り出す。

 本音を言えばこのまま彼等を石にしてしまい、魔法警察に突き出したかったが、そうもいかなかった。
 魔術師達が追って来たと言う事は既に気付かれてしまっている事になる。そうなってしまえば、子供達がどうなるか分からない。急いで向かわなければいけなかった。
 追い付かれる前に行かなくては、とミアは進むがそう簡単にはいかないらしい。
「悪いが、俺達もこの先には行かれたら困るんだナァ」
 フードのせいか、影のせいか口元しか見えないが気持ち悪い笑みを浮かべているのはミアにも分かった。

 桜も散り梅雨目前だが、夜風はまだまだ肌寒く長袖を着ていて良かった、と考えながらもミアは目の前へと移動して来た男に向けて魔法を放つ。
 どうやらこの男だけがあの場から抜け出せたらしい。
「ねえ、しつこい男は嫌われるって知らない?」
「おっと、危ない危ない。可愛げのねェ女は好かれねェぜ?」
 同時に魔法と魔術を放つが、お互い避けて攻撃しての繰り返しだ。男もミアも動けない様に落下させてしまいたかった。
スターチ石になれ!」
「弾け飛べ!」
 ミアは見えない衝撃波をまるで見えてるかの如く回りながら避けていき、魔術師は瞬間移動の如く一瞬で場所を移動している。
 ミアは杖を魔術師に向けると、杖先から炎が蛇の様に飛び出させた。最初は蛇の様だったが、蛇の形に変わっていきそれは複数に増える。
「そんなもんじゃ俺は落ちねェよ!」

 ミアのすぐ背後に移動して来た魔術師に口角を上げて笑ってやるとミアは、頭を低く下げる。何をしてるかなんて考える暇等なく魔術師の目に映ったのは真っ赤に燃える蛇の姿だった。
 大きく口を開けた蛇から小さな光が飛び出し、魔術師に綺麗に当たると石像の様になっては落下していく。
「今度こそ、さよならね。魔術師さん?」
 落下していく姿を見たミアは急がなければと箒を走らせた。




 ――――
 ――――――


 スピードを上げて箒を走らせていれば空の上で、綺麗な鳥がギルにくっ付いている姿が見えてきては、ミアは目を丸くしてしまう。

「え、何これどう言う状況?」
「やあ、ミアちゃん。無事みたいで安心したよ~」
「いやだから、どう言う状況なの?」
「んー、何か好かれちゃったみたいだね」
 へへ、と普段の色気は何処に消えたのか、幼く笑うギルと大きな頭をギルのお腹に擦り寄せる姿にミアは一体何があって、好かれたのだろうかと数回瞬きした。
 そう言えば、とミアは思い出す。
 アパタイトバードはそもそも、自分が綺麗な見た目だと理解しているからこそ振る舞いも、上品だったりする。故に、綺麗なものがとても好きだ。それが人だったとしても。
「……あー、納得……」
「ん?何が?」
「何でもな、っ……きゃっ!」
 何でもない、と口にしようとしていたが突然アパタイトバードがくっ付いてきて驚いてしまった。
 甘える様な鳴き声に思わず、心が締め付けられるようで、母性本能が擽られてしまう。
「え、も~!綺麗ですって?この~可愛いやつめ~!」
 アパタイトバードの首元に抱き着くと、柔らかく触り心地の良いサラサラな感触に思わず頬が緩んでしまう。

 ギルはその姿を見ては困った様に笑う。
 ミアの見た目はギルから見ても整っている顔立ちだ。学生時代から女子に人気だったギルだが、ミアは男女から好かれるタイプであり、見た目から密かにファンクラブまで立ち上げられていた。
 本人はそれを知っていたか疑問ではあるが、知っていたとしたらただ呆れているだけだろう。
 長い睫毛に白い肌、細身でスレンダーだが出てる所は出ているのだから人気な理由も分かる。
 ギルが学生時代出会った時は、今より幼い顔立ちだったが大人になると可愛いから綺麗になった。
「……ま、俺はアパタイトバードの気持ちは分かるけどね~」
「何それ、意味分からないんだけど?……って!こんな事してる場合じゃないわ!ねえ、子供達を何処に連れて行ったのか案内してくれないかしら?」

 ミアの言葉が本当に分かっているのかアパタイトバードは翼を天高くまで広げると、まるで付いて来いと言うかの様に飛び始めた。
「ギル、行くわよ」
「は~い」
 2人はアパタイトバードの両側を箒に乗って着いて行く。
 ミアは下を見ると、首都ロアーグより離れた森に来ている事に気が付くと森の奥に大きな屋敷が建っているのが目に映る。
 もしかして、と考える前にアパタイトバードはその建物に下りていくのを見てミアもギルも一緒に降下していった。

 かなり大きな屋敷は大きさに似合わないシンプルなもので、森に溶け込ませたいのかまだ新しい建物なのに草や木の枝が巻き付く様に生えており、窓は1つも無かった。
 窓から中の様子を窺いたかったかそれは出来ないらしい。恐らく、それが目的だろうが。
「んー、このまま突っ込んじゃう?」
「子供達が居るなら慎重に行った方が良さそうね。トランク持って来た?」
「勿論、ほらここに」
 ギルはローブの胸ポケットとか何かを取り出すと手のひらに乗せ、ミアに見せる。ギルに持っていて貰ったトランクと同じ物だが、サイズは何倍にも小さくまるでミニチュアの玩具みたいだった。
「……それ出来るんだったら、わざわざ鎖の呪文チェーンしなくて良かったんじゃない?」
「え~、あっちの方がカッコイイでしょ?」
 首を傾げるギルにミアは素直に意味が分からないと思った。男の人のカッコイイの基準はミアには分からない。もしかしたら他人も同じかもしれないが、少なくともギルの言っているカッコイイは大勢の人に伝わらないのではないかと感じる。

「屋根から中を確認して、行けそうなら屋根から行くわよ」
「は~い」
 アパタイトバードは見つかってしまったら何をされるか分からないと、ミアは木の影に連れて行くと姿を見えなくする”透明の呪文スケートン”を掛けた。
 これで安心出来るだろうとミアは先に屋根に座るギルに続き、屋根の上に”ムーヴ移動せよ”の呪文で移動するとトランクの中から緑色の布を取り出した。
 一見ただのハンカチに見えるが、壁を透過して中の様子を伺う事の出来る”覗きハンカチ”と言う物だ。
 ミアは木製の屋根に布を置くと布の部分だけ中が見える様になった。
「な、に……これ……」
 ミアは覗きハンカチから見えた光景に、驚きと恐ろしいものが体中を走り抜ける感覚に襲われた。

 冷たそうな鉄の台に寝かせられた子供達の体には様々な管が通され、眠っているが顔は青白く指先すら動かない。
 ミアは思わず本当に生きているのか疑ってしまう程で、台の横にある丸い硝子の入れ物を見ると中身は真っ赤な液体。ミアはすぐに子供達の血だという事が分かる。

 ――早く、早く、この子達を助けないと……。

 ミアは小さい子供達のあってはならない姿に、拳を強く握り締めたが優しく手が重なる。
「……大丈夫、行こう」
 優しい声にミアは少しだけ、懐かしさを感じながら安心した。
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