魔女の喫茶店

たからだから

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―レッド・ブラットの兄妹編―

懐かしい場所

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 ミア達はビルとマリアの家の中を見て回っていた。
 どうやら地下を魔法で作っていたらしく、その地下に沢山の書物が置いてあったのだ。
「……わー、意外と結構あるのね」
「あたし本苦手なんだよね~。頭痛くなっちゃう」
「そうね、エミリアは教科書全然読んでなかったもの」
 ミアは乱雑に置かれた本を1冊手に取りながら笑うと、ギルが手に持っていた本を見せてくる。
「これじゃない?魔法が掛かった本って。他にもあるみたいだけどね~」
「……ほんとね、ビクともしないわ」
 ギルから本を貰うと開こうとしたが、まるで石のように固く閉ざされており、開く事は叶わなかった。どんな魔法を掛けているのか調べてもらわなければ、とルークに見せる。
「ルーク、これ貴方達で調べるんでしょ?」
「あ、ああ、そのつもりだが」
「……本当に信用して良いのかしら?」
 ミアはルークを見ながら先程の出来事を思い出した。

「え、何どう言う事?」
 真剣な表情で見つめ合う2人をエミリアは分からない、と交互に見ては説明を求める。
「だって、さっきのは魔術師がしたわけじゃないでしょ?……あれは、魔法よ。あの場に居た魔法使いは私達と、貴方達魔法警察だけよ」
「ま、待って! もしかしたら、アイツらの中に魔法使いが隠れてたかもよ?」
「……もし、隠れていたとしたら捕らえられた時点で鎖の呪文チェーンを解けてた筈よ。わざわざ捕らえられたフリをする必要がある?」
「た、確かに……」
 エミリアはミアの言葉に納得した。確かに魔法使いならば鎖の呪文チェーンを解けない訳が無い。強度や魔力によるが、少なくとも闇の魔法使いであればあの場をどうにか出来ている。
 魔法に掛けられたものを魔術で解くのは難しい。逆も然りだ、魔術が掛かったものを魔法で解くのは難しい。しかし、同じ魔法同士や魔術同士ならば解くのは簡単だ。お互い方法を知っているから。
 魔力や知識、技術でも変わるが基本はそうなのだ。

「……ここだけの話だが、俺は魔法警察に死の使いスノードロップが紛れ込んでいると思っている。恐らく誰かに成りすましてんだろう。……何度も書類を改ざんされた形跡があった」
「え、何それヤバ過ぎるじゃん……。え!? 魔法政府にも居るとか無いよね!?」
「魔法警察に居るくらいだから、もしかしたら居るかもしれないわね」
「も~、アイツら影みたいじゃんかー! ウヨウヨ~!」
 エミリアが頭を抱えながら騒がしく喋るのが場違いだと、ギルは密かに感じながらも2人の話に耳を傾けている。
「で? 警察さんはスパイが居るかもってなって、どうするの~?」
 緩い笑みでギルはルークに問い掛けると、問い掛けられた本人は手に持った本を見つめた。
「この本を知られたらきっと、困る事がある。……だから、ミア。お前に1つ頼みたい事がある」
「あら?私に依頼するなら、高くつくわよ?」
「弟子の俺も養わなきゃだしねえ?」
「……勘弁してくれ」
 苦笑いを浮かべるルークに2人して笑みを返してやると、ルークは深い溜息を吐き出しながらポケットから煙草を取り出そうとした。
「こら、子供が居るんだから吸わない。おまけに地下なんだからやめなさいよ」
「……すまん、つい」




 ――――
 ――――――




 数日後、ミアとギルそしてエミリアの3人は懐かしい場所に来ていた。天高くまでそびえ立つ建物は、煉瓦造りで大きな時計塔がある。時計塔の屋根は黒と青が混ざった色をしており、建物自体は高くもあるが広くもある。
「いやー、懐かしいね! オキザリス魔法学校!」
 エミリアが笑顔を浮かべたまま建物を見上げる。そう、此処は3人が通っていた学校だ。
 因みに寮と学校は別にあり、渡り廊下が何個も存在している。
「エミリア最初迷ってたわね」
「……だって広いんだもん。ギルくんもそう思わない?」
「はは、そうだね。俺も最初は迷ったよ」
 楽しそうに話すエミリアにギルは小さく笑いながら見ていた。それはミアも同じであった。

 3人がオキザリス魔法学校に来ていたのには理由があった。
「ビルくん達入学するんだってね」
「ええ、だから校長先生には話しておかないと。……まあ、あの人達は既に知ってるでしょうけど」
「……校長は何でも知ってるからねえ」
 3人は優しく微笑む校長の顔を思い浮かべた。とても綺麗で、年相応に見えない彼女。そして、偉大なる魔法使いであり、ミア同様魔女と呼ばれた人だ。
 副校長は男性だが、汚れの無い白髪がとても長く年相応と言って良いだろう。と、言っても魔法使いは長寿だ。100歳でも若く見えるのだからノーマジには分からないだろう。

 3人は懐かしそうに学校内へと入ると、校長室まで歩く。この時間帯は授業が行われている為、生徒は誰1人も居らずとても静かだった。
 忘れる訳がない場所にスムーズに進んで行くと、扉をノックする前に開いた。
「……あら、流石先生ですね」
「ミア、いらっしゃい。フフ、待ってたわよ」
「お久しぶりです、エリザベス先生」
「ええ、本当に大きくなりましたね。……エミリアもギルも。さあ、こちらに来て。2人共待ってるわよ」
 3人はエリザベスに案内され付いて行くと、ソファーに座る兄妹が見えた。マリアは此方に気付くと一目散にギルへと飛び付く。
「ギルさん!」
「わっ! ビックリしたよ~。マリアちゃん、その制服似合ってるよ」
「本当?」
「ああ、勿論」
「やったー! 嬉しい!」
 ほんのりと薄く頬を赤らめたマリアは嬉しそうに、笑顔を浮かべると奥では拗ねたような表情を浮かべるビルが見えた。
「……何だよ、マリアのヤツ」
「ふふっ、本当に可愛いわね」
「おい、ミア! 笑うなよ!」
「はいはい、悪かったわ」

「さあ、話も色々したいでしょうが少し真面目な話をしましょうか?」
 エリザベスの声にマリアはソファーに座り、他の3人も座る。
 校長室はそこまで広くは無いが、多くの本に囲まれていた。隠し部屋があると噂されていたが、きっとそれは魔法で作り出しているのだろう。1度も入った事は無いが。様々なコレクションも飾ってあり、アンティークショップの様な雰囲気を感じる。

「今回貴方達が入学してくれて凄く、嬉しいわ。ただ、貴方達が狙われているのは分かっていますね?」
 ビルとマリアは銀髪をお団子にまとめられたエリザベスを見ては頷く。
「私達は貴方達を全力で守らせてもらいます。……そして、しっかり魔法を学んで楽しんでくださいね」
 優しく微笑むエリザベスにビルは頷きマリアを見ると、目をとても輝かせていた。マリアは魔法使いだが、あまり魔法を使ってはこなかった。
 何故使っていなかったかと言うと、ビルの過保護のせいでもある。危ないから、俺がやるから、シスコンと言われても良いくらいだった。
「じゃあ、下で待っててもらえるかしら?この子達と少しだけお話させてちょうだい?」
「はい! ギルさん達、下でお兄ちゃんと待ってますねー!」
 マリアは手を振りながら校長室を出るのを笑顔で見届ければ、静かに扉が閉まるのを見てミアはエリザベスに目を向ける。

「エリザベス先生はどこまでご存知で?」
稀血レッド・ブラットの事に関しては知ってましたよ。ただ、場所が分からず困ってました。よく、見付けましたね……ありがとう」
 穏やかに微笑む姿にミアは相変わらず素敵だと思う。歳を重ねたらいずれこうなりたいと思うが、この性格では無理だろうと小さく笑うを
「それで、先生この本の開き方知ってますか?」
 ミアはギルの持っていたトランクから数冊の本を取り出すと、目の前のテーブルに置いて見せた。
 エリザベスは手に取ると、優しく表紙を撫でた。
「……これは、光の封印がしてありますね」
「光の封印?」
「ええ、光属性の魔法使いが使える特別な魔法です。ただ、今の段階では光魔法の、どの特別な魔法かまでは分からないの」
「……先生で調べてもらえるのは可能ですか?」
「フフッ、可愛い教え子の頼みだもの。勿論、喜んで調べさせてもらいますよ。……手掛かりにもなるんでしょう?」
 エリザベスに微笑まれるとミアも優しく微笑み返す。

 ルークから独自に本について調べてくれ、と依頼を受けたミアは1番信用が出来て、知識が豊富な人に頼んだ方が良いだろうとお願いする事にした。
 安心した様子のミアにエリザベスは真剣な表情に変わった。
「ただ1つだけ、分かった事があるの」
「分かった事……?」
 今まで黙って聞いていたギルが問い掛けると、エリザベスは小さく頷き話し始めた。
「あの子達の適性テストをした時、反応が出たの。……特別な力を持っている、と。ただそれが魔法なのか血なのかは分からない。もしかしたら、あの子もまた稀血レッド・ブラットの持ち主かもしれないわ」
 エリザベスの言葉に3人は驚いた顔を見せた。世界でただ1人だけの血だった筈、それなのにビルもその血の持ち主だった場合はビルまでもが狙われる可能性がある。
 ビルの体に稀血レッド・ブラットが本当に流れているのであれば、マリアと同じ力があるのか、別の力があるのか次第ではまた状況が変わってくる。
 そう、彼等は作り出してしまった筈なのだ。不老不死の薬を。

「この事については私が調べておきます。何か分かったら手紙を飛ばすわ。……ミア、あまり無理しないでね?貴女はすぐに無茶をするから」
「分かってます! 大丈夫ですよ、私」
「そーそー!あたしも居るし、ギルくんなんてミアの弟子だもんねー?」
 エミリアの言葉にエリザベスは少し驚いた表情でギルを見ると、ギルはぎこち無く笑った。しかし、エリザベスの表情はほんの少し、嬉しそうだった。
「自称弟子ですけどね~」
「フフッ、そう。それは良かったわ」
 ミアはどこか楽しそうに笑うエリザベスを不思議そうに見つめては、ギルを横目で見た。エリザベスと親しい様子に少し意外ではあった。エリザベスからギルの話を1度も聞いた事は無く、此処で会った事も無いのだ。そう、1度も。
「……何だか、懐かしい気持ちになるわ。先生と話してるからかしらね」
 小さく笑いながら話すミアをギルもエリザベスも黙っているだけだった。

「さあ、可愛い後輩が待ってるわ。早く行ってあげなさい」
「分かりました。……今度は先生の好きなケーキを買って来ますね」
「まあ、楽しみ」
「じゃあ、あたしは美味しい紅茶! 後は、あたしの愚痴も!」
「あらあら、情報部で頑張ってるのね」
「も~、上司がほんっとに! 嫌なヤツなんですよー!」
 クスクス笑うエリザベスにつられて皆笑い出すと、別れの挨拶を軽く済ませ校長室を出たのだった。
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