魔女の喫茶店

たからだから

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―レッド・ブラットの兄妹編―

空色が進む先に

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 エミリアの依頼により稀血レッド・ブラット兄妹を探す事になり、探す方法を決めたのは良いが、ギルは肝心のアパタイトバードをどうするか気になっていた。誘拐事件後、透明の呪文スケートンを解いたミアは魔法警察にアパタイトバードを預けていたのを見ていた。しかし、その後どうなったかは知らない。
「ミアちゃん、アパタイトバードはどうやって連れて来るの?」
「あ、そっか。ギルには言ってなかったわね。あの後ルークに保護をお願いしたのよ。魔法政府の管理する森でね。……もしかしたらまた、利用されちゃうかもしれないし、そうなったら可哀想でしょ?」
 優しく微笑むミアに納得すると、ギルは相変わらず優しいのだなと小さく笑う。

「さ、当日に備えて魔法薬沢山作るわよ。手伝ってもらえるかしら?」
「勿論、師匠」
「……いつになったらその呼び方やめてくれるのよ……」



 ――――
 ――――――



 当日までの間、ミアとギルは喫茶店を営業しながら魔法薬を作っていた。魔法薬はあまり得意ではないのか、時々失敗しては怒られる風景をロドリィ含めた常連客に笑われたりしていた。
 普段から作る物は仕方ないと、ミアはある程度教え込めば覚えは良いのかすぐに失敗せず作れるようになった。要はやる気なのだとミアは感じた。

 ミアは黒のスキニーパンツ、薄い長袖の裾が広がった服の上から黒いローブを羽織る。相変わらずヒールなのだから、ギルは凄いと眺める。
 トランクに荷物をしまい込み、ギルに小さくしてもらうとエミリアとの合流場所に向かった。魔法政府が管理する森である。
 魔法政府が管理する土地は基本、ノーマジが立ち入る事の出来ない魔法界だ。移動術で向かうと、そこにはルークの姿があった。
「あれ?どうしたの、こんな所で」
「ああ、お前らか。たまたま用があってな」
 背後から声を掛けられ少し驚いた様子を見せたルークにミアは少し不思議に思うが、此方に近寄って来て小さく呟くように耳打ちしてきたルークに横目で見る。
「……話は聞いた。俺達も出る幕があると思うが、気を付けておけ」
「……そうね、気を付けておくわ。貴方の下手な運転には」
「あのなあ……ったく、あー、あれだ。あれは忘れろ。じゃあな」
「語彙力無くなってんじゃない。何処行ったのよ。はいはい、忘れれたら忘れておくわ」
 ミアは悪戯な笑みで言葉を返すと、1度乗せてもらったルークの魔法車マジッカーを思い出すが、あれはとても酷かった。正直、落ちて死ぬかと思った、といつも言っているくらい酷いのだ。

「あの人何言ってきてたの~?」
 背後から顔を覗き込む様に顔を出してくるギルに驚きつつ、顔を手で退かし歩き始めた。小さな声でミアは呟くと、ギルの耳にはしっかり聞き取れていた。
「気を付けろ、ですって」
 ミアとギルは一面自然に囲まれ、綺麗な空気に少し気分が和らぐと共に風に吹かれて、空色スカイブルーの輝きが流れて来た。アパタイトバードが居るのだろうと足を進めれば、空色スカイブルーに輝く大きくて、とても綺麗な鳥に抱き着く人物を見て苦笑いを浮かべた。

「あー!ミアにギルくーん!こっちー!」
「エミリア、アンタまた何やってんの……?」
「抱き着かせてって言ったら、抱き着かせてくれたんだよ~!も~、可愛い~!」
 触り心地が良いからだろうか、羽に思い切り顔を埋めるエミリアの姿に相変わらずだと、息を短く吐き出したく。
「久しぶりね、アパタイトバード」
「うおっ、相変わらずくっ付いてくるねえ~。あー、分かったよ。頭撫でてあげるからそんなにグリグリするなって」
 ギルに突進するかの様に頭を擦りつけているアパタイトバードの姿を見ていたミアだったが、次は此方を向き目が合う。あ、と声を出す前に勢い良く飛び付く様に来られると思わずバランスを崩す。
「わっ!び、びっくりした。……もう、甘えたさんね。今日は私達に協力してくれるかしら?」
 ミアはアパタイトバードの頭を優しく撫でながら問い掛けると、小さく頷いた気がした。







「ねえ、エミリアもう1度聞くけど大丈夫?」
「も、勿論!大丈夫だってばー!心配しないで、ね?」
「……途中でダメだと思ったら後ろに乗せるからね」
「……えーっ、と……それなら、後ろに乗らせてもらいます」
 ギルは2人のやり取りをアパタイトバードと不思議そうに見つめていた。
「あ~、ごめんけど、どうしたの?」
「エミリア箒に乗るのヘタクソなのよ。流石にアパタイトバードに付いて行くのは無理でしょ?」
「なるほどね~、確かにそれは後ろに乗ってた方が安全だ」
「そう言うこと。さ、アパタイトバードこの匂いを辿ってくれる?」
 ミアはローブのポケットから小さくて透明な瓶を取り出すと、嗅がせる。中身はエミリアが保管庫から持って来てくれた、彼等の部屋の破片だ。匂いが染み付いている筈だと考えたミアは、アパタイトバードに辿ってもらおうと持って来てもらったのだ。
 アパタイトバードは小さく鳴くと、イルビアへ戻る為再び移動術で戻るのだった。





 ――――
 ――――――



 アパタイトバードのスピードに付いて行くと速いもので、首都ロアーグからかなり離れた森まで来た。
 国境付近で木々と崖が沢山存在している場所で、ミアはアパタイトバードが降下していくのを視界に入れると、ギルと顔を合わせアパタイトバードに続いた。
 降下していくのが怖いのか、ミアの細い腰に回していたエミリアの腕に力が入るのが分かると、なるべく怖がらせる事がないように下りていく。

「……そこから匂いがするのね。ありがとう、助かったわ」
「こ、怖かった~……」
 アパタイトバードはミアに羽を撫でられると気持ち良さそうに、目を細めた。
 アパタイトバードの示す場所は木々に囲まれた場所ではなく、崖の上だった。ミアは木々に囲まれ隠れてそうな場所よりもわざと、開けた場所で隠れているのだろうと見つめた。
「っと、これから何するの?ミアちゃん」
「トランク出してくれるかしら?」
 箒から降り隣に立つギルに顔を向けたミアは、トランクの中に入った物を使おうとトランクを元の大きさに戻してもらう。
 杖で開くとピンポン玉くらいの大きさの、白い玉を取り出すと何も無い場所へと投げたが、何かに触れた様に弾け飛んできた。
 ミアが投げたのは空間魔法に触れれる魔法具で何処に空間魔法を使っている事が、一目で分かる道具だ。ただ、壊す事は出来ない為あくまでも、場所を知りたい為だけの物になる。

「お~、ビンゴ~」
「ミア、この後は何するか決まってるのー?」
「そうね、取り敢えず何個か道具を試してみようとおも……」
 ミアが言葉を紡ごうとしたが、それは叶わなかった。何故なら、いきなり目の前に可愛らしい少女が現れたからである。
「「「……え?」」」
 驚きと共に3人の声が綺麗に揃ったが、誰もそれを気にする者は居なかった。幼い顔立ちの少女はアパタイトバードを見ると、嬉しそうに笑い走って抱き着いたがその姿を3人は目で追っていく。

「え、な、なにあれ。そんなすんなり出て来て良いわけ?」
「え、俺に聞かれても……いきなり過ぎと言うか、あっさりし過ぎと言うか……。隠れてないとダメなんじゃないの、ねえ?」
「え、あたしもう、ちょっと分かんない」
 困惑する大人3人に目もくれず少女は、アパタイトバードと見つめ合い可愛らしい笑顔を浮かべて話し掛けた。
「そう!この人達が助けに来てくれたんだね、鳥さんありがとう!……匂いをかいできた?えー!鳥さんすごーい!」
 まるで会話をしている様な姿にミア含め、3人とも驚き目を見合せればエミリアは少女の心の声を聞いた。


 ――魔術師さんに酷いことされてたんだね……可哀想……。

 聴こえてくる声はどれも、アパタイトバードの過去の事でありエミリアは驚きの表情を浮かべると、自分と同じ心眼術の持ち主なのかと見つめる。
「ねえ、貴女もしかして……」
「お前ら!マリアに近付くな!殺すぞ……ッ!」
 ミアが話し掛けようとした時だった、何も無い空間から抜き出てきたように現れた少年が、此方に杖を向けて叫ぶ。
 妹を背に守ろうとする姿にミアは、笑みを浮かべゆっくりと近付き手を差し伸べた。

「私は、ミア・リードよ。貴方達を保護しに来た魔法使い、よろしく」
 手を差し伸べられた少年が、手を差し伸べる事はなくただただミアを睨み付けていた。ハニーブラウンの瞳は憎しみの色が見えて、ミアは少し悲しそうな表情を浮かべて少年を見つめていた。
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