魔女の喫茶店

たからだから

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――interlude――

夏がやってくる

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 梅雨も明け、湿った温もりから乾いた暑さへと変わる頃もうすぐで夏休みを迎えるオキザリス魔法学校。生徒達は学校に残る者と、実家へ帰る者に分かれる。
 エリザベスは校長室まで聞こえる生徒達の、楽しそうな声に自然と笑みが零れる。
「いや~、元気ですなァ~」
「元気なのはとても良い事です」
 校長室のテーブルにはティーカップが2つ。向き合って座るのは副校長のフローリス・ベルケンポスだ。
 グレーの混じった白髪は後ろに綺麗に流してあり、年齢は100歳を超えているが、エリザベス同様若々しい。口調は老人そのものだったが。
「ワシらの学生の頃を思い出しますなァ」
「フフ、ええ、そうですねえ」
 2人は微笑み合うとティーカップに口を付けた。

 テーブルの上にはミアから預かった書物が数冊、重ねて置いてあった。全て違う魔法が掛かっており、2冊は解除出来たが、他がまだでありエリザベスが調べているところでもある。
 フローリスはティーカップをソーサーに静かに置くと、エリザベスを見つめた。
「……ところで、死の使いスノードロップが妙に静かじゃが、どう思われとるかね?」
「……不老不死の薬は馴染むまでに時間を要します。そのせいで、暫く静かにしてるのではないかと……」
「それなら使っているのは、リーダーでしょうなァ」
 フローリスの言葉にエリザベスは頷くと、特に気にかけていた生徒を脳裏に思い浮かべた。
 その2人は抜群の才能を誇り、とても特殊だった。そして脆く、危うい2人は見ていて心配で可愛がっていたものの、このまま正しい道を歩けるのか不安ではあった。
「……あの2人なら大丈夫ですよ。賢い子じゃ……」
「ええ……。私はまだあの子達の先生ですもの、間違ったら正してあげますよ……フフ」
 優しく微笑むエリザベスにフローリスも微笑むものの、2人はやはり心配だった。

 現在の状況を考えると確実に大昔起きた戦争よりも大きな戦争が起こると、2人は考えており準備をしていた。そう、死の使いスノードロップに対抗出来るよう、大昔と同じように。
「準備は着実に進んでます。……後は、あの子達に伝えるべきか、自分達で知るべきか……ですね」
「……2人共デリケートな問題じゃからの」
「ですが、今はそっとしておきましょう……。これから、夏ですもの。楽しい事が沢山あるわ」
 優しく微笑むエリザベスはティーカップに口を付け、静かに目を瞑った。



 ―――
 ―――――



「お兄ちゃーん!」
「マリア、ちゃんと勉強してるか?」
「勿論! お兄ちゃんは?」
「そんなの余裕に決まってるだろ」
 昼休み、食堂へと向かう最中後ろから聞き慣れた声が聞こえると、立ち止まり振り返る。そこには可愛い妹の姿。
 転校と言う形で入学した2人だったが、すぐに友達は出来ると楽しい学校生活を送っていた。ミアが言っていた通り学校はとても楽しく、人に恵まれ充実しておりビルはミアに手紙を送ろうと考えた。
「でねー! ユーリちゃんってば魔法薬作るの失敗しちゃって……って、聞いてるのー?」
「ああ、聞いてる」
「ミアお姉ちゃんの事考えてたんだよねー?」
「……はッ!? ちげーよ!」
「わ、お兄ちゃんってば分かりやすーい!」
 クスクスと笑うマリアに頬を赤く染めたビルは、顔を逸らす。ビルは憧れでもあり、初めて弱音を吐けた大人だった。

 強くなりたい、その気持ちから勉学に励むもののやはり年頃の男の子だ。友達と遊んで楽しんだりと、きちんと青春が出来ている様だ。
「お兄ちゃん、夏休みは学校に居るんでしょ?」
「帰る場所がねえからな」
「……でも、友達が何人か学校に残るんだって! だから、寂しくないよ!」
「……ああ、俺もだ」
 小さく笑みを浮かべ笑い合う2人は、生徒達が沢山居る食堂へと向かった。今日は外で食べても良いかもしれない、と梅雨が過ぎ去った綺麗な空を窓から見た。



 ――――
 ――――――



「ミアちゃん、手紙だよ~」
「誰から?」
「ビルくんみたいだねえ」
「あら、本当に手紙くれたのね」
 ミアは笑みを浮かべて鳥の形になった手紙を受け取る。杖を小さく振ると、鳥の形から通常の紙の形に変化する。
 広がる羊皮紙を手に取ると子供らしい字を読んでいく。背後から覗き込んでくるギルを気にせず、読み進めると小さく笑う。
「……へえ、ちゃんと友達が出来たみたいで良かったわ」
「夏休みも寂しくないみたいだねえ」
「……ふふ、相変わらずシスコンなのは変わらないみたいね」
「マリアちゃんの事大好きだからね、ビルくん」
 ミアもギルも安心した様に微笑むと、手紙を大切に棚にしまう。明るい未来に歩み始めた2人に安心し、夏休みに会いに行くかと考えていた。

「……可愛い後輩に会いに行かなきゃね」
「そうだね~、きっと喜んでくれるよ」
「マリアちゃんなんて、ギルに飛び付くわよ」
「懐かれちゃったからなあ」
 クスクス笑うと、ミアは扉が開き鈴が響くと2人は同時に振り向いた。喫茶店スカーレットは今日も、営業をしている。暑い日にはアイスコーヒーが丁度良いらしい。
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