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――クラゴの誘拐事件編――
守るもの、守りたいもの
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ミアはトランクから羊皮紙とペンを杖で取り出せば、ペンを走らせた。杖を軽く振ると、羊皮紙は鳥の形になり、飛んでいく。
見届けるミアを見ながらギルは問い掛ける。
「何処に送ったの?」
「魔法警察よ。……私達が助け出せたとしても、この人数を短時間で回復させるのには、限界があるわ。身元も分からないし……」
「じゃあ、警察来るまでにパパッ、と片付けちゃおうか」
笑顔で此方を見てくるギルに、小さな笑みを返した。
弟子にしないし役に立てと言ったが正直、頼りになると思ってしまっている自分に少し驚きを感じたと同時に、慣れている雰囲気を感じた。ミアの勘ではあるが。
――私の勘、当たっちゃうのよね。
困ったものだと、溜息を吐き出しそうになるのを堪えてミアは、極力静かに屋根の上を歩くものの、ヒールで来た事を少し後悔した。
ヒールで動き回るのには何も支障は無いのだが、音に関しては支障があり自分で自分に苦笑いを浮かべてしまう。
覗きハンカチで隅々見たが何処にも魔術師の姿は無く、青白い顔をした子供達の姿だけであった。
「……魔法で隠し部屋作ってたとしても、このハンカチじゃ見きれないわね。しょうがないわ、透明の呪文で中に入っちゃいましょう。中からハンカチで見れば問題無いし」
「……魔法で防御されてなければ、ね」
ギルの言葉に防御されていたらお手上げになってしまうが、ミアはまずは中に侵入し問題無ければ急いで管を抜いてあげる事が最優先事項だと感じていた。
「良い?中に入って、何も問題無ければあの管を抜いて止血して。……血を吸い取って何をしてるかは分からないけど、とにかくあれを止めなきゃ危ない」
「分かった、そうするよ。……ただ、もし中で戦闘になったら危険だけど」
「正直、そうなってほしくないわ。でも、誰も居ないって訳じゃないと思うの。救出メインだから、子供達はギルに任せるわ。……出て来るとしたら、アイツが出て来る筈だから」
ミアは昼間の魔術師を思い出し、少し鋭い目付きに変わるもののすぐに表情を戻すと、早速透明の呪文を掛ける。
「さ、やるわよ」
「俺は師匠に着いて行くだけだよ~」
「……そろそろお口にチャック、させた方が良いのかしら?」
「え~」
緩くふざけて喋るギルに呆れた表情を見せながらも、ミアはしゃがみ込むと屋根に杖を向け、人が通り抜けられる広さの円を描く様に回す。
ゆっくりと紙が焼け広がる時に似ているとギルは見ていて思うが、気付けばそこには綺麗に穴が空いていた。
ミアから先に降りると、肌に触れる空気がとても冷たく外よりもとても、寒く感じた。
――臭いはしないわね……。居ないのかしら?
ミアはあの臭いがしないか、小さく鼻を動かし集中するも血の臭いしか感じ取る事が出来ず、この場所に居ないのでは無いかと考える。しかし、油断は出来ない為ギルが背後に降りて来たのを感じると静かに動き出す。
周りを見て回るミアと、子供達の管を優しく取り外しタオルで止血していくギル。
ミアはまず、天井を確認するが監視カメラや転送装置は見当たらなかった。侵入者が来たらどうするのだろうか、とミアは今の立場を忘れながら考えた。
次に、まだ真新しい筈の建物なのに壁は薄汚れており、血のせいかと優しく壁を触って少し見つめる。
壁に覗きハンカチを当てるとやはり、魔法で別に部屋があったのだ。様々な器具や、液体の入った瓶等が見えるとミアは、実験や研究でもしていたのだろうかと考える。
どうやら人は誰も居ないらしく、今のうちだと覗きハンカチをローブのポケットへと押し込みミアも管を優しく抜いては、止血をしていく。
管は子供達の細い腕に似合わない程太く、中身は見えない様に黒いプラスチック製の管だろう。魔法であればこんな道具は要らない、青白く染まる子供達の顔に思わず鋭い目付きになってしまっていた。
ミアはギルに何処に運ぶか聞かれ普段通りに戻ると、指示をしていた。
――――
――――――
「……ふう。後、少しね」
「警察遅いねえ、早く来てくれた方が助かるのに」
「なるべく早く来てって書いといたから、そろそろ来るとは思うわ。……回復薬は足りそう?」
「んー、微妙かも」
ギルは回復薬の入った袋の中を覗くと困ったような笑みを浮かべて見せた。そんなギルにミアは柔らかな布団に眠る子供達を見つめた。
流石に硬い床で眠らせる訳にはいかずミアは柔らかく、体が沈むような布団を作り出し、床に敷きそのまま子供達を寝かせていた。
血を取られていたのなら貧血の症状が酷いかもしれない、と回復薬を子供達に飲ませていたが別の部屋にも子供達は同じような状態で、簡単に数えると50人程は居るだろう。
薄暗く照明すら青白く感じた室内はとても、静かだった。
「……邪魔をしに来たのか?ミア・リード」
いきなり噎せ返る様な臭いにミアは咄嗟に口を手で覆う。ミアはこの臭いが体臭では無い事は分かっている。恐らく闇の魔力のせいだろう。
「っ……あら、お早いのね」
「その子供達を返してもらおうか」
魔術師はミアの後ろに寝ている子供達の姿を見た。
「……嫌だ、と言ったら?」
「お前を消すだけだ」
両者同じタイミングで魔法と魔術を飛ばすと、ミアはギルに顔を向けずに伝える。
「ギル!防御魔法は出来る!?出来るなら、子供達を守って!」
「分かった!他の子供達も何とかここに連れて来るよ。終わったらすぐに加勢するから……!」
「私の事より、子供達の事を最優先に考えなさい!」
ミアの言葉にギルは小さく、心配そうに頷くと杖を取り出し防御の壁を作り出す。窓ガラスの様に見える膜は、攻撃を防いでくれるのだ。
子供達が全員防御範囲内に居るか確認すると、素早く管に繋がれた子供達の所へ走り出した。
「麻痺しろ!」
魔術は言葉の力も大きく、言葉と強く念じるだけで魔術が出来上がってしまう。魔法と比べるととても簡単だ。
一見魔法の方が簡単ではあるが、不思議で奇跡の力はコントロールの調整、使い方等をきちんと学ばなければいけない。何でも出来てしまうのだから。
ミアは手をこちらにかざし、魔術を飛ばしてくるのを防御魔法で防御したり、バク転のように回りながら避ける。だが、あまり避け過ぎても子供達に当たる可能性がある。防御魔法をしているからと言って完全に安心は出来ない。
「守る物があると大変だな?捨ててしまえばいい。……そうしたら、楽に俺を、殺せるぞ」
突然背後に移動してきた男に、驚き振り向くと青白い照明に照らされた男の顔が見える。不気味な笑顔に背筋に何かが流れる様な、感覚に襲われてしまう。
粘着質な喋り方だが、見た目は若そうで口元の歪み方が気持ち悪いくらい歪んでいた。
まるで、何かを誘う様な言い方の男にミアは横目で子供達を見た。
「……守るものがあるから、強くなれるのよ」
鋭い眼差しで男の瞳を射抜いてやると、ミアは強気な笑みを浮かべ杖を振る。
「スターチ!」
慌てて後ろに下がる男の腕に魔法が当たると、石になっていく。しかし、男は自らの腕を切り落とし魔法を無効にしてしまった。
ミアはあまりの出来事に目を見開き驚いてしまう。何て男だ、と。肘上から切り落とされた腕はローブに隠れるものの、赤い水溜まりになったそこには小さな音を立てて落ちていく赤い、滴が見えた。
痛がる様子もなく、ただ不気味に笑う姿にミアは本能的に関わってはいけない人種だと察する。何かが壊れている人物程、怖いものは無い。
「……っ、嘘でしょ……」
「そう、俺には守るもんはねえ。……家族も友人も、自分の体さえも捨てた。だって、楽だもんなあ!?ぜーんぶ、捨てちまえば楽なんだってよぉ!」
まるで腕が無くなった事を楽しんでるが如く、ケラケラと笑う男の目は虚ろだった。光は無く、影のみでまるで、闇。
「ミアちゃん!」
「子供達は?」
「全員あそこに。……俺も加勢するよ」
「ギルは子供達の事を気にかけながらでお願い。私は、全力でアイツと戦うわ」
「うわ、何アレ……腕無いじゃん……。キモイ……」
何処かの若い女の子の様な反応を見せるギルに、場の雰囲気に合っていないと深い溜息を吐き出すものの、杖を構え2人で並ぶ。
何も言わず、同時に攻撃魔法と魔術を投げ合い、ぶつけ合う。ミアは、そんな中無言呪文で戦えるギルの姿が気になるものの、まずは目の前に集中しなければと真っ直ぐ前を見つめた。
「お前には守るものがある、だから!俺をすぐに殺れない」
「悪いけど、私はアンタみたいな魔術師殺す悪趣味してないのよ!」
ミアと男の距離が徐々に近付く。ギルは背後からミアの援護をしつつ、後ろの子供達に目をやっていた。
ミアは腕すらも雑に捨ててしまえる男に、その言い分にまるで自分とギルを馬鹿にされている感覚になった。腹の底から湧き上がる怒りに、ミアは思い切り男の胸ぐらを掴む。
「良い?馬鹿なアンタに1つ、教えてあげるわ。人はね、守るものがあるからこそ強くなろうって思える。頑張れるもんなのよ。アンタみたいに、何も無いって諦めてる奴が!語ってんじゃないわよ!」
杖を男の額に力強く、突き刺すように当ててやれば睨み付ける。
守るものが無い奴に強くなる程の度胸はない、言い方を変えれば臆病なのだ。ミアは家族を失ったあの日がフラッシュバックの様に、鮮明に蘇る。2度と失いたくない、恐れる気持ちはあるがそれでも、ミアは残り少ない大切なものを守りたかった。
「これで、終わりよ」
ミアは言葉と同時に魔法を放とうとした瞬間、扉が勢い良く開かれる。月明かりが射し込むせいか、顔は見えないが複数のシルエットを確認する事が出来た。
「ありがとよ!警察さん」
「……あっ、ちょっと、待ちなさい……ッ!」
驚き、意識を扉の方に集中させてしまったせいか、軽々と抜け出されてしまった上に男は瞬間移動でもしたのか、その場から一瞬で消え去ってしまった。
見届けるミアを見ながらギルは問い掛ける。
「何処に送ったの?」
「魔法警察よ。……私達が助け出せたとしても、この人数を短時間で回復させるのには、限界があるわ。身元も分からないし……」
「じゃあ、警察来るまでにパパッ、と片付けちゃおうか」
笑顔で此方を見てくるギルに、小さな笑みを返した。
弟子にしないし役に立てと言ったが正直、頼りになると思ってしまっている自分に少し驚きを感じたと同時に、慣れている雰囲気を感じた。ミアの勘ではあるが。
――私の勘、当たっちゃうのよね。
困ったものだと、溜息を吐き出しそうになるのを堪えてミアは、極力静かに屋根の上を歩くものの、ヒールで来た事を少し後悔した。
ヒールで動き回るのには何も支障は無いのだが、音に関しては支障があり自分で自分に苦笑いを浮かべてしまう。
覗きハンカチで隅々見たが何処にも魔術師の姿は無く、青白い顔をした子供達の姿だけであった。
「……魔法で隠し部屋作ってたとしても、このハンカチじゃ見きれないわね。しょうがないわ、透明の呪文で中に入っちゃいましょう。中からハンカチで見れば問題無いし」
「……魔法で防御されてなければ、ね」
ギルの言葉に防御されていたらお手上げになってしまうが、ミアはまずは中に侵入し問題無ければ急いで管を抜いてあげる事が最優先事項だと感じていた。
「良い?中に入って、何も問題無ければあの管を抜いて止血して。……血を吸い取って何をしてるかは分からないけど、とにかくあれを止めなきゃ危ない」
「分かった、そうするよ。……ただ、もし中で戦闘になったら危険だけど」
「正直、そうなってほしくないわ。でも、誰も居ないって訳じゃないと思うの。救出メインだから、子供達はギルに任せるわ。……出て来るとしたら、アイツが出て来る筈だから」
ミアは昼間の魔術師を思い出し、少し鋭い目付きに変わるもののすぐに表情を戻すと、早速透明の呪文を掛ける。
「さ、やるわよ」
「俺は師匠に着いて行くだけだよ~」
「……そろそろお口にチャック、させた方が良いのかしら?」
「え~」
緩くふざけて喋るギルに呆れた表情を見せながらも、ミアはしゃがみ込むと屋根に杖を向け、人が通り抜けられる広さの円を描く様に回す。
ゆっくりと紙が焼け広がる時に似ているとギルは見ていて思うが、気付けばそこには綺麗に穴が空いていた。
ミアから先に降りると、肌に触れる空気がとても冷たく外よりもとても、寒く感じた。
――臭いはしないわね……。居ないのかしら?
ミアはあの臭いがしないか、小さく鼻を動かし集中するも血の臭いしか感じ取る事が出来ず、この場所に居ないのでは無いかと考える。しかし、油断は出来ない為ギルが背後に降りて来たのを感じると静かに動き出す。
周りを見て回るミアと、子供達の管を優しく取り外しタオルで止血していくギル。
ミアはまず、天井を確認するが監視カメラや転送装置は見当たらなかった。侵入者が来たらどうするのだろうか、とミアは今の立場を忘れながら考えた。
次に、まだ真新しい筈の建物なのに壁は薄汚れており、血のせいかと優しく壁を触って少し見つめる。
壁に覗きハンカチを当てるとやはり、魔法で別に部屋があったのだ。様々な器具や、液体の入った瓶等が見えるとミアは、実験や研究でもしていたのだろうかと考える。
どうやら人は誰も居ないらしく、今のうちだと覗きハンカチをローブのポケットへと押し込みミアも管を優しく抜いては、止血をしていく。
管は子供達の細い腕に似合わない程太く、中身は見えない様に黒いプラスチック製の管だろう。魔法であればこんな道具は要らない、青白く染まる子供達の顔に思わず鋭い目付きになってしまっていた。
ミアはギルに何処に運ぶか聞かれ普段通りに戻ると、指示をしていた。
――――
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「……ふう。後、少しね」
「警察遅いねえ、早く来てくれた方が助かるのに」
「なるべく早く来てって書いといたから、そろそろ来るとは思うわ。……回復薬は足りそう?」
「んー、微妙かも」
ギルは回復薬の入った袋の中を覗くと困ったような笑みを浮かべて見せた。そんなギルにミアは柔らかな布団に眠る子供達を見つめた。
流石に硬い床で眠らせる訳にはいかずミアは柔らかく、体が沈むような布団を作り出し、床に敷きそのまま子供達を寝かせていた。
血を取られていたのなら貧血の症状が酷いかもしれない、と回復薬を子供達に飲ませていたが別の部屋にも子供達は同じような状態で、簡単に数えると50人程は居るだろう。
薄暗く照明すら青白く感じた室内はとても、静かだった。
「……邪魔をしに来たのか?ミア・リード」
いきなり噎せ返る様な臭いにミアは咄嗟に口を手で覆う。ミアはこの臭いが体臭では無い事は分かっている。恐らく闇の魔力のせいだろう。
「っ……あら、お早いのね」
「その子供達を返してもらおうか」
魔術師はミアの後ろに寝ている子供達の姿を見た。
「……嫌だ、と言ったら?」
「お前を消すだけだ」
両者同じタイミングで魔法と魔術を飛ばすと、ミアはギルに顔を向けずに伝える。
「ギル!防御魔法は出来る!?出来るなら、子供達を守って!」
「分かった!他の子供達も何とかここに連れて来るよ。終わったらすぐに加勢するから……!」
「私の事より、子供達の事を最優先に考えなさい!」
ミアの言葉にギルは小さく、心配そうに頷くと杖を取り出し防御の壁を作り出す。窓ガラスの様に見える膜は、攻撃を防いでくれるのだ。
子供達が全員防御範囲内に居るか確認すると、素早く管に繋がれた子供達の所へ走り出した。
「麻痺しろ!」
魔術は言葉の力も大きく、言葉と強く念じるだけで魔術が出来上がってしまう。魔法と比べるととても簡単だ。
一見魔法の方が簡単ではあるが、不思議で奇跡の力はコントロールの調整、使い方等をきちんと学ばなければいけない。何でも出来てしまうのだから。
ミアは手をこちらにかざし、魔術を飛ばしてくるのを防御魔法で防御したり、バク転のように回りながら避ける。だが、あまり避け過ぎても子供達に当たる可能性がある。防御魔法をしているからと言って完全に安心は出来ない。
「守る物があると大変だな?捨ててしまえばいい。……そうしたら、楽に俺を、殺せるぞ」
突然背後に移動してきた男に、驚き振り向くと青白い照明に照らされた男の顔が見える。不気味な笑顔に背筋に何かが流れる様な、感覚に襲われてしまう。
粘着質な喋り方だが、見た目は若そうで口元の歪み方が気持ち悪いくらい歪んでいた。
まるで、何かを誘う様な言い方の男にミアは横目で子供達を見た。
「……守るものがあるから、強くなれるのよ」
鋭い眼差しで男の瞳を射抜いてやると、ミアは強気な笑みを浮かべ杖を振る。
「スターチ!」
慌てて後ろに下がる男の腕に魔法が当たると、石になっていく。しかし、男は自らの腕を切り落とし魔法を無効にしてしまった。
ミアはあまりの出来事に目を見開き驚いてしまう。何て男だ、と。肘上から切り落とされた腕はローブに隠れるものの、赤い水溜まりになったそこには小さな音を立てて落ちていく赤い、滴が見えた。
痛がる様子もなく、ただ不気味に笑う姿にミアは本能的に関わってはいけない人種だと察する。何かが壊れている人物程、怖いものは無い。
「……っ、嘘でしょ……」
「そう、俺には守るもんはねえ。……家族も友人も、自分の体さえも捨てた。だって、楽だもんなあ!?ぜーんぶ、捨てちまえば楽なんだってよぉ!」
まるで腕が無くなった事を楽しんでるが如く、ケラケラと笑う男の目は虚ろだった。光は無く、影のみでまるで、闇。
「ミアちゃん!」
「子供達は?」
「全員あそこに。……俺も加勢するよ」
「ギルは子供達の事を気にかけながらでお願い。私は、全力でアイツと戦うわ」
「うわ、何アレ……腕無いじゃん……。キモイ……」
何処かの若い女の子の様な反応を見せるギルに、場の雰囲気に合っていないと深い溜息を吐き出すものの、杖を構え2人で並ぶ。
何も言わず、同時に攻撃魔法と魔術を投げ合い、ぶつけ合う。ミアは、そんな中無言呪文で戦えるギルの姿が気になるものの、まずは目の前に集中しなければと真っ直ぐ前を見つめた。
「お前には守るものがある、だから!俺をすぐに殺れない」
「悪いけど、私はアンタみたいな魔術師殺す悪趣味してないのよ!」
ミアと男の距離が徐々に近付く。ギルは背後からミアの援護をしつつ、後ろの子供達に目をやっていた。
ミアは腕すらも雑に捨ててしまえる男に、その言い分にまるで自分とギルを馬鹿にされている感覚になった。腹の底から湧き上がる怒りに、ミアは思い切り男の胸ぐらを掴む。
「良い?馬鹿なアンタに1つ、教えてあげるわ。人はね、守るものがあるからこそ強くなろうって思える。頑張れるもんなのよ。アンタみたいに、何も無いって諦めてる奴が!語ってんじゃないわよ!」
杖を男の額に力強く、突き刺すように当ててやれば睨み付ける。
守るものが無い奴に強くなる程の度胸はない、言い方を変えれば臆病なのだ。ミアは家族を失ったあの日がフラッシュバックの様に、鮮明に蘇る。2度と失いたくない、恐れる気持ちはあるがそれでも、ミアは残り少ない大切なものを守りたかった。
「これで、終わりよ」
ミアは言葉と同時に魔法を放とうとした瞬間、扉が勢い良く開かれる。月明かりが射し込むせいか、顔は見えないが複数のシルエットを確認する事が出来た。
「ありがとよ!警察さん」
「……あっ、ちょっと、待ちなさい……ッ!」
驚き、意識を扉の方に集中させてしまったせいか、軽々と抜け出されてしまった上に男は瞬間移動でもしたのか、その場から一瞬で消え去ってしまった。
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