魔女の喫茶店

たからだから

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―レッド・ブラットの兄妹編―

現れたのは

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 ミアは朦朧とした意識の中、ギルの焦った顔、エミリアの泣きそうな顔、ビルの不安そうな顔そして、マリアの心配する顔が霞んで見えた。
 心配しないで、と口を動かしたかったがミアにはそれが出来なかった。浅く呼吸を繰り返すしか出来ず、守ると決めたのに情けないと自分をわらう。

 マリアと共に落下してきたのをギルが風で受け止めたものは良いが、ギルには毒を解毒する薬がどれか分からずにいた。
 魔法薬をきちんと学べば良かったと後悔しても、遅い。
「ミアちゃん! ……クソッ、どれが解毒薬か分からない……っ!」
「ミア! ミア! お願い、やだよぉ!」
 慌てる姿の2人を気にせず魔術師は囲んでくると、エミリアはビルとマリアを庇うように背後に隠し、杖を構える。その手は震えていた。
 ミアの事は心配だが、必死に奪い返したマリアを守らなければと魔術師達を涙目で睨み付ける。
「諦めてその子供ガキを寄越せ」
「絶対に嫌!」
「……ならば消えるが良い」
 魔術師はエミリアに手をかざすと、魔術を飛ばそうとした。しかし、魔術師は魔術を飛ばす前に石になってしまった。

「この場に居る魔術師は動くな!」
 辺りに響く声の方にギル達は顔を向けると、勝色かちいろの制服を来た集団の先頭にルークの姿が見えた。
 魔法警察達が魔術師を囲むように現れると、一斉に杖を魔術師達に向けた。
 魔術師達は背後に現れた魔法警察に驚きを隠せずに居たが、逃げようと魔術を発動しようとした時全身を鎖の呪文チェーンでしっかり、拘束されてしまった。
「ルークさん!」
 エミリアはルークの姿を見ると安心した様に、胸を撫で下ろした。
「……すまない、遅くなった」
 ルークはギル達に近付くと、青白くなったミアを見て驚いた表情を浮かべる。
「おい、どうした!」
「……魔術師の毒に当たって……」
 エミリアは長い睫毛を震えさせるミアを見つめては、血の気が引いた様な青白さに大事な親友を失ってしまうのでは、と恐怖に襲われた。

「解毒薬は無いのか!?」
「ミアちゃんが特別に作ってたやつを持って来たから、どれが解毒薬か分からないんだ……」
 ギルはトランクの中にあるあらゆる瓶を見るものの、色と匂いで判別出来る程詳しくなく、どれを飲ませれば良いのか分からなかった。
「なんだと……? おい! 救護班を急いで呼べ!」
 ルークは部下にそう叫ぶと、部下は頷きその場から移動術で消えた。
 ビルとマリアは静かに顔を合わせると、ミアに近付きしゃがみ込んで顔を見つめる。
 必死に自分を守ろうとしてくれたミアの姿を脳裏に浮かべたマリアをは、いつも誰かに守られていたのだと考える。
 両親や兄、そしてミア達。そんな人達の力になりたいとマリアは考える。
「……お兄ちゃん、お願い」
「ああ、分かった」
 ビルはマリアに頷いて見せると、剣の様な形をした杖で差し出されたマリアの腕を傷付ける。痛みにマリアは眉を寄せたが、我慢すると真っ赤な血が腕を伝い流れてくる。

「……おい、まさか……」
 ルークは目を見開き兄妹の行動を見たが、ビルの此方を見つめる瞳に黙るが、エミリアはただ首を傾げていた。そして、ギルは静かにその光景を見つめる。
「……お姉ちゃん、ありがとう。待っててね、すぐ良くなるよ」
 マリアは先程までの涙を拭うと、優しく微笑みながら滴り落ちる血をミアの口に落とす。
 ミアの乾いた唇の隙間に吸い込まれる様に落ちた血は、ミアの体の中に入っていく。周りに居る者全てがその光景を静かに見つめていた。
 唯一動いているのはアパタイトバードくらいだろう。
「……稀血レッド・ブラットよ、毒を全て消しされ」
 マリアが祈るように両手を握り合わせると、目を瞑り言葉を発すればその言葉に反応するが如くミアは眩い光と、風に包まれた。
 周りに居た者は風に舞い上がる砂埃に思わず目を庇いながらも、薄く目を開いて伺っていた。

「……っ、もしかしてこれって……」
 エミリアは目の前の光景に驚きを隠せずにいたが、稀血レッド・ブラットの力なのかと凝視する。
 稀血レッド・ブラットはどんな病気でも、怪我でも治せてしまう。無くなった体の一部すらも。世界でただ1人だけが持つとされている血の力に欲しがる理由も分かる、とエミリアは少しばかり納得してしまう。
「……っ、ん」
 ミアは体の痛みと共に苦しさが消え去ると、目をゆっくりと開いた。意識が朦朧としていたのは覚えているが、その後どうなっていたのかは分からずルークの姿が目に映ると驚きの声を上げながら体を起こす。
「……あ、れ?え、何でルークが居るのよ……」
「ミア!良かった……っ!本当に良かったよぉ~!」
「っわ!」
 ミアは勢い良く抱き着いてくるエミリアに再び驚きながら周りを見渡すと、魔法警察によって捕らえられた魔術師達の姿があった。
 何が起きたのかとミアは理解が出来ずにいた。
「……えーっと、これ、何が起きたの?」
「毒の魔術に当たっちゃったんだよ、ミアちゃん。それで丁度、魔法警察が来て捕まえてくれたんだよ~」
 ギルの説明にミアはマリアを抱き締めたまま、落下した事を思い出してはマリアをエミリアの肩越しに見る。
「もしかしてだけど、マリアちゃん血を使ったの?」
「……うん、私を必死に助けてくれたから……。ありがとう」
 小さく笑うマリアを見たミアは、エミリアをそっと体から離すとマリアの頭を撫でた。

「礼を言うのは私ね、本当にありがとう。……ごめんね、血を使わせちゃって」
「良いの!……マリアいつもお兄ちゃんに守ってもらってばっかだもん……。私もね、人の役に立ちたいの!」
「きっとマリアちゃんなら出来るわよ。早速私の役に立ってくれたしね」
 ミアはウィンクをマリアに向けてすると2人でクスクス笑った。
 そんな2人を見つめていたギルは後ろから優しく抱き締めると、心の底から安心した様に言うと抱き締められた本人はいきなりの事に戸惑ってしまった。
「……本当に、良かった……」
「え、あ…えーっと、ギル……?」

「……取り込み中悪いが、この2人の家を少し調べさせてくれないか?」
 ルークは少し気まずそうに声を掛けると、ビル達の家を指差しながら問い掛けとビルはルークを見つめた。
「……どうして?」
「君達のご両親が、稀血レッド・ブラットに関して何か手掛かりを残してるかもしれん。……君達は何かご両親から聞いてるか?」
 問い掛けられたビルは少し考える、両親から聞いた情報はマリアの血が特別だと言う事と英雄についてだ。他に何かあっただろうか、と考えていた時ふ、と思い出す。
 亡くなる直前に母親から来るべき時が来たら見せる、と言っていた書物がある、と。
「そうだ、母さんが書物があるって言ってた。……隠れる為に色々本とかは持って行ったんだけど殆どが、何か魔法を使わないと見れないようになってたんだ」
「書物……?すまんがその書物、俺に預けてくれないか?君達の事については知っておかなければならない、守る為にも。協力してくれないだろうか?」
 ルークはビルの前にしゃがみ込むと真剣な表情で頼む。稀血レッド・ブラットに関しては謎な事が多く、それを知る術は殆ど無いと言っていい。知る者は全て、消されてしまったのだから。
「……分かった」
 ルークの言葉と表情にビルは素直に頷くとルークは優しい笑みを浮かべて、ビルの頭を軽く置いて撫でる。

「マリアちゃん、血が止まってない……。止血しよっか!」
「うん! ありがとう!」
 エミリアはマリアの細い腕から流れ続ける血を見ては、ハンカチを取り出し拭いてやるとミアから渡された絆創膏を優しく貼る。
 地面には数滴の血が落ちていた。それを魔術師おとこがしっかり見ていた事には誰も気付いてはいなかった。


「……”ライト光れ”!!!!」
 何者かの声と共にその場は眩い光に照らされ、誰もが目を開けれずに居た。
 ミアはすぐに気付く、嫌な臭いがすぐ側に近付いてきた事を。
「きゃっ! 何!?」
 エミリアの声にミアは何が起きているか確認したかったがそれは出来ずに、手を伸ばすと何かに触れた。ミアは布の生地にローブかと思うものの、すぐに手を振り払われてしまった。
「……稀血レッド・ブラットは頂く」
 声は聞き覚えのある声だった。そう、魔術師おとこだ。ミアは察した。エミリアがマリアの血を拭き取ったハンカチを奪ったのだと。
 そもそも彼等の目的は血さえ手に入れば良かったのだ。それが例え数滴でも、ハンカチに染み付いていても。魔法や魔術でハンカチから血を吸い出す事は可能だ。
 油断してしまった事を後悔しつつもミアは弱まった光に気付き、目を開く。

「……皆、逃げられたわね」
「ああ……やられた」
 ミアとルークは辺りを見ると全ての魔術師はその場から居なくなってしまっていた。そして、マリアの血が落ちていた部分も無くなってしまった。
 ルークはその光景に眉を寄せ、睨み付ける。部下達を。


 ――今のは、魔術師じゃないな……。
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