魔女の喫茶店

たからだから

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――死の使いと魔術師編――

女2人のショッピング

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 ミアは暑さからビルの日影に隠れると、ビルの壁に体を預ける。とてもひんやりとした冷たさに心地良く感じていた。
 白い丈の少し短いTシャツ、黒のスキニージンズ、そして黒のヒールを履くミアは陽射しが目に痛いのもあってサングラスを掛けていた。
 日焼け対策は魔法で完璧にしたミアは首都、ロアーグのメインストリートに来ていた。小さな肩掛けバックを肩に掛け直しながら、人の多さの暑さに早く涼しくならないかと考えていた。
 メインスストリートは繁華街で、様々な店が建ち並び大きなショッピングモールも存在している。洋服や化粧品等買いに来る時はよく来ている場所だ。
 夏休みにも入ったせいか、子供連れも多く昼食を待たずに食べれれば良いなとぼんやり考えていた。

「ミアー!」
 人混みから自分の名を呼ばれると、走って駆け寄ってくるエミリアの姿に小さく笑みを浮かべた。
 薄いピンクのロングスカートの裾は広がっており、白いオフショルダーを着た姿は可愛らしかった。麦わら帽子がとても似合うエミリアに、笑顔を向ける。
「ごめーん! 待った?」
「大丈夫よ、今来たところ」
 ミアは15分前に来ていたが、申し訳なさそうにするエミリアに笑って嘘をく。
 待たされる事は本人の無事が確認出来れば問題は無い。ただ、暑い中待つのは苦手だ。相手がエミリアなら気にしないが。
「さ、買いに行くわよ。……どの店かは決めてるの?」
「勿論! すっごい、可愛い水着が売ってあるお店なの! 雑誌で見たんだよねえ」
「じゃあ、行きましょう」
 ミアとエミリアは並んで人混みの中を歩く。
 スレンダーなミアとは対照的に少し肉付きが良い、と言っても細いのは細いのだが女性らしい丸いラインが目立つ。故に、オフショルダーから覗く胸の谷間はなんとも悩ましいと男は思うだろう。
「……もう、ちゃんと隠しなさいよね」
「ん? 急にどうしたの?」
「こっちの話しよ。……お昼はどうする?」
「んー、気になってるカフェがあるんだよね! だからそこでご飯食べたいな」
「ええ、良いわよ。……そう言うお店はエミリアが詳しいもの。任せるわ」

 ミア達は女性客で賑わう店に入ると、様々な可愛くお洒落な水着があった。エミリアは楽しそうに見て回ると、ミアはどの水着にしようかと悩む。
 マネキンに水着を着せ飾ってあり、ミアはゆっくりと様々なマネキンを見ていた。
 学生時代プールに行った時は好きな色の水着を選んでいた事を思い出しながら、ハンガーに掛けられた水着に目を移す。
 お洒落は好きな方だが、水着はあまり着ない為流行やどんな雰囲気が似合うのか等は分からず、楽しそうに見ているエミリアを横目で確認していた。
「……ねー! これちょー、可愛い!」
「エミリアって薄いピンクとか、水色好きよね。……淡い色が似合うの良いわね」
「本当? 嬉しい~! でも、ミアは大人っぽいのが似合うよね~。黒が似合うの本当に、羨ましい」
「そう?……そうねえ、エミリアが言うなら黒にしようかしら」
 小さく笑いながら黒の水着に目を移す。
 エミリアはどうやら薄い水色の胸元にフリルが可愛らしくあしらってある、水着にするらしく手に持っていた。
「ギルくんどんな水着が好きなんだろうねえ~?」
「……何ニヤニヤしてんのよ」
「え~、だって2人気になるじゃーん!……実際どうなの?」
「エミリアが思ってるような事は何も無いわよ」
「つまんないのー」
 エミリアは唇を尖らせるとその姿にミアは眉を下げ、困った表情を浮かべた。



 ――――
 ――――――



「んー、買ったねえ!」
 2人はエミリアが来たがっていたカフェに来ていた。荷物を横目で見たミアは、水着だけでは無くビーチサンダルやアクセサリーまで購入したのだ。沢山買ったと笑う。
「普段使い出来るアクセサリーだし、良い物が買えたわ」
「でしょ~? あのアクセサリーショップ結構好きなんだあ」
 笑顔で話すエミリアを見ながら、薔薇が描かれたティーカップに口を付ける。ハーブの香りが広がり、笑みが零れるとサンドイッチを手に取る。
 白を基調とした店内はスカーレットとは別の雰囲気を感じる。女性らしさ溢れる装飾に女性客が多いと、店内を見渡す。

 流れるBGMも女性が好みそうだと考えながらパスタを頬張るエミリアを見つめた。
 ノーマジが溢れるがこの中にどれくらいの魔法使いや魔術師が居るのかは分からない。それ程ノーマジと魔法使い、そして魔術師に違いは無いのだと感じる。
 力を使わなければノーマジとは変わらず、こうやってノーマジに混ざって生活を送っている。
「……んー、美味しい~! 1口食べる?」
「ええ、頂戴? このサンドイッチも美味しいわよ」
 取り皿にサンドイッチを1つ乗せると、エミリアに渡す。エミリアもミア同様取り皿にパスタを乗せ、渡す。
「……ん、ほんとね。凄い美味しいわ」
「でしょー? ……サンドイッチ美味しー! パンが柔らかいし、野菜の歯応え抜群~!」
「そろそろ、うちもメニュー増やしたいのよねえ」
「確かに少なかったんね、ご飯ものは」
「そうなのよ! ……でも、ギルが居るし増やしても問題無さそうなのよね。最近はお客さんも増えてきたし」
 ミアはパスタを食べ終わると、取り皿にフォークを起き口周りをテーブルに置いてあるペーパーで拭くけば、ティーカップを口に持っていきながら話す。

 梅雨の間は常連客ですらあまり来なかったが、梅雨が過ぎ去ると客足は多くなり新しく出来た客も居る。少ないメニューでは飽きてしまう、と一応メインは何でも屋ではあるがやるからにはしっかりやりたいと言うミアの気持ちから、料理も考えて出している。
 勿論、甘いスイーツも。
 ギルの効果か女性客も多く、ギル目当てだけで入店する者を入れない魔法を掛けたが、最近はコーヒーを飲みながら眺めるだけの女性客が増えた。
「凄いよねえ。……でも、ミアのコーヒーは凄く美味しいもん」
「ふふ、ありがと。……ここまで上手くいくとは思ってなかったけどね?」
「あたしはどうなるか心配してたよー! いきなりイルビアに帰って来たと思ったら、喫茶店開くとか言い出すんだもん」
「……あの時のエミリア凄い顔して驚いてたわね」
 クスクス笑うミアは、思い出す。
 死の使いスノードロップを探し出す為に旅を始めていたが、自分が動き回っていても意味が無いと悟ってからは何か良い方法が無いかと考えていた時に、喫茶店を開く事を思い付いた。
 イルビアに帰って来て1番最初に会って、報告したのがエミリアでありとても驚いてた。今でも鮮明に覚えており、思い出しては再び笑う。

「もー、笑わないでよー!」
「ごめんごめん。……でも、反対せずに応援してくれたから感謝してるのよ? ……ありがとう」
「良いの! あたしはミアの味方だもん。それにお手伝い楽しかったなあ。……どんな店にするか2人で決めたよねえ」
「……店内全部ピンクは流石に引いたけどね」
「えー、可愛いのに~」
 2人は楽しそうに笑い合いながら暫く話した。スカーレットで話す事はあっても、こうやって外出してゆっくり話す事が久々なミアはとても楽しかった。
 少しだけ、死の使いスノードロップや魔術師を忘れれる時間がミアは落ち着いた。
「そろそろ帰るわよ」
「はーい! そう言えば店は?」
「ギルに任せてるわよ。……気にせず行っておいで~、とか言ってたわ」
「何それ、ギルくんの真似? 流石師匠だねえ、似てるよ」
「師匠じゃないわよ……」
 面白かったのか笑うエミリアの姿にミアも笑うと、会計を済ませ店を出た。

「ギルくん寂しがってるんじゃない~?」
「……それは無いわよ。どうせ、ヘラヘラ笑って楽しくやってるわよ」
「まあ、ギルくん結構親しみやすいもんね~。……色男でフレンドリー、おまけに喫茶店の店員ってスペック高くない!?」
「はいはい、興奮しないの」
 長く喋り過ぎたのか空は燃えるような色で、建物を輝かせていた。夕映えを綺麗だと感じながら、両手に荷物を持った2人は歩く。
 とても楽しそうな2人を誰も魔法使いだとは思わないだろう。
 長い髪の毛が夕日に照らされいつも以上に赤く見える。エミリアは横目で見ながら綺麗だと小さく笑っては、前を向いた。
 明日がミアにとってもエミリア自身にとっても、楽しく良い思い出になれば良いなと考えながらエミリアは笑う。

「ねえ、ミア。綺麗な夕日だし一緒に写真撮ろうよ!」
「ええ、良いわよ」
「じゃあ、夕日をバックに……。よし……。じゃあ、いくよー! はい!チーズ!」
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